QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年4月28日

2017年4月28日 19:54

2017年フランス大統領選挙:イデオロギーの残存が極右政権の誕生を阻止する?

4月23日、フランスの大統領選挙の第一回投票が行われ、独立系候補であるエマニュエル・マクロン前経済相が8,656,346票(得票率24.01%)で第一位、極右政党である国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が7,678,491票(21.30%)で第二位となりました(Ministère de l'Interieur interieur.gouv.fr )。

5月7日に、両者で決選投票が催されます。

注目すべき点は幾つかありますが、米国の大統領選挙のような番狂わせは起こらなかったことが第一でしょう。決選投票でもマクロン氏が勝つ可能性が高まっています。

その要因の一つは、上記の二人ではなく、4位となったジャン=リュック・メランション氏が7,059,951票(19.58%)にあると考えます(ちなみに3位は得票率20.01%の元首相フランソワ・フィヨン氏)。

戦前の「最悪」の予想として、極右で反EU、反グローバル化のルペン氏と極左で反EU、反グローバル化のメランション氏が、1位、2位となって決選投票に残ることが(既成政党支持者からは)懸念されておりました。

当ブログにおいても前回のフランス大統領選挙を分析しましたが(「フランス大統領選挙を振り返る(1):国民戦線と左派戦線の躍進」2012年5月26日付)、ルペン氏とメランション氏は、対立しながらも政策は反EU政策等、共通点が少なくなく、いずれにしても政権獲得後の見通しが不透明(不確実)であるとされていたからです。

しかし、メランション氏が4位であり、同時に、得票率が20%近くあったことはルペン氏にとってはマイナスになった可能性があります。

既に、決選投票においてフィヨン氏がマクロン氏への支持者を表明している通り、既成政党支持者はマクロン氏に流れます。一方、極右とされるルペン氏を、極左を代表するメランションの全ての支持者が決選投票で支持できるでしょうか。

両者は、非常に掲げる政策が似ています。しかし、極右と極左なのです。

この問いは、なぜ米国でトランプ氏が大統領になれたかを示唆しています。トランプは、左翼的であり、右翼的であり、(良し悪しは別として)今までにない民主党的な共和党候補者だったのです。

今回のフランス大統領選挙において、40%以上がルペン氏とメランション氏に投票しています。マジョリティには届きませんが、今回のフランスの大統領選においても、左翼的でかつ強力な民族主義者であるトランプ氏のような統一候補がいたとすれば、EUやグローバル化に不満を抱く下層の票を纏めることで、フランスでもオーソドックスな政治家に勝利したかもしれません。

極右と極左の候補者がいるフランスでは、極右政権が阻止され、極左が見当たらない米国ではトランプ氏が下層票を集約できたとすれば、フランスではイデオロギーの名残が極右政党(もしくは極左政党)の台頭を阻止しているという皮肉な現象となります。

上記から逆説的に申し上げれば、もし、ルペン氏が決選投票で勝つケースがあるとすれば、極左とされるメランションの支持者が、極右であるルペン氏の主張とメランション氏の主張が殆ど変わらないことに「気付いた」時であると考えられます。もちろん、それが良いことかどうかは別ですが。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
月別アーカイブ
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
カテゴリーアーカイブ
カンボジア (27)
スイス (26)
スポーツと社会 (114)
ネパール (26)
国際事情(欧州を除く) (223)
大震災/原発事故と日本 (28)
御挨拶 (13)
日本政治 (121)
日本社会 (258)
映画で観る世界と社会 (284)
欧州事情 (92)
留学生日記 (66)
英国 (96)

ページトップへ

カレンダー
<< 2017年06月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
最新記事
恋愛映画は社会の恋愛観を映し出す: 映画『ひるなかの流星』における選択
映画評論家バリー・ノーマン氏から学んだこと
プロパガンダ映画を作るという恋愛映画: 映画『人生はシネマティック!』の洒落れた嘘っぽさ
2017年 ネパール滞在記(11): 6,7日目 次、どこにいきましょうか?
2017年 ネパール滞在記(10): 5日目 You're Beautiful
最新コメント
はじめまして、書き込...
Posted by たか
あなたもまだお若い。...
Posted by 葵東
青春時代に見て感動し...
Posted by 小林 千三
私は韓国に住んでいま...
Posted by 七色無職
†講談社「週刊現代」...
Posted by 鈴木有介
最新トラックバック
この社会での性的魅力
from 哲学はなぜ間違うのか
ひとつ/長渕剛(Cover)
from 今日の天草