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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年4月 2日

2017年4月 2日 01:56

モンゴルに帰って貰っては、困ります。

大相撲春場所で新横綱・稀勢の里と優勝を争った大関・照ノ富士に対する場内のブーイングがヘイトスピーチに当たるのではないかと批判されています(The Huffington Post, 3月27日)。

当ブログ(3月26付)でも紹介しましたが、14日目、照ノ富士は関脇に陥落した元大関の琴奨菊と対戦し、立ち合いに大きく変化し、はたき込んで勝利しました。6敗目を喫した琴奨菊は、この敗北によって大関復帰を阻まれました。

場内は、重要な一番に変化をした照ノ富士へのブーイングに荒れ、次の取組ために横綱・日馬富士が土俵に上がってからも続き、日馬富士は「相撲を取るどころじゃなかった。集中してるけど耳に入ってしまう。次の一番に集中してる人のことも考えてほしい。大けがにもつながるから」と苦言を呈している程です(日刊スポーツ、3月25日)。

そのブーイングの一つがモンゴル出身の照ノ富士への「モンゴルへ帰れ!」という言葉であったとされています(スポーツ報知、3月26日;サンスポ、3月31日)。

まず、このような心無い言葉は、公の場で許されるべきでありません。

もっとも、NHKで解説していた北の富士勝昭さんが「(ブーイングは)当然、飛ぶでしょうね」と語っているように、身内の関係者には当然と受け止められたのかもしれません。

そもそも、稽古中など部屋ではよく投げつけられる言葉なのかもしれません。そこに「愛」があるかどうかということも重要で、師匠や同門の親方が照ノ富士に言った場合は、「真っ向勝負で頑張れ」という意味が含まれていることでしょう。

いうまでもなく、若貴ブームの後、大相撲を支えたのは外国人力士であり、特に朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜などの横綱を輩出したモンゴル勢なのです。そして、稀勢の里が横綱になり、また現在、起こっている大相撲ブームも、「敵役」としてのモンゴルの強豪が存在するから成立しているのではないでしょうか(もちろん、モンゴル勢を応援している日本人も沢山いますし、外国人の稀勢の里ファンも少なくないのでしょうが)。

モンゴル、ハワイ、ブルガリアとは文化が異なりますので、日本で何年も修行しても究極なところで勝負に関する価値観は異なるかもしれません。それでも、大相撲は、彼ら外国人力士に支えられてきたのです。

唯一の日本人横綱・稀勢の里には、どうしてもナショナリズムが結びつきます。逆説的ですが、それは、大相撲の国際化を意味しており、悪いことではないのです(横綱・輪島は石川県、横綱・北の湖は北海道のシンボルでしたが、両者の対戦においてどちらかが日本を代表することはありませんでした)。

しかしながら、「愛」のない「母国へ帰れ」はいけないのです。照ノ富士に帰って貰っては困るのです。モンゴル勢がいなくなれば国際性がなくなってしまいます(小錦さんが現役の頃、場所で土俵に上がると「ハワイ・オアフ島出身高砂部屋」というアナウンスが流れ、それだけで「遠くから来たんだなぁ」、「凄いな」と思ったことを記憶しています)。

照ノ富士関には、日本に留まって真っ向勝負で頑張って頂きましょう。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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