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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2014年6月

2014年6月29日 13:08

FIFAランキング考

6月25日付の当ブログで言及しました通り、国際サッカー連盟(FIFA)のワールドカップ(W杯)とは実力が肉薄している代表チームの4年に1度の闘いであるのですが、その上で、各チームの「格差」が可視化する時でもあります。

しかし、ご存知の通り、FIFAはW杯とは関係なく、常にランキングと言う形で、「格差」を提示しています。

最新ランク(2014年6月5日)では、1位がスペイン、2位がドイツ、3位がブラジルとなっており、4位ポルトガル、5位アルゼンチン、6位スイス、7位ウルグアイ、8位コロンビア、9位イタリア、10位イングランド、11位ベルギー、12位ギリシャ、13位アメリカ、14位チリ、15位オランダ、16位ウクライナと続きます。

このうち、1次リーグを突破し、決勝トーナメントに進出を決めた16代表チームは、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、スイス、ウルグアイ、コロンビア、ベルギー、ギリシャ、アメリカ、チリ、オランダの12チームですので、まずますFIFAランキングは実力を反映しているのでしょう。

次に、1次リーグの組別で考察してみます。

A組はFIFAランク3位のブラジルが1位で、次に高い18位のクロアチアが1勝2敗で1次リーグを突破できなく、20位のメキシコが2勝1敗で勝ち残りました。

B組は最大の番狂わせが起こりました。FIFAランク1位のスペインが1勝2敗で1次リーグ敗退となりました。勝ち上がりましたのは、FIFAランク15位のオランダと同ランク14位のチリでした。

日本が登場したC組は、FIFAランクを通りの結果でした。同ランク8位のコロンビアが1位通過、同ランク12位のギリシャが2位通過、同ランク23位のコートジボワールが3位で敗退、同ランク46位の日本が2敗1分で最下位でした。

死の組と呼ばれたD組は、同ランク28位のコスタリカが1位通過、同ランク7位の
ウルグアイが2位通過、9位のイタリアと10位のイングランドが1次リーグ敗退となり、コスタリカの下剋上という結果になりました。

E組を勝ち抜いたフランスとスイスは、フランスがFIFAランク17位、スイスが6位、敗れたエクアドルとホンジュラスは、それぞれ26位と33位ですので、順当な組でした。

F組の通過はFIFAランク5位のアルゼンチンと44位のナイジェリアでしたが、敗退しましたボスニア・ヘルツェゴビナは21位、イラン43位ですので、ナイジェリアの健闘が目立ちます。

G組ではFIFAランク2位のドイツが圧倒的な強さを見せ、13位の米国が1勝1敗1分けで決勝リーグに滑り込みました。FIFAランク4位のポルトガルがまさかの敗退となり、37位のガーナは2敗1分で最下位でした。

最後のH組はFIFAランクの11位のベルギーと5位のアルジェリアが決勝リーグに進み、19位のロシアと57位の韓国が敗れるランク通りの結果でした。

8組のうち勝ち残ったチームがランキング通りだったケースは、C組、E組、H組(1位通過、2位通過のFIFAランキングが逆の場合も含む)です。A組を通過しましたメキシコはFIFAランク20位ですが、敗退しましたクロアチアは18位ですので、A組もランキング通りと言えるかもしれません。

残すB組、D組、F組、G組では、B組のスペイン、D組のイングランド、イタリア、G組ポルトガルの敗退がニュースとなりました。

W杯が始まる前のFIFAランクで組において最下位ながら、ランクを覆し、1次リーグを突破できたのは、8チームのうちD組のコスタリカとF組のナイジェリアだけということになります。

結論として、スペイン、イングランド、イタリアが1次リーグで去ったように、W杯は、直前のランク通りになるとは限りません。しかし、それぞれの組のランク最下位のチームが勝ち残るのは非常に難しいとは言えます。

ランキングで言えば、組の3位以内でW杯に出場することが目標になるのかもしれません。

2014年6月25日 23:05

2分間の敗北:日本代表は弱くなったのか?

周知の通り、日本代表はコロンビアに1-4で敗れ、1次リーグでの敗退が決まり、2014年FIFAワールドカップ・ブラジル大会を2敗1分で終えることになりました。

日本代表にとって、この大会の分岐点は、第1戦のコートジボワール戦において連続失点してしまった2分間ということになるのでしょう。

後のギリシャ戦とコロンビア戦の2試合において、日本代表は、初戦の2分のロスを取り返すことが出来なく、2分で4年間が終わってしまったのです。当たり前ですが、あの場面で、1失点で留まれば、結果が変わっていた可能性があります。

それでは、日本代表は1次リーグを突破した4年前に比較して相対的に弱体化したのでしょうか。

4年前のワールドカップ・南アフリカ大会も、普通に考えてみれば、今回のように落とし穴があったに違いありません。相手チームの状況、日本代表の個々のモチベーションなどが複雑に合わさり、4年前は結果を残せたということなのかもしれません。

逆に、4年前の日本代表が、(当時において)相対的に、強かったのかと考えますと、素人ながら、感覚的には、今回とそれ程違わないようにも思えるのです。

私は、今大会の日本代表の監督やコーチが悪かったと言いたいのではなく、それ程、サッカーは、繊細であり、微妙なコンディションが左右するスポーツのように考えます。

プロの世界ですから、その僅かな差で、監督や選手も評価されてしまうのは事実です。ただ、単純に結果だけで、4年前の代表は強かった、今大会の代表は弱くなったと言い切ってしまって良いものかどうか疑問です。

確かに、1勝もできなかった今大会は、「強かった」とは言えません。しかしながら、1998年フランス大会において、初出場して3連敗した時と比較すれば、日本代表は「強くなった」とも言えるのではないでしょうか。

フランス大会では、初戦、アルゼンチンに0-1で敗れ、2試合目でクロアチアに0-1で連敗し、ジャマイカに1-2で負けました。当時、私は英国に滞在しており、全試合パブで観戦しましたが、3試合目は、ジャマイカ系英国人が楽勝ムードで騒いでいる中、日本代表とジャマイカ代表との(点差以上の)力の差を感じました。

あの頃と比較すれば、日本代表は強くなっています。試合に負けても、僅か1,2分の差まで縮めることができており、南アフリカ大会のように状況が良ければ、1次リーグを突破することも可能ですし、突破しても世界は特に驚かないレベルまで達していると考えます。

トクヴィルのフランス革命観ではありませんが、日本代表は実力が付いた故に、「2分間の差」が見えているように思えます(この文脈では、1998年のフランス大会も、日本代表は、W杯に参加できるレベルに到達したが故に、1点差で3連敗できたとも言えます)。

サッカーの世界は、明らかにグローバルにフラット化しています(実力が肉薄しています)。だからこそ、日本代表が「弱く」見えるのです。

日本代表は、1998年時点よりも、おそらく、進歩しているでしょうし、今後も、進歩し続けるでしょう。その前提で、ブラジルで得た「2分間の課題」をどうするか、考えていかなくてはなりません。

2014年6月23日 14:00

ディティールに拘った故のステレオタイプ:映画『キャプテン・フィリップス』に欠ける複眼的視点

細部に拘った迫力のある映画でも、鑑賞後、何か腑に落ちない作品があります。

『キャプテン・フィリップス』(原題:  Captain Phillips)

制作国 米国
制作年 2013年
監督   ポール・グリーングラス
主演   トム・ハンクス

あらすじ
【2009年4月ソマリア。海賊化した漁師であるアブディワリ・ムセ、ノール・ナジェ、ワリド・エルミ、アダン・ビラルらは、海賊のボスから金を稼ぐことを強要されている。そのような時、リチャード・フィリップス船長が舵を取る米国船籍のコンテナ船「マースク・アラバマ号」が彼らの前に現れ、彼らのターゲットとなる。武器を持たない「アラバマ号」は放水で対応するが、海賊たちは梯子を用いて「アバラマ号」に乗り込んでくる。船内で「アラバマ号」の船員が果敢に戦い、船内から海賊を追い出すことに成功するが、海賊は、最後に「アラバマ号」のフィリップス船長を人質に取って逃げる。「アラバマ号」を離れ、海賊に連れ去られたフィリップス船長の奪還作戦が、米国海軍によって展開される。】

2009年、実際にソマリア沖で発生した「マースク・アラバマ号事件」をベースにした作品です。監督は、1972年、北アイルランドのロンドンデリー/デリーで起った血の日曜日事件を映画化し(映画『ブラディ・サンデー』)、2002年のベルリン映画祭で金熊賞を受賞したポール・グリーングラス氏です。

ディティールに拘った事件の再現、フィリップス船長を演じるトム・ハンクス氏の名演技など見どころが沢山ある映画なのですが、細部に拘ったために、事件の本質が問われていないように思えるのです。

海賊たちの力関係や、貧困の中で、漁師だった彼らが海賊行為に手を染めることなどは窺い知れるのですが、それでも、彼らが、海賊をしなければならない理由が十分には伝わってきません。

研究もそうですが、対象に近付き、物事の詳細を観察する作業と、対象から距離を置き社会全体における対象の位置付ける作業の両方が、映画にも必要であるように思えます。

血の日曜日事件など、その事件の社会背景が多くの人に知られているケースの場合、ディティールを再現し、社会に問うことが非常に重要であり、事件の社会的考察は観る側に委ねることができます。

しかしながら、大量の海賊を生み出しているソマリアで何が起こっているのかは、私たちによく伝わっていないのです。このような場合、事件の細部だけを描くと、ワンサイドの物語として映ってしまいます。

結果として、ソマリア海賊のステレオタイプを助長してしまっているように見えるのです。

2014年6月22日 23:32

セクハラやじが露呈する少子化対策の遅れ

東京都議会議員であります鈴木章浩氏のセクハラやじ問題が話題になっています。

2014年6月18日、東京都議会本会議で晩婚化の支援策について質問していた都議会議員・みんなの党の塩村文夏氏に対して、鈴木議員が「早く結婚したほうがいい」などとやじを飛ばしたというのです(「産めないのか」というやじもあったそうですが、鈴木議員は、それは言ってはいないと否定しています)。

鈴木議員は、謝罪記者会見にて、このような発言した動機を「少子化、晩婚化の中で早く結婚していただきたいという思いがあり、軽率な発言をしてしまった」(時事ドットコム、6月23日)と述べています。

このニュースは、海外メディアでも報じられていますが(Reuters, 6月20日、The Guardian, 6月20日、CNN, 6月20日)、こういう発言を耳にしますと、非常に驚いていまします。そして、日本がジェンダーギャップ(世界経済フォーラム、2013年)で105位の国であることを思い知らされます。

確かに日本は少子化対策が遅れています。だからこそ、早急に女性、男性が子育てをし易い環境を整える必要があるのです。ある女性政治家が、結婚していないとか、子供がいないとかそういうレベルの問題ではないのです。

少子化対策に遅れた国(厳密には民族)は、その存続の危機に直面します。日本は今、そのような状態であり、安倍政権は歴代に内閣と比較すれば、積極的に女性の社会進出と少子化対策に取り組んでいます。

なぜならば、女性が社会進出しており、男性が家事育児に参画する率が高い先進国は、少子化対策に成功しているのです(安倍政権は男性の家庭進出は促していませんが)。もし、独身女性が多く、出生率が低いとすれば、当然、その国の男性の問題でもあるのです。

平成25年度における東京都の合計特殊出生率は【1.13】(厚労省「平成 25 年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」)であり、全国最低です。

この責任は、そのような社会環境を変えられない都議会議員が、男女を問わず共有しているのです。議員に子供がいてもいなくても、男でも女でも政治的責任を回避できません。にもかかわらず、自分の責任に全く気付かず、セクハラやじを投げかけるような政治家がいることは、それこそが、日本(東京)の少子化対策の遅れを露呈しているように見えてしまいます。

鈴木議員は尖閣諸島にも上陸したことのある「保守」とのことですが、もし、仮に鈴木氏が「保守」ならば、国益に反する「保守主義者」ということになります(安倍首相は「保守」ではなく、理論上、この文脈では男女平等を謳う「右翼」になります)。

鈴木議員は辞職しないそうですが、ならば、次の選挙にて、有権者(東京)の見識が問われることになります。

2014年6月21日 02:13

日本代表は過去9敗から学べるのか

2014年 FIFAワールドカップ・ブラジル大会にて、周知の通り、グループCの日本はギリシャと対戦(6月20日)して0ー0の引き分けに終わりました。

私は、先日、当ブログにおいて、「負けるということ」(2014年6月15日付)というタイトルで書かせて頂きました。「負ける」こと自体が問題なのではなく、過去の「負け」から学べるか、学べないがその後の成功に結びつくのではないかと考えます。

そのような意味で、ギリシャ戦の引き分けが、初戦のコートジボワール戦の「負け」から学んだ結果なのかどうかを検証しなければなりません(サッカーの素人の私は、的確に判断することはできませんが、初戦よりは良かったように感じます)。

もっとも、「負け」という観点から考察しますと、日本代表は1998年にワールドカップ・フランス大会に初出場した時は3戦全敗、2002年の日韓大会では2勝1敗1分、2006年のドイツ大会では2敗1分、2010年の南アフリカ大会は2勝2敗です。2014年のブラジル大会は今のところ、1敗1分ですので、トータルでは4勝9敗3分になります。

当然、1998年から選手は代替わりしています。代替わりしながら、過去の9敗から日本代表は学べてきたのでしょうか(本田選手が、コートジボワール戦の後、「負けは想定内」と話していましたが、確率から言えば想定しないほうがおかしいかもしれません)。

もちろん、私たちは、1998年のフランス大会の3連敗を記憶しています。しかしながら、単なる記憶と、敗北からの教訓を日本代表の選手たち(拡大してJリーガー、更に拡大して将来の代表候補である日本中のサッカープレーヤー)が身体化することは、大きく異なるように思えます。

自分が体験(関与)していない集団的敗北を、いかに記憶し、身体化するかというテーマは、何もサッカーだけに限定されることではありません。

第二次世界大戦後、敗戦の歴史の記憶を、世代を超えて継承する重要性は、何度も議論されてきました。この場合は、次の戦争に勝つという視点ではなく、過去において平和を守れなかったことを踏まえ、次の世代がいかに(戦争をせずに)平和を守れるかが課題になります。

果たして、敗北の記憶は世代を超えて継承できるのでしょうか。

個人レベルで考えますと、たとえ失敗を体験していても、同じ間違いを何度も繰り返すことさえあります。体験していない場合、知識として学習し、身体化することになりますが、それは、非常に困難な作業でしょう。

しかし、それでも、過去の9敗から学べることを、サッカー日本代表には証明して頂きたいと願っています。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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