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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年4月 9日 12:53

守るべき「家」が意味するものとは?:ドラマ『ダウントン・アビー シーズン5』が描く「大人の恋」とその終焉

NHKの地上波で、昨年末から2月にかけて英国のテレビドラマ『ダウントン・アビー シーズン5』が放送されました。

ドラマ『ダウントン・アビー ~華麗なる英国貴族の館~ シーズン5』
(原題Downton Abbey, Series 5)
制作国  英国ITV
制作国  2014年
脚本  ジュリアン・フェロウズ

あらすじ
【労働党が英国で初めて政権を担った1924年。グランサム伯爵家と使用人たちにも大きな変化が訪れる。グランサム伯爵の長女のメアリーは再婚相手としてギリンガム卿を見極めきれず、2人で小旅行に出かけ、別れを決意する。次女イーディスも、ドイツで亡くなった恋人グレッグソンの娘を産み、農家に預けるが気になって仕方がなく、引き取りたいと願っている。メアリーの義理の母イザベルは高齢のマートン卿からプロポーズされ、グランサム伯爵の母バイオレットは、以前、恋仲だった英国亡命中のロシア貴族クラーギン公爵と再会し、公爵から再度、告白される。使用人たちは、執事のカーソンが、家政婦長のヒューズに結婚を申し込み、下僕のモールズリーと侍女のバクスターも親密な関係に至る。一方で、侍女のアンナ・ベイツは殺人容疑で逮捕され、夫のジョン・ベイツが犯人は自分だと名乗りでる。伯爵の三女シビルと結婚し、(シビルを病気で失っている)元運転手のトムは、一人娘と共に渡米することを決意する。】

シーズン5は、シーズン1~3まで物語の中心であった長女メアリーの恋愛話が脇役となり、それぞれの「恋」が展開していきます。

そして、(ネタバレですが)いずれのケースも、その関係は成立しません。

メアリーの亡くなった夫マシューの母イザベルは、妻に先立たれた高齢のマートン卿からプロポーズされますが、マートン卿の子供たちに反対され結婚を断念します。

グランサム伯爵の母バイオレットも、昔、駆け落ちしようとまで考えた亡命ロシア貴族のクラーギン公爵から愛の告白をされるのですが、生き別れていたクラ―ギン公爵の妻が見つかり、二人の関係は振り出しに戻ります。

一方、下々の使用人の世界でも、執事のカーソンと家政婦長のヒューズの高齢カップルが誕生しようとしています。

シーズン5は60代、70代の「大人の恋」の物語が中心となり、全てが諸事情によって影響され、カーソンとヒューズ以外は結ばれません。30代、40代の「若者」は、恋愛ではなく自分の道を見つけようと努めます。

しかし、徹底的に1924年を舞台した成就しない「大人の恋」に拘るのでしょうか。

登場人物たちは、個の感情を抑えて家の体裁を重んじます。言い方を変えれば、自分が長年築いてきた時間=「家族」を選びます。家を持たない執事のカーソンと家政婦長のヒューズだけが、彼らの共有した時間の長さ故に幸せを得られるのです。

英米社会における家族の肖像は複雑化しています。離婚、再婚は「普通」となり、家族の構成は簡単ではありません。

ドラマは成就しない「大人の恋」を描いて何が言いたいのでしょうか。大衆化時代において弱体化する貴族制度と複雑化する家制度を同一視しようとしているのでしょうか。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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