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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年4月 5日 12:17

音楽は何のために奏でるのか?:映画『四月は君の嘘』における音楽と自由

新川直司氏の大ヒット漫画の『四月は君の嘘』が原作です。映画『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』(原作『ミアの選択』)を彷彿させるものがあります。

『四月は君の嘘』
制作国 日本
制作年 2016年
監督 新城毅彦
出演 山﨑賢人、広瀬すず

あらすじ
【小学校の頃、天才ピアニストと言われた有馬公生は、ピアノの師でもある母の死をきっかけにピアノが弾けなくなっていた。普通の高校生となって2年生のある日、同じ高校に通う自由奔放なヴァイオリニスト・宮園かをりに出会う。かをりは、公生を自分のコンクールの伴奏者に指名し、公生にピアノを取り戻させようとする。かをりの影響を受けて公生は、徐々にピアノと向き合うようになっていくが、反対に、かをりは病魔に侵され、ヴァイオリンが弾けなくなっていく。】

音楽は何のために奏でるのでしょうか。

私が大学で教えるネパール、ベトナム、中国、韓国からの留学生に母国の代表的な別れの歌を教えて貰ったことがあるのですが、どれも素敵な曲ばかりでした。音楽とは、自分の傍に「いない」誰かを想い、言葉にならない感情をメロディで伝えたいという動機が大きな要素の一つなのかもしれません。

主人公・有馬公生は母親を失いピアノが弾けなくなったのですが、かをりに出会いピアノに「再会」します。

そして、ネタバレですが、舞台にいないかをりを想いピアノを弾きます。音楽はかをりの不在を補い、音によって彼女を「再現」させます。
それでは、なぜ、公生は母親を失った際に音楽によって補えなかったのでしょうか。映画では天才少年であった彼が母親のコピーのような存在であり、「自由」ではなかったように描かれます。

それに対し、持病に苦しむかをりは、不自由な状況で(それ故に)音楽に「自由」を求めており、その音に公正は本当の音楽の楽しさを初めて感じ始めます。

しかしながら、病気で苦しんでいたのは公生の母親も同様であり、母親も母親なりに息子の将来の「自由」を最大限、求めて猛特訓していたのです。

敢えて母親とかをりの違いを挙げるながらば、自分が「自由」を求める姿を公生に見せているかどうかということになるのかもしれません。かをりは懸命に「自由」に生きようとしながら、公生にピアノを弾かせようとしたのです。

ただ、作中の母親に自らの演奏で息子に「自由」な音楽を見せる余力があるようには描かれておらず、(親の視点では考えるところは少なくないのですが)筋としては良くできているということになります。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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