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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年2月 3日 02:56

「人は一人では生きていけない」としたらどうするか:映画『アバウト・ア・ボーイ』が提示する新しい「家族」

「人は一人では生きていけない」とは、まさしくその通りです。それでは、どのような集合体がベストなのでしょうか。

『アバウト・ア・ボーイ』(原題 About a Boy)
制作国  英国
制作年  2002年
監督 クリス・ワイツ、ポール・ワイツ
出演 ヒュー・グラント、ニコラス・ホルト、トニ・コレット

あらすじ
【ロンドンに住む38歳の独身男性ウィルは、無職だが父親の遺産(著作権収入)で裕福な生活を送っている。しかし、彼は2カ月以上、女性と付き合えなく、いつも散々な関係の終わり方をしていた。そんな中、偶然、シングルマザーの女性に出会って付き合い始めたが、結果として、向こうから謝罪して別れることになった。その後、ウィルはシングルマザーをターゲットにすることに決める。そして、ウィルは、シングルマザー家庭の12歳の少年マーカスに出会う。学校でいじめに遭っている少年マーカスは、ウィルの家に通い始める。ウィルは戸惑いながらも、変な満足感を覚えていく。】

軽快なコメディ映画ですが、英国の現状を反映しています。

まず、2012年のデータによれば、英国では4人に1人子供がシングルマザー、もしくはシングルマザーによって育てられており、欧州最高レベルです(Eurostat)。これは、1970年代後半に離婚率が上昇し(その後、横ばいですが)、結果としてシングル・ペアレント家庭が増加しています。

反対に、結婚者数は減少しています。2011年において、イングランドとウェールズに住む人々(16歳以上)の約50パーセントしか結婚していません("Small Data: Are 51% of people really 'single'?", BBC online, 16 February 2015)。

特に、25歳以上の20代、30代、40代では、男性のほうが女性よりも遥かに独身者が多くなっています(Mail Online 28 March 2014)。

シングルマザーが多く、同時に、独身男性も多いという社会状況において、この映画のストーリーが成立するのです。

映画のテーマは、17世紀の英国の詩人ジョン・ダンの言葉である「人は一人では生きていけない」(No man is an island.)です。

自由を追求した果てに、英国人は一人になっていきました。しかし、それでは生きてはいけないというのです。

物語は、面白おかしく「新しい絆」を構築する話です。

しかしながら、映画の中で結婚や離婚は出てきません。説得力のない結婚の「誓い」や感情的な「別れ」ではなく、登場人物たちは、限りなく「家族」に近い「仲間」との自然な時間を求めていきます。

現実にこのような理想がどれほどあるのかは別として、本作品は、英国的な新しい「家族像」を提示しているかのようです。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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