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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2016年10月

2016年10月31日 16:31

カンボジアは今、どうなっているのか?(3):平均年齢25歳のパワフルな魅力

【第3回】20代で半ばにして単身カンボジアへ渡り、現在、首都プノンペンで旅行会社の副社長、シャムリアップで語学学校の校長をされている永井唯さんに、最新のカンボジア事情についてLineで現地から伺いました。

安井: さて、ここから政治の話にさせて頂きます。

安井: カンボジアといえば、70年代のポルポト政権(1975年-1979年)の大虐殺が何と言っても世界史的な事件になっています。その傷跡は、今でもありますでしょうか。

永井: そうですね。人口構成から見ても、若い世代が圧倒的に多いです(The World Factbookによれば、2016年のカンボジアの平均年齢は24.9歳)。だから活気があると言われるのですが、国づくりには力不足なところが目立ってくると思います。

安井: ポルポト政権は、知識人を外国と通じていると敵視し、教育が長らく停滞しましたがその点はいかがでしょうか。

永井: そうです。識字率は少しずつ上がってきていますが、中年の世代になると文字の読み書きができない人も多いです。 私の学校でも親に子どもの名前を書いてといっても、書けない人がいたりします。全てが、ポルポト政権が原因であるとは言えませんが、ポルポトの影響を否定できないところがあります。

安井: そうですか。私たち(神戸ユネスコ協会)は今年も11月にカンボジアに伺いますので、引き続き教育の現状を調べていきたいと思います。

安井; さて、永井先生の本職に近付きますが、観光はどうでしょうか。観光業は、カンボジアの主要産業と言えますか?日本ではカンボジア観光と言えば、アンコールワットが第一に思い浮かべる人が多いと思います。

永井: 主要産業は間違いなく観光ですね。日本人の観光客は昨年より減っているそうですが、全体的な観光客は増えています。

永井: ここでさらにお金を儲けようとしているのでしょうか。少し前、来年よりアンコールワットの観光が$20から$37に値上げと発表されました。とりあえずは延期になったのですが、そのときはお客さんが来なくなるとガイドも不安がっていましたが、値上げという声が出てくるのも、観光客が来ていることの証左であると思います。

安井: そうですか。

永井: シェムリアップには免税店もでき、ますます観光業に力をいれているのがわかります。

安井: 観光学の視点からもカンボジアを研究しますと、面白いでしょうね。

永井: そうですね。

安井: 観光とはあまり関係はないですが、日本ではこのところ、カンボジア人に帰化したタレントの猫ひろしさんのマラソンで活躍していることが余計なことが話題になっています。賛否両論ありますが、カンボジアの知名度アップには寄与されているのは確かです。

安井: でも、カンボジアでは、あまり有名ではないとか?

永井: そうですね。残念ながら。でも、マラソン自体あまりメジャーではないので仕方がないと思います。

安井: 私は、カンボジア人でカンボジア出身のマラソン選手が五輪に出られないことが不公平であるようにも感じていたのですが、そういう議論もないのですね。

永井: 私はそういった話は聞きませんでしたが、少しばかり話題になっていたようです。

安井: 最後に、最初の質問にもどりますけれど、永井先生を魅了してやまないカンボジアとは何なのでしょうか。カンボジアの何に、魅了されたのでしょうか。なぜ、カンボジアなんでしょうか?

永井: パワフルさですかね(笑)。カンボジア人の素直で元気で明るくて温かい性格がパワフルに全力で伝わってきます

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永井先生が校長を務めるシャムリアップの光(ひかり)語学学校の子供たち

安井: なるほど、皆さん、若いですからね。私も、アジア各国から日本に帰ってくると平均年齢が違うことを目の当たりにします。日本も昭和20年代、30年代、40年代は若い人が多かったのですけどね。ただ、永井先生もご指摘のように平均年齢の若い国は、国民の経験値が少ないことも意味しますから国家建設(state-building)において、問題も生じるかもしれません。

永井: 国の発展段階の違いかもしれません。

安井: しかしながら、現地にいかないと分からないことは多いですね。私も来月、カンボジアを再訪して、もう一度勉強しようと思っています。

永井: 安井先生の学生さんのような短期のボランティアやスタディーツア等の短期滞在の方々もそうですが、私がカンボジアに滞在し続けている理由の一つとしては、カンボジアにいると何か大きな目標やビジョンを持っていてそれを叶えようと常に発信し続け、輝かしい生活を送っている中長期滞在をされている日本人と出会う機会が本当に多いこともあります。そういった人たちは本当に素敵でおもしろく、刺激をもらえます。私も若輩ですが、(カンボジア全体が若いこともあり)そのような方々と仕事上、係わり合えることも魅力です。

安井: それは、おそらく大学時代の永井先生の(将来、絶対にカンボジアに行くという)ご決意があったからこそではないでしょうか。永井先生が、愛するカンボジアで末永く、ご活躍されることを願っております。今日はお付き合い下さり、有難うございました。

永井: こちらこそありがとうございました。私はずっとカンボジアと関わっていきます。愛するカンボジアと(笑)。ありがとうございました。

プロフィール
永井唯
1988年京都府生まれ。花園大学社会福祉学部社会福祉学科で障害児教育を専攻。教員免許取得後3年間、特別支援学校勤務。カンボジアに移住し、NGOに関わるスタディーツアーを受け入れる旅行会社の現地責任者、また語学学校の運営にもあたる。

安井裕司
1970年栃木県生まれ。バーミンガム大学博士課程修了(PhD)。日本経済大学教授。専門は国際社会学。1994年から2013年までヨーロッパ滞在後、帰国。早稲田大学エクステンションセンターにて「国際時事問題入門」(八丁堀校・秋講座)、「映画からみるヨーロッパ」(中野校・秋講座)等を担当。

2016年10月30日 20:06

カンボジアは今、どうなっているのか?(2): 女性は「美」に拘るようになっている

【第2回】20代で半ばにして単身カンボジアへ渡り、現在、首都プノンペンで旅行会社の副社長、シャムリアップで語学学校の校長をされている永井唯さんに、最新のカンボジア事情についてLineで現地から伺いました。

安井: カンボジアが経済発展するに従い、具体的にどのような人々の生活に変化があったのでしょうか。

永井: 女性が美容を気にするようになったのも、お金に余裕がでてきた表れかと思います。

安井: それは面白いですね。女性のファンションは、日本風でしょうか?欧米風でしょうか?具体的にどのように女性が「美」を気にするのですか?

永井: 日本風ではないですね。短いティーシャツにハイウェストのショーパンなど、セクシーなものが多く、タイに似ています。

安井: それは興味深いですね。タイ風というのは、日本にいますと想像できないですけれど。

永井: 日頃からお化粧をする人が増えましたし、美白についてはかなり気にしています!

安井: 確かに。カンボジアで、現地の日本語新聞を読んでいましたら、色白が持てると書かれていました。同じ人の写真で、5段階に肌の色を変えているのです。どの女性が一番美しいかと尋ねていたのですが、真っ白ではなく、「白さ2番目」が一番人気でしたよ。選んでしたのは、おそらくカンボジアの男性だったと思いますので、女性が女性を選ぶと「1番白い」が勝つかもしれません。

永井: カンボジアは肌が白ければ無条件にサアーット(綺麗).と言ってくれます。

安井: それは、欧米化?それとも伝統なのでしょうか。

永井: 欧米化、ではないと思います。伝統か、韓国への憧れからでしょうか。私の想像です。

安井: 韓国?なぜ、韓国ですか?ドラマ?

永井: そうです。韓国のテレビチャンネルはカンボジアではたくさん流れています。ドラマも歌番組も。それで、憧れるのかなあと。日本よりも韓国のほうがカンボジア人にとっては、身近であると思います。日本のテレビはNHKしかカンボジアでは流れていないので。

安井: なるほど、韓流ドラマは強いですね。

永井: はい。

安井: カンボジアは、歴史的にはフランスや中国の影響も強いのではないかと思うのですが、それはどうでしょうか。

永井: いまでもカンボジア人でビジネスに成功者している人のほとんどは中華系の人です。フランス語は、今はそこまでメジャーではないと思いますが、中国語はやはり人気があります。

安井: そうですね。昨年、私が学生と一緒にカンボジアに訪れた際、メンバーに(日本に学ぶ)中国人留学生がいたのですが、結構、中国語が使えることに驚いていました。

安井: 現在、永井先生は日本語学校の校長をされておられますが、日本語を学びたいと言う人は増えていますか?

永井: 日本語を学びたい人はたくさんいて、増えています。日本や日本文化もカンボジアに紹介され、カンボジア人の生活の中にどんどん入って来ています。

永井: 私の日本語学校は、プノンペンに2校、シェムリアップに1校あるのですが、シェムリアップはアンコールワットがある観光の街なので、日本語や外国語への学習意欲は高いです。ただ、シェムリアップ市内を離れればすぐ田舎になるので、日本語よりも英語や中国語の方がまだ需要は高いように思います。

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永井先生が校長を務めるシャムリアップの光(ひかり)語学学校の子供たち
同校では日本語の他、英語、パソコンも教えている

安井: お隣のベトナムは、今年から義務教育課程において日本語を第一外国語として選択することが許されるようになりました。そのような日本語ブームはカンボジアにはまだ到来していないようですね。

永井: はい。これからです。でも必ず人気は上がっていくと思います。

安井: ところで、カンボジア人は、何のために日本語を勉強する人が多いのですか?仕事でしょうか?それとも、アニメ等の日本文化の影響でしょうか。

永井: もちろん仕事をするためもあるのですが、ただ時間があるから勉強する、といった人も少なくありません。机に座って勉強をすること自体、カンボジア人は好きなのです。それでも、日本語学習者にとっては、漠然とした日本や日本企業への憧れが強いという印象です。

(第三回に続く)

プロフィール
永井唯
1988年京都府生まれ。花園大学社会福祉学部社会福祉学科で障害児教育を専攻。教員免許取得後3年間、特別支援学校勤務。カンボジアに移住し、NGOに関わるスタディーツアーを受け入れる旅行会社の現地責任者、また語学学校の運営にもあたる。

安井裕司
1970年栃木県生まれ。バーミンガム大学博士課程修了(PhD)。日本経済大学教授。専門は国際社会学。1994年から2013年までヨーロッパ滞在後、帰国。早稲田大学エクステンションセンターにて「国際時事問題入門」(八丁堀校・秋講座)、「映画からみるヨーロッパ」(中野校・秋講座)等を担当。


2016年10月29日 01:38

カンボジアは今、どうなっているのか?(1): 経済発展と格差

【第1回】20代で半ばにして単身カンボジアへ渡り、現在、首都プノンペンで旅行会社の副社長、シャムリアップで語学学校の校長をされている永井唯さんに、最新のカンボジア事情についてLineで現地から伺いました。

安井: まず、そもそものカンボジアと関わるのきっかけは何だったのでしょうか。

永井: 大学4回生の時に国際福祉論という講義を履修したのですが、その講師の先生がカンボジアで活動されておられました。講義を通じて私自身、カンボジアに憑りつかれてしまい、単身、カンボジアのスタディーツアーに参加したのが最初でした。

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初めてカンボジアを訪れた時の写真(2011年)

安井: それ程までにですか。さぞかし、その講師の先生の講義は充実していたのでしょうね。しかし、永井先生は直接、大学卒業後、カンボジアには行かなかったのですよね。

永井: はい。京都、兵庫で公立の特別支援学校の小学部を2年間、中学部を1年間、担当しておりました。実は、特別支援学校の教員になることは私の小学生の頃からの夢でした。大学生になるまで、その夢は一度もブレることがなかったんですが、カンボジアに出会って初めてブレました。就職間近にしてとても悩みましたが、日本での働く経験がないとカンボジアへ行っても何もできないと考え、とりあえず、「初心」を貫いて教師になりました。

安井: 子供の頃からの夢をカンボジアが打ち破ってしまったのですね。

永井: はい。教師になってからも、カンボジアのことは忘れられず、いつかは現地で住もうと思い続け、長期休暇のたびにカンボジアへは遊びに行っていました。そして3年経ち、「今、行くしかないやろ」みたいな熱い気持ちが自分の中で強くなり、日本語学校をグループ会社の中で持つ、現地の旅行会社に転職しました。教師経験しかなかったので、日本語教師なら自分の力が発揮できると思ったこともあります。

安井: 人生の決断ですね。そして、短期間に副社長まで上り詰めたのですね。

永井: 上り詰めたと言う感じではないですけど。でも、日本を離れる際は大変でした。親には7ヶ月だけ行ってくるといい、祖父母には縁を切られ、最悪な出国で日本を離れました。

安井: なかなかの「大恋愛」ですね。カンボジアに魅了され、現在もカンボジア在住の永井先生に、今日は、カンボジアについて色々とお伺いしたいと思います。

永井: はい。

安井: 最初にカンボジアに行かれてから、そして、移住されてから何年になりますでしょうか。

永井: 6年前に初めてこの地を訪れて、「住民」になってから2年半です。

安井: そうですか。この6年の間、カンボジアは、どのように変化しましたか。日本では、やはり、経済に関心がある方が多いかもしれませんので、まず、経済面ではどうでしょうか。

永井: 6年の間でも、綺麗な高層ビルがどんどん増えています。今はシェムリアップに住んでいて二週間ごとにプノンペンへ行くのですが、その間でもまた前来た時はなかったお店や建物が次々に立ち並び、本当におもしろいです。私は知りませんが、まさに日本の高度経済成長のときを見ているような、そんな気がします。次々に日本の会社や飲食店が進出しています。

2.JPG
プノンペンタワーからの夜景

安井: まさに高度成長ですね。バブルというべきかもしれませんが。経済は成長しているからこそ、浮き沈みも激しいのでしょう。

永井: はい、実際、飲食店の入れ替えも激しいです。一年経って閉めてしまう店もかなりあります。

安井: 日本企業はかなり増えましたでしょうか。

永井: そうですね。カンボジアはビジネスが始めやすく、私は経済の専門家ではありませんが、日本からも沢山の方が起業されていることから、経済面においても魅力のある国なのではないかと感じます。

安井: 経済が発展するにつれ、カンボジアの人々の生活は6年前と変化していますか?

永井: 変化していると思います。車が増え、裕福な人が増えたように思えます。

安井: 昨年、学生たちを連れてカンボジアを訪れた際、プノンペンのイオンモールに行きました。商品の価格は、日本よりも高いにもかかわらず、余りにも多くの市民(国民?)が訪れており、驚きました。

永井: でも、イオンにはただ涼みに来ている人も実は多いんです。人が集まるお祭りの日はなにか買わないと駐車料金が高く取られたりもしていました。

安井: そういえば、イオンモールで記念写真を撮っているカンボジア人家族を何人も観ました。現地の人々にとって、観光施設のようなところもあるのかもしれません。

安井: 私が昨年の11月に訪れた際は、イオンモールのような輝かしい1面もあるのですが、同時に格差は大きく開いているように感じました。その点は、どうでしょうか。

永井: そうですね。富裕層が増え、派手になればなるほど、貧しい人たちが目立ち、どんどん格差が大きくなっているように感じます。イオンモールの近くにスラムのような建物があったり、高級車の周りにお金をねだる赤ちゃんを抱っこした子どもがいたり、格差は日常的に感じます。

安井: 私が理事をしております神戸ユネスコ協会が建設し、支援している小学校も電気が通っていませんでした。当然、電気がなければ、携帯もパソコンもありません。

永井: そうですね。そのような学校はとても多いです。何かの縁で支援してもらうことができた学校の子どもたちは幸せものです。

安井: 昔は、皆が平等に貧しかったところが、成長して一部が富裕層になっていくと、社会的には格差化してしまい不安定になってします。平等に貧しければ良いということではないので、難しいのですが、国家は格差を少なくして発展する道を模索しなければいけないのでしょうが、それが至難の業なのです。

永井: 本当にそうですね。

(第二回に続く)

プロフィール
永井唯
1988年京都府生まれ。花園大学社会福祉学部社会福祉学科で障害児教育を専攻。教員免許取得後3年間、特別支援学校勤務。カンボジアに移住し、NGOに関わるスタディーツアーを受け入れる旅行会社の現地責任者、また語学学校の運営にもあたる。

安井裕司
1970年栃木県生まれ。バーミンガム大学博士課程修了(PhD)。日本経済大学教授。専門は国際社会学。1994年から2013年までヨーロッパ滞在後、帰国。早稲田大学エクステンションセンターにて「国際時事問題入門」(八丁堀校・秋講座)、「映画からみるヨーロッパ」(中野校・秋講座)等を担当。

2016年10月23日 02:13

「ロックンロール」という叫びは世代を超える?:映画『パイレーツ・ロック』が示すロックが反体制と自由のシンボルだった時代

ボブ・ディランの「風に吹かれて」は1963年の楽曲です。時代は、ロックンロールでした。

『パイレーツ・ロック』(原題:  The Boat That Rocked)
制作国  英国
制作年 2009年
監督 リチャード・カーティス
出演 ビル・ナイ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ケネス・ブラナー

あらすじ
【1966年の英国。60年代の英国はロック全盛であったが、英国のラジオ放送はBBCのみで、ポピュラー音楽の放送時間も1日僅か45分に限定されていた。そのような状況下、英国の領域外の公海上に浮かぶ船から24時間ロックを放送する海賊ラジオ「ラジオ・ロック」が誕生した。それに対して、英国政府は脱法行為を行いながら、不道徳な放送を続ける海賊ラジオを弾圧しようと、様々な方法で営業を妨害してくる。そのような中、高校を退学となった青年カールは、母親の旧友の「ラジオ・ロック」船長クエンティンに預けられ、船に乗り込む。カールは8人のDJや船員たちの仲間となるが、船は数々の難問に直面していく。】

この映画は実在した海賊ラジオ「ラジオ・キャロライン」(1964年放送開始)をモデルにしています。海賊船は2隻あり、1隻はマン島沖、1隻はエセックス州沖の公海に停泊していました。

そして、この映画の通り、英国政府は海賊ラジオとの対立を先鋭化し、1967年にはThe Marine Broadcasting  Offences Actという法律を通し、海賊放送への英国からの広告を禁じ、その営業を「妨害」しています。

当時、ロックはその存在自体が反体制であり、自由のシンボルなのです。若者たちは、様々な立場で「自由」を求めロックに耳を傾けます。

実際には、その需要に答えて、英国の公共放送BBCは直ぐに「ポップ音楽専門放送チャンネル」を開設し、ロックを取り込んでいきます。ロックの「制度化」「様式化」が進んでいくのです(三田格「海賊放送はイギリスの音楽をどう変えたか」『ele-king』,  2014年10月29日)。

当ブログ2016年9月7日付にて、映画『シングストリート 未来へのうた』を紹介しましたが、80年代のMTV時代に10代だった私は、ロック全盛の60年代をリアルタイムには知りません。しかしながら、反体制のシンボルであり、自由と結びついていた頃のロックが、いかに輝いていたかは想像できます。

2016年、ノーベル文学賞に選出されたボブ・ディランがいかに「受賞」を無視しようと、ディランがノーベル文学賞に選ばれる現象は、やはり1960年代のロックが担った社会的役割がほぼ消え、ロックが歴史となっていることを示しているように思えてなりません。

それでも、この映画に登場する人々はロックに魅せられ、人生を謳歌しています。そして、主人公たちの「ロックンロール!」という叫び声が、時代を越えて響くのです。それは、自由と音楽の融合が(ロックではなくても)形を変えていつの時代も存在しているからなのかもしれません。

2016年10月22日 01:24

女性初の大統領という「事実」に意味があるのか?

米国の大統領選挙は、10月19日に三回目の討論会が終わり、大方の予想通り、民主党の候補クリントン前国務長官が、共和党の候補トランプ氏を大きくリードしています。

米国の有権者は、クリントン氏とトランプ氏のどちらかを選択しなければいけないのですから、非常に厳しい選択です。そして、前者を選択することを間違いだと申し上げるつもりはありません。

しかし、先日、ニュース番組を見ていると「女性として、クリントン氏に期待する」という声が聞こえてきました。

それはどうでしょう。

クリントン氏は女性です。しかしながら、元ファーストレディであり、既にホワイトハウスの「住民」だったのです。

私は、女性の社会進出を支持しています。今年は、女子大でも非常勤で教えているため、かなりジェンダー論に力を入れています。日本人ばかりではなく、アジアからの女子留学生に対しても、古い(アジア各国の)男性優位社会に負けないで欲しいと願っています。でも、それは、まず大統領(男性)になる人と結婚してから、自分が大統領になるという道ではないと思うのです。

アジアの女性政治家の多くは、まず、親族の男性政治家の存在があります(米国はアジアではないですが)。

韓国の女性初の大統領であります朴槿恵氏は、朴正煕元大統領の長女であり、タイ史上初の女性の首相でありますインラック・チナワット氏は、タクシン・チナワット元首相の実の妹です。イスラム諸国家における初の女性首相でありましたパキスタンのベーナズィール・ブットー元首相は、ズルフィカール・アリー・ブットー元首相の娘です。

もちろん、インドのインディラ・ガンディー元首相(父はジャワハルラール・ネルー)やフィリピンのコラソン・アキノ元大統領(夫はベニグノ・アキノ・ジュニア元上院議員)のように父親や夫が首相や大統領や有力政治家であっても、女性が男性と遜色なく活躍し、時には男性を越えて実力を発揮する場合もあります。

実力の差はありますが、共通する点は、彼女たちは女性だからという理由だけで、それぞれの国の政治のトップに立てた訳ではないことです。それよりも、少なくとも政治の頂点に上り詰めるまでは、女性というアイデンティティよりも強い形で、多かれ少なかれ父親や夫の影響力があったと言わざるを得ません(もちろん、女性であるということが第一の理由として政治家が選ばれても問題ですが)。

二者択一の米国の大統領選挙において、クリントン氏が勝利したほうが世界の安定のためには良いでしょう。

しかしながら、米国史上、女性初の大統領になるという「事実」を全面に出しても、それに殆ど社会的な意味はないと考えます。

クリントン氏がなる(だろう)ということだけを受け止めようと思います。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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