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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2016年9月

2016年9月30日 02:09

星野リゾート・トマムを考える

先日、札幌に用事があり、少し足を延ばして、星野リゾート・トマムに宿泊しました。

星野リゾート・トマムは、2015年11月、中国の商業施設運営会社、上海豫園旅游商城に183億円で(株100%)を買収されたことがニュースになりました(日本経済新聞、2015年11月11日)。星野リゾート・トマムの2014年の売上高は61億円、純利益は7億円だったそうですので、高額買収であったと言えます(同上)。

現在、成功したリゾート地の名声を獲得しているトマムですが、ここまで来るのには紆余曲折ありました。

1980年代前半、日本がバブル経済へ突き進む中、当時、過疎化が進むトマムのリゾート開発計画が第三セクター方式で始まりましたが、バブル崩壊後にその計画が頓挫します。1998年に、同リゾート開発の主体となっていたアルファ・コーポレーションが負債総額1,061億円で倒産します(河西邦人「File NO.203 アルファリゾート・トマムスキー場」『スキーリゾートの経営』(http://www.kawanisi.jp/))。

その後、アルファ・コーポレーション所有の施設を自治体の占冠村が5億2,500万円で買い取り、別の民間企業に委託して運営を続けましたが、2004年に星野リゾートに売却することになります(同上)。

そして、星野リゾート・トマムとなり成功の道を歩むのですが、最大のウリとなりますのは2006年に夏季の早朝に発生する「雲海」を見物するテラスを設置したことです。雲海を下に見下ろす「雲海テラス」は、トマムの代名詞になり、バブル経済のイメージがついているスキーとゴルフ中心のリゾートから脱却したことになります。

ただ、この段階において、星野リゾートは、トマムの株を米国系ファンドのグローブに80%を売っており、20%しか所有せずに運営を続けてきました(東洋経済online、2015年12月06日)。

そして、2015年11月に100%中国の企業によって買収されることになりますが、そもそも星野リゾートは、基本的に(不動産や建物の)「所有」と、ホテルや旅館の「運営」を分離経営して考えており、星野リゾートは後者である「運営」のプロであるというのが星野佳路代表の御主張です(同上)。

いずれにしても、星野リゾートは倒産したリゾート地トマムの付加価値を高め、183億円の価格が付くまでに押し上げたことになります。

中国企業が買収したことは重要ではないと星野佳路代表は説明されますが(同上)、中国人富裕層からの人気も高い星野リゾート・トマムのサービスを、中国企業が最大限評価したことは事実でしょう。

中国は、賃金の上昇によって安価な労働力を基本とする製造業から付加価値の高い製造業、付加価値の高いサービス業への転換が求められています。そのような中、星野リゾートのようなブランドと、リゾート経営のノウハウは、より求められていくのではないでしょうか。

逆に申せば、高値で売れるホテル&リゾート経営サービス(国際競争力のあるサービス)は、今後の日本のビジネスとなっていくのかもしれません。

2016年9月21日 23:56

「主夫力」が男の武器となる時代はくるか?:映画『パパVS新しいパパ』が問う理想の父親像

米国映画界のビックカップルでしたアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットが、離婚すると報じられていますが、原因は主に(ピットにとって養子、実子を含む)6人の子供の教育問題だそうです。

『パパVS新しいパパ』(原題:  Daddy's Home)
制作国 米国
制作年 2015年
監督 ショーン・アンダース
出演 ウィル・フェレル、マーク・ウォールバーグ

あらすじ
【米国。小さなジャズ専門ラジオ局の役員を務めるブラッドは、小学生の娘と息子がいる美しい女性サラと再婚する。ブラッドは何とか2人の子供の「父親」になろうと努力しているが、子供たちとの距離を縮められないでいる。そんな時に特殊部隊の隊員だったというサラの元夫で、2人の子供の実父であるダスティが現れる。長期の海外滞在に疲れたダスティは、家族を取り戻そうとして、彼らの家に居候する。子供たちは実父のダスティの出現によって心がブラッドから離れていく中、焦ったブラッドは、ダスティをライバル視して、様々な戦いを挑むが、ことごとく失敗に終わる。敗北を認め、継父ブラッドは家を出ていくが、勝負に勝ったはず実父ダスティは、自由に生きてきたため、ブラッドのようには父親業ができない。やがて、ダスティは、自分には「父親」はできないと再確認する。】

非常に米国らしいコメディ映画です。しかし、このようなコメディ映画が、今日の米国における家族関係を鋭く映し出すことがあります。

作品の前提としては離婚が多く、母親が子供の親権を持って再婚すれば、ステップファーザー(継父)問題が生じてきます。それは、どのようにして血の繋がっていない子供たちの父親になるべきかという問いです。

この映画はコメディですが、笑いながらもそれが深刻な問題であることが伝わってきます。

ネタバレですが、継父ブラッドと実父ダスティの闘いは、最終的に(予想通り)継父ブラッドの勝利で終わります。それはブラッドの腕力が上回ったのでも、知力で勝ったのでもなく、彼の「主夫力」がモノを言ったのです。

実際のところ、どれほど「主夫力」が米国社会で男を上げる点において効果的なのかは分かりませんが、本作品は、曲がりなりにも仕事ができて、家事育児が得意な男性が米国社会でも勝者になり得るというメッセージなのかもしれません。

一つ注文を付けるなら、主人公はラジオ局の管理職などではなく、仕事の無い専業主夫でもよかったような気がします。

2016年9月18日 00:00

パラリンピアンは何よりも国を代表するアスリートである

メディアがパラリンピックをどうのように捉えるかに注目していました。

当ブログでも言及しましたが、NHKの『バリバラ』が、『24時間テレビ』における障害者の取り上げ方を「感動ポルノ」として批判し、障害者のメディアにおける描かれ方に注文を付けた後だったからです。

「感動ポルノ」は、ジャーナリストでコメディアンであった故ステラ・ヤング氏の「障害者を、非障害者の利益のために消費の対象」という言葉から導かれたものです(Diamond online「パラリンピックは「感動ポルノ」なのか?」、 9月6日)。

パラリンピックは、障害者しか出場できないのですが、障害者の中でスポーツ能力に長けた方が国を代表して競います。その激しさは、「感動ポルノ」論を否定します。

日刊スポーツは「パラリンピアンたちを見ていると、「感動ポルノ」がいかに陳腐であるかが分かる。演出のないアスリートたちの戦う姿は、視覚障害も下半身まひも忘れさせる圧倒的な力がある」と絶賛し、「かわいそう」や「頑張って」の同情が入り込む余地がないと表現します(日刊スポーツ「「感動ポルノ」を超越したパラリンピックの感動」、9月9日)。

そして、「パラリンピックは「感動ポルノ」を超越した、障がい者の真の姿に感動できる」と結論付けます(同上)。

確かにその通りです。

ただ、同時にパラリンピックの選手は、類まれな才能に恵まれたアスリート(スポーツ選手)であることも忘れてはいけないと考えます。

私も、パラリンピックに感動している1人です。私たちは、健常者の五輪を観るように、自分にできないことを感動するのです。パラリンピックの場合、障害者である故に、(自分の運動能力を遥かに越えてしまっている選手たちを観て)より何倍もそのように感じます。そして、彼らは国家の名誉にも貢献しています。

私は、日刊スポーツの「障がい者の真の姿に感動できる」という認識は正しくないと考えます。パラリンピックの選手は世界レベルの選手であり、障害者の「真の姿」ではなく、スポーツ選手の「真の姿」なのです。

私たちの多くが五輪に出場できないように、障害者の多くもパラリンピックに出場できないでしょう。五輪選手が我々の「真の姿」ではないのと同様に、パラリンピックの選手も障害者の「真の姿」ではないのです。

障害者は「普通」に扱われること望んでいると言われます。

障害があろうとなかろうと、テレビに出てくるお笑いタレントやスポーツ選手はある種の「才能」に恵まれた人であり、「普通」ではないです。だから、彼らは感動を与えられ素晴らしいのです。

しかしながら、健常者と同じように、障害者の方も、お笑い等でテレビに出ない人やスポーツや音楽に長けていなく人が大多数であることを理解し、(オリンピック・パラリンピックのアスリートを賞賛しながらも)一つのレッテルを貼らないということが重要なのではないでしょうか。

2016年9月17日 00:08

温暖化故に氷河期が来る:映画『デイ・アフター・トゥモロー』のアイロニー

温暖化によって北極近くの地下資源も開発できるようになったと言われていますが、地球温暖化故に氷河期が来る可能性もあるそうです。

『デイ・アフター・トゥモロー』(原題:  The Day After Tomorrow)
制作国  米国
制作年   2002年
監督  ローランド・エメリッヒ
出演  デニス・クエイド、ジェイク・ジレンホール

あらすじ
【妻と高校生の息子と3人で米国・ワシントンDCに住んでいるジャックは、古気象学者として1万年前の氷河期における気象変動プロセスを研究している。ジャックは、地球温暖化が海流を変化させ、氷河期を招くという仮説を主張していたが、政治家たちは耳を傾けない。そのような中、一人息子のサムは高校生クイズコンテストに出場するためにニューヨークへ出かける。その直後、地球全体が異常気象となり、猛烈な寒波が北半球を襲い、気温の急激な低下によって多くの町が凍結し始める。サムはニューヨークの公立図書館で友人たちと本を燃やしながら辛うじて生命を維持する。ジャックは自らのシミュレーションによって米国の北半分を放棄し、南半分の住民だけをメキシコ以南に避難させることを大統領に提案する。南半分の住民が大挙してメキシコ国境に向かう中、ジャックは、北半分に含まれるニューヨークに滞在する息子サムを救うためニューヨークに向かう。】

この映画は2002年の制作です。米国に住むメキシコ系住民をメキシコへ送り返せと主張するドナルド・トランプ氏が大統領候補になる遥か以前の話です。

しかし、氷河期が訪れ、米国人が大挙してメキシコ国境を越えて南下しようとする姿(メキシコ政府が米国との国境を一時的に閉鎖するシーン)を2016年の今日に観ますと皮肉以外の何物でもありません。

つまり、逆説的な意味で先見性がある作品とも言えるのかもしれません。ただ、いくつか疑問点がありました。

このストーリーで温暖化によって氷河期が来ることを予知していた主人公の気象学者ジャックは、災害発生時において次からの展開を知っており、世界で最も人類を救える可能性がある研究者であるはずです。それでも、彼は任務よりも自分の息子を救いにニューヨークにでかけてしまうのです。

もちろん、ニューヨークに出かける選択は間違っているとは言えないのですが、自分が陣頭指揮を執って一人でも命を救うべきか、自分の息子を救いにニューヨークに行くべきかという葛藤が描かれていないのです。

米国では、何があっても、それぞれが自分の家族を守ればそれで良いという考え方が根底にあるのかもしれませんが、ストーリー自体が彼の「発見」から始まっているにもかかわらず、腑に落ちないものがありました。

それから、異常気象と言いながら、1万年前と同じ現象が生じるということは、(この映画の中では)温暖化も有史以来、繰り返されてきた程度の想定内の範囲ということなのでしょうか。

2016年9月14日 06:44

政治の多様性のためにも、国籍問題をいい加減にしてはいけない

民進党代表代行の蓮舫氏の二重国籍問題は、9月13日にご本人が、台湾(中華民国)籍が現在も残っていたことを明らかにしたことではっきりしました(JIJI.com、9月13日)。

この蓮舫氏の二重国籍問題が、日本の政治における多様性を否定しないことを願いたいものです。

私は、所謂、日本人と外国人の両親に生まれたハーフや、両親とも外国人であっても日本を母国として選択し帰化された日本人(元外国人)が、日本の政治の世界で活躍することは悪いことではないと考えます。むしろ、そのような多様性は、グローバル化する今日、日本の政界にも必要になってくるのではないでしょうか。

二重国籍についても少なからずの国家が認めており、その議論は今後、積極的にすべきです。

しかしながら、上記の意見であるが故に、蓮舫氏を許して良いということにはなりません。むしろ、日本の政治の多様化を促進するためにも、国籍に対してセンシティブな政治家が求められているように思えます。

そもそも、蓮舫氏は二重国籍の推進者ではなく、シングルパスポート主義者です。氏は「私は二重国籍ではない」、「生まれたときから日本人。(台湾)籍は抜いている。18歳で日本人を選んだ」と主張してきたのです(産経ニュース、9月13日)。

それが、結果として「二重国籍」となってしまった理由は、「記憶の不正確さ」とされています(JIJI.com、9月13日)。

疑惑が挙がってからも蓮舫氏は「わたし、台湾語わからないので、どういう作業が行われたのか、全く覚えてないし、母も父に任せていた。わたしは、そのうえで台湾籍放棄したと、父を信じて、今に至っている」(FNN、9月7日)と答えてきました。

「知らなかった」ことが事実であるとすれば、それはそれで問題です。ハーフでありながら、そして、ハーフであることを誇りに思いながら、自分の国籍に無頓着であり、政治家になる際、確認もしないというのはどうなのでしょうか。逆に知っていたとすれば、意図的に嘘をついていたことになります。AもBもアウトなのです。

民進党の岡田代表は、「父が台湾人だからおかしいという発想が一連の騒ぎにあるとすると、極めて不健全なことだ」と語られています(読売online、9月14日)。

それは、全く違います。

ハーフやクウォーター、両親とも外国人でありながら帰化したケース等、多様な日本人が胸を張って政治の舞台で活躍できるようになるためにも、このようないい加減なことは許されないのです。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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