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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2014年3月 2日 00:00

浅田真央選手とキム・ヨナ選手にみる「友情」

「浅田は日本で、私は韓国で最も注目を浴びたフィギュア選手という共通点がある。その選手の心情を私も理解できると思う。浅田が泣きそうなときは、私もこみ上げてくる」(聯合ニュース、2月21日)。

ソチ五輪のフィギュアスケート女子の韓国代表で、引退を表明しているキム・ヨナ選手は、女子シングル決勝後、長年のライバル浅田真央選手のことを上記のように語りました。

2月24日に行われましたフィギュア・エキシビジョンを見る限り、キム・ヨナ選手の言葉はリップサービスではなく、本音であり、浅田選手もまた同様もしくはそれに近い感情を抱いているとされています(記者会見、2月25日)。

もちろん、1ポイントでも多く、1ランクでも上の順位を目指しており、彼らはライバル同士なのでしょうが、同時にフィギュア選手という「コミュニティ」が他の競技にない程、確立しているように見えるのです。それは、ヨーロッパ中世の異国の騎士同士の戦に近いような感覚なのではないでしょうか。エキシビジョンでは、フィギュアスケートの持つヨーロッパ型の社交性が十分に表現されていました。

フィギュア選手は、サポーター(パトロン)として自分の所属する国家や国民が存在しています。ですから、愛国心も人一倍あるでしょう。しかし、シーズン中は毎週のように顔を合わせるライバルの「同業者」との間に、ある種の「友情」があって然るべきであると思います。

少なくても彼ら(彼女ら)は、ライバルが失敗した時、「見事にひっくり返ってしまった。あの子、大事な時には必ず転ぶんですよね」とは言わないでしょう。むしろ、喜びや悲しみを分かち合い、同時に、負ければ悔しさも覚えるからこそ、相手の「痛み」もシェアできるのではないでしょうか。

当ブログでは2014年2月3日付で、南スーダンにおいて国連南スーダン派遣団に参加している韓国軍部隊が孤立した際、韓国軍の部隊長から弾薬の提供依頼があり、同じく同国で国連平和維持活動に従事する日本の自衛隊部隊長が要請を受けたことを記しました。

その際、遠いアフリカでPKOを展開する両国の部隊長同士に、何らかの意見や感情の共有があったとしても不思議ではないと筆しました。

しかし、PKOの場合、日本においては「武器輸出三原則」にも抵触する行為であり、韓国の愛国心にも反する行為となってしまい、後に両国で大きな問題となりました。

ブログでは、映画『大いなる幻影』(1937年、フランス)を論じ、愛国心が国境を越えた階級のシンパシーを上回るのは、ヨーロッパにおける貴族制度の終焉に何らかのヒントがあるのではないかと書きました。

その点、愛国心とライバルとの「友情」が矛盾しないフィギュアスケートは純粋に素晴らしく感じます。それは映画『大いなる幻影』から考えるならば、エキシビジョンに顕れる「貴族的」社交性にあるのかもしれません。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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