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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2015年12月

2015年12月30日 08:58

ビクラム暦2072年9月15日のご挨拶:異なる時間の世界が「過去」に結び付く謎

今年も残すところ僅かとなりました。

日韓合意が「年内」に拘ったことで成立したと一部で報道されていますが、総理大臣ではなくとも、年の瀬というのは何かを纏めたいという気持ちにさせるものなのかもしれません。

しかし、振り返りますと、日本が新暦の(太陽暦:グレゴリオ暦)に移行したのは1873年(明治6年)ですので、この国の人々がこの時期に「年の瀬」を迎えるのも、150回(年)に至っていないのです。

そのようなことを考えますのも、今年、9月に「仕事」でネパール、11月にカンボジアを訪問したこともあります。

ネパールは「ビクラム」という太陽暦が用いられています。本日、西暦2015年12月30日は、2072年9月15日になります(もっとも、私がネパール人のNGO関係者にお会いした際は、西暦で約束しておりましたので、グレゴリオ暦が通じましたし、更に、ネパールにはビクラム暦以外の暦もあるそうです)。

カンボジアのカンボジア暦のお正月(メコンの旧正)は4月です。

私が教える中国やベトナムからの留学生は、旧暦のカレンダーで正月を祝う習慣が強く、日本のお正月はぴんと来ないという人も少なくありません。お正月は「春節」(グレゴリオ暦の1月下旬か2月上旬)なのです。

国と言うべきか、地域と言うべきか。異国では、暦(月日)の概念が違うこともあるのです。

月日の感覚が異なれば、当然、時間も異なります。時間が異なれば、文化も、生活習慣も異なります。

しなしながらです。2015年に私が観たネパールもカンボジアもどこか懐かしいのです。良くも悪くも「昭和の匂い」がするのです。もちろん、全く同じではありませんが、同じような「匂い」です。

異なる時間の世界が、異国(自国)の「過去」に結びついている感覚は面白いものでした。

世界は、経済を中心にグローバル化しています。それは単に画一化する市場をだけではありません。私が神戸でアジアを中心に留学生に囲まれた生活をしているのも、私が欧州各国やネパールやカンボジアに足を運ぶことも、グローバル化現象であるとも言えます。

このようにグローバル化する今日だからこそ、時(暦)の違いが明確になっているように思えるのです。そして、違うからこそ、時を越える共通項が見えてくるのでしょう。

グローバル化が照らし出す「相違」は時に、「文明の衝突」に見えるような現象ももたらすかもしれません。しかしながら、「衝突」を解決に導く方法も、また、多用な文化(違い)を尊重することを前提としながらも、グローバル化の延長上にしかないように思えます。

2015年も当ブログで、色々と書かせて頂きました。お付き合い有難うございました。

皆様、どうか良いお年をお迎え下さい。来年もよろしくお願い申し上げます。

2015年12月29日 07:27

日韓合意:問われる2つの「民主主義国家」の選択

年の瀬も押し詰まった12月28日、慰安婦問題で日本と韓国が「合意」したという大きなニュースが入ってきました。

岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相によるソウル市内における会談の後、共同記者発表が行われ、岸田大臣は、慰安婦問題について「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」とし、「日本政府は責任を痛感している」と語り、安倍首相が元慰安婦に対して「心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました(「慰安婦問題めぐり日韓合意 「最終的かつ不可逆的解決」」、朝日デジタル、12月28日)。

既に、両国において肯定、否定の両論が出ています。

韓国側では、元慰安婦の支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」は、既に「屈辱的だ」と反発する声明を発表しており(「「屈辱的」「政府に従う」 日韓合意、評価割れる韓国」、朝日デジタル、12月28日)、日本側では、日本のこころを大切にする党の中山恭子代表が「安倍外交の最大の汚点となると考えられ、大いなる失望を表明する」と語っています(産経ニュース、12月28日)。

想定はしていたと考えますが、両国政府は非常に厳しい政治決断を行ったことになります。

しかしながら、「右翼」と称される両国の首相と大統領が、どうしても年末に合意しなければならなかった(無理した)理由が見えてきません。見えない状況ながら、それが両国内にあるのかと考えれば、そうは思えないのです。

結局、アジアの国際関係、特に日米韓の枠組みを重要視するという外の力=外的要因が大きかったのではないでしょうか。

仮に外的要因が強かったとしても、国内的にはリスクを負った安倍首相と朴大統領の決断は評価すべきであるでしょう。両国の政治リーダーが共にリスクを負えたこと(負うことに合意したこと)は、何よりも収穫なのかもしれません。

しかしながら、それでも、この「合意」が、本当に「合意」になるかどうかは、最終的には両国内の両国民に委ねられているように感じます。それは、相手国民でもあり、自国民でもあるのです。

両国のどちらかでも、「合意」を肯定的に捉えられない世論が政治を動かすような状況になった時、「不可逆的」ではなくなってしまいます。

慰安婦問題は歴史問題に留まらず、十分に今日性を帯びています。もし、今回の「合意」に外的要因が強く働いているとすれば、両国国民の今後の選択は、より今日の(国際・国内、両方の)政治を選ぶことに他なりません。

2つの「民主主義国家」が問われることになります。

2015年12月26日 06:55

理想のニュース番組とは何か

このところ2つのニュース番組のキャスター人事が話題になっています。

まず、テレビ朝日系『報道ステーション』の古舘伊知郎氏が3月31日の放送で降板すると発表され、TBS系『NEWS23』の岸井成格氏も同時期に番組を降板すると報じられました。古館氏と岸井氏は、政府批判が問題視されており、ネット上でも色々と論じられています。

私は、夜、自宅で過ごす際は、21 時のNHK『NHKニュースウオッチ9』から始まり、テレビ朝日『報道ステーション』、TBS『NEWS23』 、フジテレビ『あしたのニュース』と梯子します。残念ながら、全部見られる日は週に1度、あるかないかですけれど。

英国留学中は、ITV 『ITV Evening News』18:30~、ITN『Channel 4 News』19:00~、BBC News 22:00~(もしくはITV『ITV News at Ten』22:00~)、BBC2 『Newsnight』22:30~を続けて見ることを楽しみにしていました。

日本と英国のニュース番組において一番異なる点は、日本のニュースキャスター(アンカー)が私見を述べすぎる点であると感じています。

放送局や番組によって政治色があることは、どこの国でも同じようなものであり、もし、政治の宣伝番組ばかりになってしまえば、独裁国家になってしまいます。また、共産圏のテレビが面白くなかったように、御用番組ばかりでは誰もテレビを見なくなってしまうでしょう。政府批判は必要ですし、コンテンツとしても面白いのです。

それを前提に申し上げれば、日本の報道番組は司会と専門家の線引きが「曖昧」であり、司会者がコメンテイターの役を担ってしまうから批判されてしまうように思えます。

例えば、『News23』の岸井氏が同番組の9月16日放送で、「安保法案は憲法違反であり、メディアとして廃案に向け、声を上げ続けるべき」と発言したことが一部から問題視されていますが、ジャーナリストとして岸井氏がこの発言をしたとすれば、(番組に反対意見がある専門家も呼んで議論を交わせば良いだけですので)特に問題はないように思えます。もしくは、報道番組ではなく、ジャーナリスト岸井氏がニュースを切るというような解説番組ならば、仮に批判があっても分かり易かったのではないでしょうか。

しかしながら、ニュースキャスター(司会者)であったとすれば、この発言によってキャスター役がいなくなってしまいます。

もっとも、英国の場合、討論番組の場合は、BBCの『Newsnight』のジェレミー ・パクスマン氏のように司会者が攻撃的に「問う」ことによって「主張」するケースもあります。特に、同氏の攻撃性は政権与党の閣僚に向けられることが多く見られました。ただ、パクスマン氏は「問うこと」を通じて公人を「攻撃」するだけで、安易にテレビに向かって「~すべき」とは言わなかったように記憶しています。

私は、ニュースに関しては、できるだけ事実を詳細に報じるほうが正しいと考えています。また、考え方の異なる複数の専門家の分析もあるべきだと思います。そして、キャスターは司会のプロに徹するべきであるように考えます。

視聴者に「答え」を与えるのではなく、「考えるヒント」を提示する報道番組が求められているのではないでしょうか。

2015年12月25日 23:37

子供だけがETと友達になれる:映画『E.T.』にみる「他者」の許容

今年も子供からサンタクロースは本当にいるのか、と問われた大人は少なくなかったのではないでしょうか。もし、ETがいるならば。。。

『E.T.』(原題: E.T. the Extra-Terrestrial)
制作国  米国
制作年1982年
監督 スティーヴン・スピルバーグ
主演 ヘンリー・トーマス、ドリュー・バリモア
あらすじ
【米国カリフォルニアの森。異星人の集団が宇宙船でやってきて調査をしていると、米政府関係者の集団に気付かれてしまい、宇宙船は離陸を余儀なくされる。その際、異星人の「1人」が逸れてしまい町中に逃げ込み、10歳の少年エリオットの前に現れる。初めは驚いたエリオットだったが、両親の折り合いが悪く、父が家を出て行ってしまい淋しい彼は、異星人をETと名付け、「友人」として受け入れていく。やがて、エリオットは、ETとのコミュニケーションができるようになり、ETが見たり聞いたりすることを同時体験するようになる。しかし、ETがエリオット宅にいることを科学者が知ることになり、彼らはETを拿捕しようと試みる。やがて、瀕死の状態で科学者に捕まったETは、病院で息を止める。】

歳を重ねて名作を観直すと、見方が変わってきます。

ETという「異質な生物体」をなぜ10歳の少年は受け入れるのか、その答えをS.スピルバーグは、父親の不在に求めます。主人公エリオットの父親は、家を出て行ってしまい(メキシコに行ってしまい)いないのです。

父親がいないということは、どれくらいの喪失感なのか。その寂しさは、ETを受け入れることも許すくらいというのが答えなのでしょう。

ただ、それだけではありません。この映画は子供の視点で撮影されており、子供しかETを理解できないのです。この設定により、ETはサンタクロースの様な存在になっていきます。子供(エリオット)は大人の都合(両親の不仲)によって苦しめられており、「大人-子供」の対立軸の中でETは子供(エリオット)の味方として存在します。

このような前提の中で、敢えて強調するならば、「偏見」を持たない子供は、異質なものを受け入れる力があるのです。それは、危険との背中合わせでもありますが、言い換えれば、大人は大人故の「常識」があり、それが時に「偏見」に繋がってしまうのではないでしょうか。

2015年は、国際的にはテロや戦争、難民、移民が話題になった1年でした。

行き詰った時は、大人も童心に返り、(大人には宇宙人のように見える)「他者」を子供のように「友人」として受け入れる必要があるのかもしれません。

寝ぼけたことを言うなとお叱りを受けてしまうならば、せめて映画の中では宇宙人はET(友達になれる存在)であっても欲しいものです。

2015年12月20日 07:34

ホームグローン・テロリストにとって、ISは可変的なのではないだろうか?

前回、フランスの地方選挙(地域圏議会選挙)における極右政党・国民戦線(Front National)の台頭について言及しました。

国民戦線が、(国民戦線と同様に)民族主義と社会主義を主張し、同じくフランスの下層から支持を得ている左翼戦線との戦いに勝利したのは、やはり、11月のパリ同時多発テロ事件の影響があったと言えるでしょう。

パリ同時多発テロ事件は、結果としてフランスの下層のナショナリズムを高揚(一本化)させたことになります。

また、テロ事件はナショナリズムではなく、フランス国家への支持をも広めたようです。例えば、Facebookが行ったプロフ画像をフランス国旗の色にするキャンペーンは、現在もかなり広がっているように見受けられます。

私自身、当ブログ2015年11月16日 付で記しました通り、美しいパリにテロは似合わなく、断固としてテロに反対致します。

しかしながら、今回の容疑者にはモロッコ系ベルギー国籍者やシリア国籍者と共に、アルジェリア系フランス国籍者が含まれていたことが明らかになっています。所謂、「ホームグローン・テロリスト」です。であるとすれば、フランスの責任も問われるべきであり、テロに反対することがフランス国家への支持には繋がらないと感じます。

ホームグローン・テロリストは、その名の通り、フランス国内で生み出されたテロリストであり、地球の反対側からやってきた訳ではありません。

この場合、テロリストのホームはフランスであり、「イスラム国」(IS)ではありません。もしかしたら、ISは可変的かも知れないのです。

フランスの2015年は「シャルリー・エブド襲撃事件」(1月7日)で始まりました。12人が亡くなりましたこのテロ事件の容疑者はアルジェリア系フランス人の34歳と32歳の兄弟でした。

この兄弟はパリ北東部10区でアルジェリア移民の家庭に生まれ、幼い頃に両親と死別し、フランス西部レンヌの孤児院で育ったとされています。2には10代の頃、パリに戻り、移民が多く住む19区に暮らしていましたが、イスラム過激派とは無縁の生活をしていたそうです(朝日Digital、2015年1月10日)。

兄弟は、2003年頃からイスラム急進主義に傾倒し、アルカイダ系組織と繋がりがあったグループと関係を深めていきます(同上)。

ここでのポイントは、兄弟がイスラム急進主義化したのが、2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件の後で欧州各国においてイスラム系住民へのバッシングが厳しくなった時期と重なっていることと、兄弟はISではなく、アルカイダに繋がっていたことです。2003年においてISは「建国」されていませんので、それは当然ではあります。

1月の「シャルリー・エブド襲撃事件」と、11月のパリ同時多発テロ事件を単純に同一視することはできません。しかしながら、ホームグローン・テロリストにとって、テロの正当性を与えてくれる存在が、アルカイダであってもISであってもそれ程、重要ではないのかもしれないのです。

ISへの空爆の是非はともかくとしまして、ISが空爆によって弱体化したとしてもホームグローン・テロリストがフランス国内で生み出されている限り、テロの脅威はなくならないように思えるのです。フランス生まれのフランス国籍のテロリストは、ISが無くなっても、新たな外部組織に自らの正当性を求めていくことでしょう。

フランス(及び西欧諸国)がテロ対策として一番しなければならないことは、自国を見つめ直し、なぜホームグローン・テロリストが生み出され続けているのかを考え、それに対処することではないでしょうか。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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