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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2016年12月

2016年12月31日 21:31

時間軸の変化と故郷:映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』におけるTime, Place, Space.

年末に観たくなる映画には理由があるのかもしれません。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(原題 Back to the Future)
制作国  米国
制作年  1985年
監督  ロバート・ゼメキス
出演  マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド

あらすじ
【1985年のカリフォルニア州ヒルバレー。高校生マーティは、科学者で親友のブラウン博士が開発したデロリアン社の自動車型タイムマシーンの実験を手伝う。実験には成功したが、燃料にリビアの過激派が盗難したプルトニウムを利用しており、2人は過激派に命を狙われる。ブラウン博士は銃撃され、マーティはタイムマシーンの車で逃走するが、知らないうちに1955年にタイムスリップしてしまう。1985年に戻る燃料がないことが判明し、マーティは1955年のブラウン博士に会いに行き、未来に戻るための相談をする。その途中、マーティは、1955年いおいて高校生である自分の母親や父親に出会う。2人は、その週末のダンスパーティでキスすることで結婚への道が開けるが、マーティが2人と出会ったことで(マーティを入れれば3人の)、運命が狂ってしまう。ドタバタの中、ブラウン博士は雷をエネルギーにして、タイムマシーンを機能させる方法を思いつく。】

タイムスリップものの名作です。

主人公のマーティは30年前に戻ってしまいますが、映画の「現在」は1985年ですから約30年後の2016年に観直すと「2016年―1985年―1955年」という時間軸で眺めることができ、非常に興味深いです。

1985年、主人公のマーティが着込むダウンベストとコンバースの靴は、一回りして2016年でも古さを感じません(ただ、音楽シーンでは、MTVの「天下」であったあの頃、マーティが1985年において時代を超えているとされるギターは歴史を感じさせます)。

この作品は、時間軸だけではなく、社会階層性も捉えています。

1955年のマーティの両親の実家は(普通の家に描かれながら)1985年視点でも、2016年視点でも非常に豊かであり、当時の米国が富んでいたことが窺い知れます。一方でマーティの1985年の実家は、「下層」なのです。そこに、マーティがアドバイス(入れ知恵)することで、結果としてマーティ自身の実家が1985年の段階でアメリカンドリームを達成した家族に変身していきます。

しかしながら、Time, Place, (Social)Spaceという観点から考えると、時間軸と階層軸が変化しているのに、土地(Place)は変わりません。

時間と階層が変化しても、地域(町)とそこに住む人々(家族もいじめっ子も先生もそこに存在することにおいて)は同じなのです。もし、登場人物と土地が変化してしまうと、当然、時間軸の変化も階層軸の変化も分からなくなってしまうからでしょう。

個人的には、この作品は故郷(公開当時、中学生だった自分)を思い出します。「タイムスリップものが、故郷に結び付く」、年末にこの映画が観たくなる理由はそういうことなのかもしれません。

2016年12月24日 00:27

クリスマスが商業主義なのではなく、商業主義がクリスマスを拡散させるのでは?

12月は忘年会のみならず、クリスマス会が続きます。

私が教える大学のゼミには、仏教徒、ヒンズー教徒、イスラム教徒、キリスト教徒の留学生が在籍しているため、キリスト教のみに基づく「クリスマス会」という名前はどうも抵抗感があり、学生たちが参加する各クリスマス会の「主催者」には「いいんですけどね」、「キリスト教徒は少ないですよ」と小言を付け加えてきました。

もっとも、私は喧嘩する気はありません。そもそも、日本にはキリスト教徒は数パーセントしかおりませんので、日本のクリスマス会は宗教的なイベントではなく、近代化のシンボルにしか過ぎません。

昨年、ローマ教皇は、クリスマスは貧困の中で誕生したキリストを思い、自分自身を見つめ直す時であると言われ、クリスマスの商業主義をご批判なされました(BBC 25 December 2015)。

しかしながら、実態としては、商業主義こそがクリスマスを世界に拡散しているとみなすべきでしょう。

近代化、産業化、資本主義化、市場主義化、商業主義化、グローバル化、いずれの用語を使ってもいいのですが、経済発展しますと一定程度、欧米化も避けられず、地域の内部規範(宗教的規範)にぶつからない程度において多かれ少なかれシンボリックに「クリスマス」が入ってくるのです。

それは、文化の欧米化とも異なります。
山下達郎氏の名曲『クリスマス・イブ』は「クリスマス・イブに恋人が来る」ことを前提に描かれています。今年も、街では「きっと君は来ない」と流れていますが、来るのは恋人であり、サンタクロースが来るのではないのです。それは、家族と過ごすことが一般化しているキリスト教圏のクリスマスとは明らかに異なります。

また、当ブログ(2011年12月24日付、2012年12月23日付)でも言及しましたが、クリスマスの食卓はターキーであり、チキンを食べる習慣は欧米文化にはありません。

このように日本に伝わったクリスマスは形式優先であり、宗教性も欧米性も希薄化しているのです。

その日本のクリスマスも近年、変容を遂げています。

レオパレス21が全国のひとり暮らしをしている20代から30代の社会人の男女600名に対して行った「ひとり暮らしとクリスマスに関する実態調査」では、52.2パーセントが「一人」と答えています(Diamond Online, 2016年12月10日)。

この数字が、商業主義の拒否とキリスト教化を意味するとは思えません。また、別の方向に進んでいると考えるべきでしょう。

日本のクリスマスの姿は、いつも現代日本の一面を映し出します。

2016年12月21日 22:27

男だって味噌汁の味で勝負する:映画『植物図鑑』における男性による家の「ぬくもり」の魅力

男だって味噌汁の味で勝負してもいいのです。

『植物図鑑』
制作国  日本
制作年  2016年
監督  三木康一郎
出演  高畑充希、岩田剛典

あらすじ
【不動産会社のOLをしている26歳のさやかは、仕事では何をしても失敗ばかりで、恋人もいない。ある日、仕事帰りに道端に蹲っている若い男性に出会う。樹と名乗る彼は、お腹が空いているので、自分を拾ってほしいとさやかに頼む。さやかは、なぜか自宅に入れてしまいインスタント麺をご馳走すると、さやかは疲れて自室で寝てしまう。翌朝、樹はお味噌汁と卵のシンプルだけど、家庭的な朝食をお返しに作ってくれる。朝ごはんの温かさに感動したさやかは、樹にもう少しこの家にいてほしいと頼み、半年という約束で樹が家事をして、さやかが仕事をするという奇妙な共同生活が始まる。植物に通じている樹は、自然食を作り、さやかの生活が一変する。】

主人公の女性さやかは、料理も家事もできる男性を「拾う」のです。樹もコンビニでアルバイトをすることになりますが、現金収入は多くはありません。彼の魅力は、愛嬌のあるルックスと完ぺきな料理の腕です。

2人は同居しますが、恋人関係ではなく、「契約」に基づいています。稼ぎのあるさやかは樹に部屋を、樹は外で働くさやかに食事を通じて温かい家庭の「ぬくもり」を提供するのです。

男性も仕事と家事を行い、女性も仕事と家事を等分に行う「ワーク・ライフ・バランス」が叫ばれて久しいですが、さやかと樹の関係はこの「ワーク・ライフ・バランス」とは異なります。

どちらかといえば、男性の理想の「奥様」化です。男だって味噌汁の味で勝負なのです。

しかしながら、ネタバレですが、この関係は壊れてしまいます。さやかが家庭の「ぬくもり」を、より確実なもの(恋愛関係にすることで、所有したい)と願い、樹もさやかの気持ちに答えようとします。

2人にとって互いの存在を恋人に変化させる過程で、2人はもう一度、関係性を再構築しなければならなく、試練に直面します。

敢えて注文を付けるならば、最終的には樹も仕事で成功し、「ワーク・ライフ・バランス」に近い理想のカップルになっていくことです。もちろん、「ワーク・ライフ・バランス」は理想ですが、樹が無理にビジネスで成功しなくても、十分、彼らは理想のカップルとして成立できたようにも感じます。

そのほうが、雑草好きの(イケメンの)男性が作る家の「ぬくもり」の価値が強調されたように思えます。

それでも、家庭人としての男性の魅力を全面に出した作品が、今、社会的に求められていることは確かです。

2016年12月18日 23:59

プラスの外部効果としての「サンタ・ラン」

2016年11月27日、参加費を支払いサンタの恰好をして大阪城周辺を走る「Osakaグレート サンタ・ラン2016」が行われました。この収益は、闘病生活のため病院でクリスマスを過ごす子供たちへのプレゼント購入に充てられています(Osaka Great Santa Run HP)。

この「サンタ・ラン」は、スコットランド・エジンバラ(The Great Edinburgh Santa Fun Run & Walk)が発祥です。エジンバラでも、世界遺産のエジンバラ城周辺を走ります。

日本では2009年に大阪で始まり、今年8回目となっています。地域的にも広がりを見せ、現在は、北海道札幌市、愛知県半田市、福岡県北九州市、長崎県五島市、愛媛県松山市、沖縄県中頭郡北谷町など全国各地に広がっています(同上)。

12月18日放送の『Mr.サンデー』(フジテレビ、22:00~)でも、この「Osakaグレート サンタ・ラン」が特集され、第一に参加者が楽しんでいる姿が強調されていましたが、なぜ、このイベントが急速に拡散しているかと考えますと、まず、参加すること自体に面白さがあるからでしょう。

そこには、経済学でいうところのプラスの「外部効果」があります。

経済学における「外部効果」にはプラスとマイナスがありますが、プラスの例としては自分のために庭に綺麗なクリスマスのイルミネーションを飾るとその結果、近所の人々もイルミネーションをみて幸せな気分になるのです。反対に、マイナスの例としては環境問題が挙げられます。自分の利便性のために自動車を購入すると、その結果として排気ガスの出すことで公害問題に加担することになります。

同じ自分のために行った行為の延長上の「外部効果」でも、結果として社会的にプラスになるかどうかが異なるのです。

「サンタ・ラン」のチャリティは、自分が楽しむことの延長上に位置付けられています。まず、人を助けようではないのです。楽しんだ結果として、人助けにもなることが、このイベントに持続可能性をもたらしていると考えます。

人は誰でも楽しいことをしたいものです。そして、それが人の役に立つのでしたら楽しさも二倍三倍になり、よりハッピーになります。篤志家による善意だけの寄付も素晴らしいのですが、数的な広がりに限界があるように思われます。

結果として、(1人1人は少額の寄付でも)一般市民がイベント感覚で楽しめるチャリティが経済においても効果的でもあるのではないでしょうか。

この「サン・タラン」、来年は、私も神戸で企画したいものです。

2016年12月17日 12:26

俳優とセクシャリティ

今年、私はある女子大で政治学系、社会学系の講義を担当している関係で、ジェンダーについて語る機会が増えています。

先日、残念に思う事件がありました。

12月8日、俳優の成宮寛貴さんが直筆コメントを所属事務所から発表され、突然、引退されたのです。

成宮さんに関しましては、11月下旬に写真週刊誌『FRIDAY』が、違法薬物疑惑を報じているのですが、今回の引退はそれが理由ではありません。以下の通り、プライバシーの暴露が原因とご本人が述べられています。

「これ以上自分のプライバシーが人の悪意により世間に暴露され続けると思うと、自分にはもう耐えられそうにありません。関係者や身内にこれ以上迷惑を掛ける訳にはいかない。少しでも早く芸能界から去るしか方法はありません」(産経ニュース、2016年12月9日)

そして、そのプライバシーとは「この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分」(同上)がクローズアップされてしまったと言われるのです。

人権上、成宮さんのプライバシーは尊重されるべきであると考えますが、薬物疑惑が報じられている以上、本来、まず、この問題に答えるべきではないでしょうか。

その上で、成宮さんが、仮に同性愛者であったとしても(スポニチ、12月10日)、もしくはそうでなかったとしても(Aであっても、Bであっても)、今回の騒動は、性的マイノリティが日本において社会的に厳しい状況におかれていること露呈しているようにも見えます。

薬物が事実であるとか、仕事での失敗からの引退ならばともかく、才能ある俳優が性的趣向で「舞台」から退場してしまうのは残念です。

俳優の八嶋智人さんは、成宮さんが芸能界を電撃引退したことについて「俳優としてはセクシャリティの問題は、僕は一切関係ないと思います」(デイリースポーツ、12月13日)と述べていますが、俳優が何処まで「他者」を演じられるのかという職業であるならば、本来はそうあるべきなのでしょう。

日本の芸能界でも、日本の社会でも、八嶋さんのような考え方が規範となればベストです。

私は、成宮さんのお仕事をあまりフォローしていませんので偉そうには申し上げられないのですが、私の中では成宮さんが何回かご出演されていた「世界ウルルン滞在記」(TBS、1995年~2007年放送)が印象的です。

成宮さんは、現在、アジアのどこかに行かれているということですが、ウルルンのように帰国して、もし薬物疑惑が事実無根ならば疑惑を晴らし、正々堂々と俳優業に復帰して欲しいと思います。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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