QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2015年7月20日 23:59

責任者を免責にしても、新国立競技場の建設費の謎を解明して欲しい

7月17日、安倍総理大臣は、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場建設に関して、「ゼロベースで計画を見直す」と述べ、計画が白紙に戻ることになりました(NHK News Web、7月17日)。

新国立競技場の建設を巡っては、費用が基本設計案より遥かに高い2520億円になることが決まったことに対して、批判の声が挙がっていました。

2008年の北京五輪のメインスタジアムの建設費が500億円であり、2012年のロンドン五輪が530億円であったことと比較しても桁違いに高いことが指摘されています(NHK「クローズアップ現代」、7月8日放送)。

これに対して、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長・森喜朗元総理大臣が「国がたった2500億円も出せなかったのかねっていう、そういう不満はある。何を基準に『高い』と言うんだね。皆、『高い、高い』と言うけれど」(テレ朝News、7月17日)とコメントし、批判されています。

私も、新国立競技場の建設費が高いかどうかということが問題ではないように考えます。高かろうと、安かろうと、東京を中心とする日本のイベントなのですから、有権者が納得していれば問題がありません。怖いのは、誰も分からないうちに決まっていったプロセスです。

この建設案を選考した際の審査委員長であった建築家の安藤忠雄氏は、7月16日に記者会見を催し、自身の責任は「デザイン選定まで」とした上で、「2520億円と聞いて、『えー』と思った」と述べています(読売新聞、7月16日)。

確かに、ザハ・ハディッド氏の設計案が選ばれた時(2012年11月)の報道は「国立競技場、1300億円で建て直し 英建築家案を採用」となっています(日本経済新聞、2012年11月15日)。

しかし、それがいつの間にか2520億円に約倍増しているのです。

降籏達生氏によれば、2520億円の内訳は、大成建設が施工するスタンド部分が1570億円、竹中工務店が施工する屋根部分が950億円ということです(降籏達生「新国立競技場は、なぜもめているのか」『ハフィントンポスト』、7月22日)。これは、ゼネコンが暴利を貪っているわけではなく、大規模空間を2本のキール(背骨)アーチで支える屋根部分の設計に問題があるとされています(同上)。

途中でデザインが高度化した訳ではないでしょうから、それでは、最初の1300億円とは何だったのでしょうか。

安倍首相は7月20日、新国立競技場の建設計画を白紙撤回した問題について、「誰に責任があるとか、そもそも論を申し上げるつもりはない」と言われています(朝日デジタル、7月20日)。

免責にするにしても、誰の判断で、どういう経緯でこうなってしまったかを明らかにする必要は(白紙撤回した後のプロセスのためにも)あるでしょう。むしろ、積極的に免責にすることで、是非、解明して欲しいところです(責任の所在が判ったら、責任を取れと言われてしまうのでしょうが)。

森元首相が言われる通り、2500億円は日本の国力から考えれば出せない額ではないと思います。しかし、出せる、出せないではなく、五輪を開催する先進国として、「知らないうちにこうなった」は許されないのではないでしょうか。「知らないうちに安くなった」でも、基本的な問題は同じであり、安ければ良いということでもないと考えます。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
月別アーカイブ
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
カテゴリーアーカイブ
カンボジア (27)
スイス (25)
スポーツと社会 (110)
ネパール (15)
国際事情(欧州を除く) (217)
大震災/原発事故と日本 (28)
御挨拶 (13)
日本政治 (115)
日本社会 (250)
映画で観る世界と社会 (258)
欧州事情 (89)
留学生日記 (59)
英国 (79)

ページトップへ

カレンダー
<< 2017年05月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
最新記事
なぜ、マクロン大統領と大統領夫人の年齢差は許容されるのか?
北朝鮮問題において危機感がないのは誰なのか?
魔法界とスコットランド:映画 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のケルト性
フランス大統領選挙の結果を考える
自立させるコミュニティの場: 映画『続・深夜食堂』における「めしや」の社会性
最新コメント
はじめまして、書き込...
Posted by たか
あなたもまだお若い。...
Posted by 葵東
青春時代に見て感動し...
Posted by 小林 千三
私は韓国に住んでいま...
Posted by 七色無職
†講談社「週刊現代」...
Posted by 鈴木有介
最新トラックバック
この社会での性的魅力
from 哲学はなぜ間違うのか
ひとつ/長渕剛(Cover)
from 今日の天草