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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2016年4月

2016年4月30日 22:53

マッサージ師との会話

駅やショッピング街等に入っている「ラフィネ」というマッサージ店があります。JR神田駅の前には、研修を終えたばかりの新人が全国各地の店舗に着任する前に最後の実施訓練をする「ラフィネ・インターンショップ」というお店があります。新人なので少し価格的に安くなっています。

先日、神田に用事があり、その後のこのお店で、新幹線でむくんだ足をマッサージして頂きましたが、その際、私を担当した新人マッサージ師の女性が熊本市のご出身でした。

東京での研修中に熊本で地震が発生し、祖父母の家が半壊していると言われてしました。今直ぐに熊本に飛んで帰りたいけど、現在の自分では何もできないので全ての研修、訓練プログラムが終了してから帰宅すると言われてしました。

前述の通り、「ラフィネ・インターンショップ」は、新人訓練所のようなところですが(新人故に)とても丁寧に対応して下さり、私は神田に来るときは立ち寄ります。

しかしながら、新卒が入るこの時期、研修する新人が多過ぎてなかなかお客さんが回ってこないそうです。前回私が訪れた際も、お客は満員なのに、それでも多くの新人マッサージ師が立って見ているような状況でした。

私は、「だったら、熊本の避難所で実施プログラムをすればいいのではないのでしょうか」と申し上げたところ、熊本出身の新人マッサージ師は「そうなれば、是非、行きたいです」と目を輝かせていました。

実際は、安全や宿泊等の問題が生じてしまうでしょうが、せめて熊本出身の新人だけでも避難所に派遣できれば素晴らしいのにと、新人マッサージ師に全くもって余計なお世話な話をしながら、時間が経っていきました。

実は、被災地でマッサージをというアイデアは私のものではなく、前回、このお店を訪れた際に出遭ったマッサージ師の方が、東日本大震災の被災地のボランティアをされている方でした。

マッサージ師になろうと思ったきっかけは、ボランティア先で仮設受託に住んでいるご老人の方々に何かしたいと考えたことだと言われていたのです。素晴らしいお話です。

別に「ラフィネ」さんではなくても良いのですが、新人マッサージのボランティアは宣伝にもなるし、修業にもなるし、(おそらく)喜ばれるし、良いことばかりなのではないでしょうか。

もちろん、私自身、何ができるか考えていかなくてはいけないと思わずにはいられませんでした。

2016年4月27日 15:26

日本はコネ社会であり、選挙はその象徴なのか?:映画『選挙』に見る「改革性」と「日本性」

熊本地震によって噂されていた衆議院、参議院のダブル選挙が無くなったと報じられています。

『選挙』
制作国 日本
制作年 2007年
監督 想田和弘
出演 山内和彦、山内さゆり

あらすじ
【2005年川崎市会補欠選挙。東京で切手コイン商を営む山内氏は、自民党の衆議院議員、県議会議員と縁があって「落下傘候補」として補欠選挙に出馬することになる。川崎に全く縁のない山内氏は、地方の自民党のスタッフの指令通りに、駅前やバス停で演説をし、神社のお祭りや保育園の運動会、老人会の集会を回り、ドブ板選挙を展開し、当選を果たす(DVDストーリ説明参照。】

おそらく、大半の日本人にとって、この映画で描かれ内容は、驚くべきことではないと考えます。「電信柱にもおじぎおせよ」というドブ板選挙、後援会を基本とする組織展開、日本の(全てではないにせよ)典型的な選挙戦です。

そこでは、政策の議論はなく選挙に勝つためのコネの繋がりばかりが強調され、山内氏は、自由民主党という大組織の中の(川崎議会の補欠選挙に限定された)神輿に過ぎないように映ります(Web Ronza, 「ニッポンの選挙には「議論」が不在」2015年4月12日)。

しかしながら、この山内氏の川崎市市会の選挙が、2001年の自民党総選挙で「自民党をぶっ壊す」と言って勝利し、2005年の衆議院選挙で大勝利を収め「小泉改革」を継続中だった中で行われていることは特筆すべきでしょう。日本における「改革」とは何かが分かるように思えるのです。この選挙を見る限り、小泉政権下でも(日本が変わる時も)保守的な選挙基盤は大きく崩れることはなかったと言えます。

もっとも「保守」と限定すべきかどうは定かではありません。焦点が当てられているのは、自民党の選挙ですが、他の政党も同じような選挙戦であることが映像から窺えます。そこには「日本性」があるのかもしれません。

山内氏は選挙戦で、「外国でも選挙はこんな感じなのか」と疑問を呈しています。外国と一括りすることは難しいと思いますが、この作品が評価された欧米諸国(の社会)では政策と議論が選挙では交わされるべきだという規範が強いことは確かでしょう(欧米先進国の選挙でコネが用いられないとは言えないと思いますが)。

一方、私が大学で教えるアジア(中国、ベトナム、ネパール、モンゴル、台湾、韓国)からの留学生に聞いたところそれぞれの母国の地方選挙では、日本同等、日本以上に組織やコネが大きな役割を果たすケースが多いようです。

その留学生の1人が母国では親や親戚、友人に言われるままに投票していたけど、「日本に来て、自分が考えて、一番良い候補者に投票すべきであると考えるようになりました」と語っていました。

日本の状況が比較上、コネ的ではないとすれば恐ろしいように思えますが、確かに各政党の末端の地方組織が少子化や都市化等で弱体化すれば、日本の選挙も変化していかざるを得ないのかもしれません。

2016年4月25日 23:38

Remember Nepal: 神戸、福島、熊本を忘れないために

神戸にて私が教えている(中国、ネパール、ベトナム、モンゴルからの)留学生が、ゴールデンウィークに熊本に行きたいと言ってきました。熊本の被災者ために何かしたいというのです。

気持ちは理解しますが、何かすると言っても、日本語も完璧ではない留学生です。熊本に行って何ができるのでしょうか。

何か必要なモノを運ぶのはどうかと提案した留学生もいました。しかし、九州出身の日本人学生が、「場所によっては支援物資の食料品が余りすぎて破棄されている所もある」「適材適所に配布できるかも重要だよ」と注文を付けました。

多くの学生が熊本で何かをしたいと思っています(既にボランティアをされている方もおられるでしょう)。しかし、なかなか本当に被災者に必要な支援は見つけられません。自己満足ではかえって現地の被災者に迷惑になってしまいます。そもそも、学生はお金がありません。資金援助にも限界があります。

ここは発想の転換が必要かもしれません。

震災復興は大変長期に渡ります。福島の現状を観るまでもなく、東日本大震災から東北は完全に復興したとは断言できないでしょう。神戸も、阪神・淡路大震災が発生した1995年1月以前に原状回復したと言えるのでしょうか。

阪急電鉄が、阪神・淡路大震災で半壊した神戸三宮の「神戸阪急ビル東館」を再建する計画しており、震災復興を象徴する新たなランドマークと報じられています(神戸新聞、4月25日)、21年前の阪神・淡路大震災でさえ、その復興はまだ「途中」なのかもしれません。

長期的に(留)学生しかできないモノではない支援を考えていくべきなのではないでしょうか。

そのように考えると、他の見方も可能です。

今日(4月25日)は、ネパール地震からちょうど1年目に当たります。ネパールでは、少なくとも80か所で2万6000人余りが今もテントで避難生活を送っています(NHK News Web、4月25日)。まだまだ復興途中なのです。

ネパールで大地震が起こった1年後の今日だから、ネパールのことを忘れてはいけないように思うのです。それは、来年の4月に熊本を忘れていないことにも繋がります。

色々と抱え込んでも大変ですが、無理をせずにゆっくり被災地にコミットし続けながら「共に生きる」ことが「貧乏人」の最大の支援なのではないでしょうか。

何ができるかはこれからですが、神戸からも(神戸だからこそ)経験を踏まえて長期的に福島、ネパール、熊本に対して何かができると信じたいものです。

2016年4月23日 00:41

Mashallahはリーズの魔法の言葉になるのか?:映画『ミスチーフ・ナイト』が描く楽観主義の必要性

当然ではありますが、映画作品を理解するには、撮られた月日や撮られた場所、描かれる舞台を知ることが重要です。

『ミスチーフ・ナイト』(原題 Mischief Night)
制作国   英国
制作年   2006年
監督  ペニー・ウールコック
出演  ケリー・ホリス、ラモン・ティカラム、カシム・アクタール
あらすじ
【イスラム系移民の多いリーズ市。3人の子供を育てる白人中年女性のティナは、生活に疲れ切っている。現在のパートナーは頼り甲斐が無く、ある日、喧嘩して家を出ていく。そんな日、ティナは、イスラム系住民が住む地域でイスラム系の小学校の同級生だったパキスタン系移民2世の男性イミーに再会し、恋に落ちる。同時並行でティナの長女キンバリーは、イミーの弟アシフと親しくなっていく。イスラムのコミュニティは急進派の影響も強まっており、一枚岩ではなく、白人のコミュニティもバラバラに描かれるが、それぞれは何とか日常生活を営んでいく。そして、町に年に一度の地域のお祭り「ミスチーフ・ナイト」がやってくる。】

この映画は、素晴らしくドラマチックである訳ではありません。移民系が多く住む英国のリーズ市のお祭り「ミスチーフ・ナイト」までの数日が、映し出されるだけです。

まず、白人のティナの家は喧嘩ばかりであり、イスラム移民社会も一つではないことが強調されます。そこから、ティナとイミーの恋愛物語が続きます。

この映画で、白人コミュニティも多様であり、移民コミュニティも多様であるという前提に、エスニシティを越える恋愛を提示する必要があったのは、映画が2006年に撮影されていることも大きいでしょう。

2005年7月7日に、ロンドンではイスラム移民系の急進主義者によって同時爆破事件が起こっています。その容疑者4人の内、3人がリーズに縁(リーズで生まれるか、リーズで教育を受けているか)があったのです。

リーズは「ホームグローン・テロリスト」を生み出した都市になってしまいました。

しかしながら、リーズの大半の住民は、この映画に描かれる通り、エスニックな軋轢もあっても、何とか「共同体」を形成しているのではないでしょうか(少なくても否定はしていないでしょう)。

この映画では「Mashallah」という言葉がキーワードとなっています。ティナの長女キンバリーが、イミーの弟アシフに「あなたは優しい」と言うと、アシフが「Mashallah」と言い返します。「God Bless You」のような意味ですが、「Mashallah」という言葉が作品を包んでいきます。

ちょっと楽観的過ぎるかもしれません。しかし、こういう作品もあっても良いと思えます。

2016年4月20日 00:10

熊本地震現地報告(3)

【第3回】熊本出身で帰省中に熊本地震を体験された映像作家の堺浩一氏に、4月17日夜、Lineで現地の状況を伺いました。

安井:これは最初にご質問すべきだったかもしれませんが、現在、熊本で被災している人にとって、何が一番に不足している、何が一番に必要だと思われますか。

堺:まずは水、食料ですね。

安井:確かに報道でもそのような指摘がありました。

堺:あとは交通機能でしょうか。街中の状況で目立っていることの一つとして交通混雑があります。避難や必需品の買い出しなどで車の数が半端なく、渋滞が頻発しています。この点は、帰宅難民等を生む都市型震災と地方震災の違いかもしれません。

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夜中の渋滞 熊本市南区 4月20日(堺氏撮影)

安井:それは貴重な御指摘ですね。確かに、地震の後の車が引き起こす交通渋滞は地方震災の課題なのかもしれません。他に、熊本地震でお気づきになられたことが何かありましたら、是非、教えて下さい。

堺:被害状況には「格差」があるというのも大事な点で、凄惨、困窮、困難を極める人々がいる一方で衣食住に余裕があり、普段に近い生活が出来ている人々もいます。現地は必ずしもメディアが切り取る世界観だけではないことも留意すべき点です。

安井:確かにそれは重要な視点ですね。メディアは特に被害が大きかった地域を中心に報じますが、熊本市内の被災者に「格差」があることはあまり採り上げません。もちろん、余裕がある人も「比較的」というだけで、被災者ということでは変わりないことも事実ですが。

堺:そうですね。

安井:私が住む神戸でも、熊本地震の映像をニュースで見ると21年前の阪神・淡路大震災を思い出して、眠れないという人がおり、「被災者(熊本)」‐「非被災者(非熊本)」と単純化はできないのかもしれません。

安井:最後になりますが、熊本出身で東京に住む堺さんは、この地震をどのように感じますか。

堺:4月15日に偶然帰省予定だったのですが、予定を変更せずに熊本へ向かったのは、熊本人としてこの状況を熊本の人々と共有しなければという思いからです。その通り、この状況を現在ここの土地の人々と共有できています。ただ、時期がくるとここを離れていかなければならないという現実を考えますと、複雑な思いです。しかし、このような自分しかできないことを今後、考えていきたいです。

安井:堺さんは、もうしばらく御滞在とのこと、どうかくれぐれもお気を付けください。大変な時に、長時間、お付き合い有難うございました。

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熊本県宇土市市役所 4月20日(堺氏撮影)

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殆ど何もないスーパー 熊本県宇土市 4月20日(堺氏撮影)

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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