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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2014年3月

2014年3月30日 19:48

メダルだけか五輪ではない:映画『クール・ランニング』の相対主義

映画は撮られた社会や時代を反映するものですが、時が経ち、作品が別の意味を持つこともあります。

『クール・ランニング』(原題:  Cool Runnings)

制作国 米国
制作年 1993年
監督   ジョン・タートルトーブ
主演   レオン・ロビンソン

あらすじ
【舞台は、1988年のジャマイカ。夏季五輪に出場を目標にしてきた陸上短距離選手のデリスは、予選会の当日、隣コースの選手ジュニアの転倒に巻き込まれて敗退する。彼は抗議に行った選考委員長の部屋で、同じく陸上選手だった父親が白人男性と並んだ写真を見つける。その白人は、アーブという名前で、元ボブスレーの金メダリストだが、今はジャマイカに住んでいるという。何としても五輪に出たい彼はボブスレーのルールも知らぬまま、親友サンカを誘い、アーブにコーチを頼みに出かける。しかし、アーブは、不正行為でメダルを剥奪された過去があり、断り続ける。しかし、ついにデリスらの熱意に根負けしてアーブはコーチを引き受けることに。予選会で最初に転倒したジュニアと、デリス同様と巻き込まれたユルもメンバーに加わり、冬季五輪を目指す。資金、経験に欠ける彼らだったが、何とかチームとして整え、1988年の冬季五輪開催地であるカナダのカルガリーへ飛ぶ。中古のソリで練習する彼らは、世界の強豪チームから嘲笑され、本場の地で試行錯誤するが、ジャマイカらしい明るさが注目されるようになる(Movie Walker参照)。】

夏季五輪予選に(事故によって)敗れたので、ボブスレーで冬季五輪を目指し、実際に代表になれるのは、五輪が国家・国民の相対主義に立っていたからでしょう。

五輪は世界で上から何番目のまでの選手やチームが出場するのではなく、各国の代表が選出されてきたのです。

どれほど強くても(早くても、上手くても、美しくても)各国の個人・チームの代表にならない限り、五輪にはいけません(フィギュアスケートは周知の通り、日本代表は3人です)。反対に、世界でトップクラスではなくても(標準記録を超えれば)、ある国で一番ならば五輪に出られるのです。

しかしながら、当ブログ2月23日に記しました通り、韓国から国籍変更し、ソチ五輪でロシアのスピードスケート・ショートトラック男子代表として金3個(500m, 1000m, 5000m)、銅1個(1500m)の合計4個のメダルを獲得したビクトル・アン選手の活躍はターニングポイントとなるかもしれません。

ジャマイカでさえ、冬季五輪でメダルを獲得したいと思えば、地元のジャマイカ人ではなく、強豪国の代表に洩れた人材を登用しなければならないのです。

しかしながら、そのようなご時世だからこそ、この作品はより輝きを増しているかのようです。

メダル獲得だけが人々を感動させるものではないのです。

強豪国の代表漏れ選手は、(選手側の論理では)アンフェアであると感じるかもしれませんが、五輪が、(メダル有力選手の国籍変更を許容しない)国家・国民相対主義であっても、それはそれで良いのではないかと思わせる映画です。

2014年3月29日 01:27

日本プロ野球の互換性

2014年3月28日、プロ野球のセ、パ両リーグが同時開幕しました。

周知の通り、昨シーズンは、楽天の田中将大投手が24連勝を成し遂げ、楽天の日本一に貢献しました。

ポスティング制度によって田中選手は米大リーグのニューヨーク・ヤンキースと7年1億5500万ドル(155億円)という大型契約で海を渡ることになり、大リーグで1球も投げたことない田中選手に、名門ヤンキースが、大リーグ投手史上、歴代5位の額をオファーしたことが話題になりました。

日本のプロ野球の「顔」である代表的な選手が、大リーグに移籍する時、常に米国での互換性が問われてきました。

その年の大リーグのFA市場、大リーグの各球団の台所事情、米国の経済状況などがあり、簡単に比較はできませんが、日本球界を代表する超一流選手の入札及び契約金の総額は着実に上昇してきたと言えます。

2000年、7年連続パリーグ首位打者の記録を持って渡米したイチロー選手は1312万5000ドルの入札金と3年総額1400万ドルでシアトル・マリナーズと契約しました。

2006年、パリーグでの通算8年で108勝、防御率2.95、2006年・ワールド・ベースボール・クラシックMVPの松坂大輔選手は5111万1111ドルの入札金と6年総額5200万ドルで、でボストン・レッドソックスと纏まりました。

2011年、7年で日本通算93勝、通算防御率1.99のダルビッシュ有選手は、5170万3411ドルの入札金と6年総額6000万ドルでテキサス・レンジャーズと契約しました。

田中選手の場合は、新ポスティング制度によって入札金の上限が2000万ドルとされているため、個人契約の比率が(7年1億5500万ドルと)高くなっています。それでもヤンキースが投じた総額は破格であり、イチロー選手、松坂選手、ダルビッシュ選手の総額と大きな差があります。しかし、その「格差」が、それぞれの実力差であると決めつけることはできません。

何が変わったかを考えると、日本選手の大リーグでの活躍によって、米国において、日本のプロ野球の評価が上昇しているように思えるのです(もちろん、その年の米球界の事情も反映しているでしょうが)。

日本のプロ野球は80年前の昭和9年に全日本軍が組織され、11月から12月にかけてベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグらを擁した米大リーグ選抜と日本で18試合を戦ったことから歴史が始まります。結果は、日本の18戦全敗だったそうですが、その時の全日本軍のメンバーが中心となって大日本東京野球倶楽部(巨人の前身)を結成され、日本でプロ野球が誕生します(サンスポ、3月28日)。

80年後、ヤンキースの先発投手陣に2人の日本人選手(黒田選手、田中選手)が名を連ね、レッドソックスのクロザーも日本人(上原選手)です。今の大リーグ選抜には日本人選手も欠かせないことでしょう。

日本のプロ野球が大リーグと同等になったとは言えないかもしれません。しかし、十分な互換性があります。日本球界での24連勝は正当に評価されるのです。互換性があってもまだ格差がある現状では、それ故にスター選手が流出してしまうのです。より互換性が高まり、大リーグと日本とプロ野球のレベルが同等になると、流出にも歯止めがかかるのかもしれません。

それまでは、毎年のように日本球界の「顔」が渡米することになるのでしょう。それが、日本独自の野球文化の衰退に繋がるか、それとも日本の野球文化の国際化になるのかに着目したいところです。

2014年3月26日 23:59

日韓が直面している内的課題とは何か

竹島(韓国名・独島)を巡る領土問題について質問をされる時、私は「竹島を将来において誰が守るのか」と逆に問います。

今ということではなく、100年、200年、500年後です。

日本の2012年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子供の数)は、1.41です(厚生労働省)。前年よりも、0.02ポイント上がったとはいえ、人口の維持に必要な2.08には程遠く、少子高齢化に歯止めがかかったとは言えません。

人口問題研究所の『日本の将来推計人口:平成25年1月推計の解説』(2013年1月)によれば、2100年における日本の総人口は5,000万人(出生中位、死亡中位)を切ります。少子化だけではなく、超高齢化であり、2100年では41.6%が65歳以上の高齢者と予想されます。労働人口は極めて少なく、だいたい1人の労働者が1人の高齢者を養っていかなくてはなりません。

お隣の韓国は、もっと悲惨な状況です。2013年の韓国の合計特殊出生率は1.18人です(中央日報日本語版、2014年2月12日)。統計庁の人口シミュレーションでは、このままですと現在約5000万人超の韓国の人口は2040年には4500万人となり、2050年には4000万人にまで減る可能性が高いとされています(日経ビジネス、2014年3月26日)。高齢化も日本に負けず、2016年には、高齢人口の比率が20%を超える超高齢社会に達してしまいます(中央日報、2月12日)。

国家とは、領土、主権、国民(人々)の三要素によって構成されています。このどれか一つでも欠ければ、独立国家ではなくなるのです。

日韓の竹島問題は、領土に関係するマターです。しかし、その両国は世界史に類を見ないスピードで少子高齢化を迎えています。

日本の人口が数千万となり、韓国の人口が数百万となっても、領土問題は解決しないかもしれません。人口が激減し、超高齢化した両国が自分の領土だといがみ合っているのでしょうか。

日韓が人口減少に苦しむ一方で、世界人口は増加の一途を辿っており、住む土地が欲しい人は、将来において世界中に溢れていることでしょう。世界史の流れから言えば、数百年後は、日本、韓国の土地には今とは別の系統、もしくはミックスされた住人がいるかもしれません(ヨーロッパの例を見れば、移民の融和は、そう簡単には進まないでしょう)。

3月25日、日本の安倍首相と韓国の朴槿恵大統領は、米国のオバマ大統領に促される形で、オランダのハーグで会談しました。安倍首相と朴大統領が正式に会談するのは両政権が発足してから初めてであり、両国の外交関係は良くありません。

しかしながら、両国が認識しなければならないことは、少子高齢化によって両国が危機的な状況に直面しているという同じような現実なのではないでしょうか(もちろん、様々な課題が両国の国内にあるからこそ、外交が悪化しているとも言えるのですが)。

2014年3月23日 23:59

過去に戻れたら何をするか?:映画『アバウト・タイム』で繰り返される問い

繰り返し使われるお馴染みの主題でも、楽しめる映画もあります。

『アバウト・タイム』(原題:  About Time)

制作国 英国
制作年 2013年
監督   リチャード・カーティス
主演   レイチェル・マクアダムス、ドーナル・グリーソン、ビル・ナイ

あらすじ
【舞台は現在の英国。21歳のティムは、ある日、父親から一家の男子は全員タイムトラベルの能力を持つことを知らされる。暗闇で手を握り、戻りたい時間を考えるだけで、自分の関係する過去にだけ戻れるという。最初は疑っていたティムも、実験すると実際に昨年末の大晦日のパーティに戻れ、その力を信じることになる。その夏、ティムの家に、ティムの妹の彼の従妹シャーロットが滞在することになり、ティムは何度もタイムトラベルの力で口説こうとするが、相手の心まで自分の希望どおりにはすり替えられないことを学ぶ。失意の中で、家を出て、ロンドンの弁護士事務所で働くことになる。しばらくすると、偶然、魅力的な女性メアリーと出会い、タイムトラベルの力を使って近付こうとするが、苦戦が続く。メアリーとの恋愛、結婚、そして、父親になることで、ティムはタイムトラベルの力とその力を共有する父親との関係を相対化していく。】

当ブログ2014年1月5日1月11日1月18日にて、映画『恋はデジャブ』(米国、1993年)についてかなり詳細に書きました。

映画『アバウト・タイム』の主題は、基本的に『恋はデジャブ』と同じです。

「何度もやり直せることが重要なのではなく、人生の1日1日にベストを尽くすことが重要である」なのです。実際には、私たちは人生をやり直せないので、「今日1日を(明日もあると思わずに)大切に過ごせ」ということなのでしょう。

しかしながら、『アバスト・タイム』と『恋はデジャブ』では、「答え」を導くまでの方法論が異なります。『アバウト・タイム』は自分の選択によって、繰り返す力を捨てるのですが、『恋はデジャブ』では繰り返しの中でベストを尽くし切ることで、繰り返しが止まるのです。

また、舞台も英国のロンドンと米国ペンシルベニア州パンクスタウニーと異なります。

正直申しまして、作品としての完成度は『恋はデジャブ』のほうが高いように思えます。ただ、『アバウト・タイム』の舞台がロンドンであることで、ロンドンで20代前半を過ごした私には、個人的に客観性を失ってしまうシーンが幾つかあります。

そして、私がロンドンの頃に戻れたら何をするか、と考えざるを得ませんでした。(妻も時々、読んでいるようなので)ここでは、とりあえず、もっと勉強したいと答えておきます。

2014年3月22日 07:36

STAP細胞疑惑によって、誤解して欲しくないこと

先日、神戸にあります勤務先の近くの定食屋さんで食事をしていたところ、近くのテーブルでサラリーマン集団がSTAP細胞騒動について語り合っていました。

「結局、人生で目立とうとすると、ろくなことがない」、「ノーベル賞級の発明なんて人生にはいらない」、「アップダウンの少ない平凡な人生が一番いい」(実際は関西弁で語られています)。

理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダーが科学雑誌「ネイチャー」に公表したSTAP細胞に関する論文への疑惑、小保方氏が早稲田大学に提出した博士論文の「コピペ」疑惑は、最初の段階におきまして、STAP細胞が世紀の発見として持ち上げられた分だけ、人々に与える心理的な影響は大きいように思えます。

2014年2月8日付の「神戸と生命科学」と題した当ブログで、自然科学はリベラルな土地ではなくては繁栄せず、神戸はその自然科学が発展する素地があるのではないかとまで記しました。その神戸で、上記のような会話を耳にするとは。。。

確かに、誰でもこの2ヶ月間において、ジェットコースターのような人生を味わった小保方さんと同様の経験はしたくないでしょう。

しかし、小保方さんの例を持って、何もしないことを肯定するとすれば、それはそれで筋違いであるようにも思えます。

彼女が、STAP細胞を発見したいと考えたことは間違ってはいないのです。最大の問題は、目的のために用いた手段が社会的には許されないことだった(可能性が高い)のです。彼女の「過ち」によって、未知の世界に挑戦することがいけないような風潮が生まれてしまっているとすれば非常に残念です。

別にSTAP細胞に拘らなくても良いのですが、これを機に地道に研究をして得た成果を評価するような社会になりますことを願っています。

世の中はまだ分からないことばかりです。

例えば、宇宙を構成する95%は原子以外であり、暗黒物質、ダークエネルギーと称されていますが、実態は把握されていないとされています。私たちは、物質的に95%が分からない宇宙に生きており、解明すべき点は少なくありません。

自然科学のみならず、社会科学でも同様であり、私たちは知らなくてはならないことに囲まれているのです。

STAP細胞疑惑から学ぶことは、インチキはしないということが第一であり、それが全てなのです。

私は、当ブログ2月1日付で、STAP細胞を発見した小保方博士から刺激を受けたと書きました。彼女の発見に疑惑が生じて、(たとえ、自分が大した研究者ではないとしても)しっかり研究しなければならない、という気持ちがむしろ強まっています。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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