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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年4月17日

2017年4月17日 00:51

居心地の良い「夢」に逃げることはできない:映画『インセプション』の教訓

日常において良いことに遭遇しても、悪いことに巻き込まれても、これは夢なのではないかと思うことは多々あります。

『インセプション』(原題Inception)
制作国  米国
制作年  2010年
監督  クリストファー・ノーラン
出演  レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、エレン・ペイジ

あらすじ
【ドミニク・コブは、標的となる人物の夢に入り込み、重要な情報を引き出す産業スパイをしている。ある時、コブのターゲットであった日本の大物実業家であるサイトウから逆にコブに仕事を依頼される。サイトウは、自分の会社のライバルであるモーリス・フィッシャーが経営するエネルギー複合企業を破滅させるために、コブとコブの仲間にモーリスの後継者である息子のロバートの夢に入り込み、無意識に父親の会社を解体させようと企んでいた。コブは、妻に対する殺人容疑があり、子供たちが住む家に帰れない。謎の権力者・サイトウは仕事見返りとして、コブの殺人容疑を取り消して、コブが子供達の待つ家に戻れるようにすると約束する。】

主人公ドミニク・コブは、他人の夢に入り込み情報を引き出す仕事をしているのですが、彼自身、妻との確執の記憶があり、それが仕事上の障害になっています。

ネタバレですが、コブの妻は(コブと共に)夢の世界と現実を行き来するうちにどちら現実が分からなくなってしまいます。夢の中では、死ぬこと目が覚めるのですが、より夢の中の世界に居心地の良さを感じたコブの妻は、現実の世界を「夢」と認識して「終わらせよう」とし、悲劇を導くのです。

私たちの日常では夢を見る際、必ずしも自分の都合の良いようには展開しないのですが、そこに「意志」が投影されると「龍宮城」のような空間となってしまいます。様々なドラマや映画でも用いられるコンセプトではありますが、居心地の良い夢の世界は危ないのです。

現実の世界は、思い通りにならない他者の存在によって不可抗力が生じ、なかなか生き難いものです。しかしながら、コブが、抵抗を受けながら危ない仕事をするのも、現実の世界での成功(この場合、子供に会いたいということですが)を第一と考えているからであり、その反対ではありません。

映画のストーリーは多くの人の「夢の中」(あるいは「夢の夢の中」)に入り込むために、複雑に展開します。しかしながら、メッセージは非常にシンプルであり、夢には逃げられないということなのではないでしょうか。

SFアクション映画ですが、なかなか哲学的な作品です。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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