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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2013年8月

2013年8月31日 00:00

中国人留学生は増えているのか、減っているのか。

朝日新聞に「中国人留学生、2年で1万人以上減 日中関係を不安視」(2013年8月29日付)という記事がありました。

記事では、東日本大震災や日中関係の影響で、国内の日本語学校で学ぶ中国人留学生が激減しているとしています。日本語学校の大半にあたる約400校が加盟する財団法人「日本語教育振興協会」(東京)の調査によると、同協会認定校に在籍する中国人は、2010年は2万9271人だったのに対し、2012年は1万8093人に落ち込んでいるそうです(いずれも7月1日現在)(同上)。

記事では、中国人に入れ替わるようにベトナム人が増えていると紹介しています(同上)。

事実、小生の勤務校でも、学年が下になる程、ベトナム人の留学生数が増えていきます(私の20人の基礎ゼミには、4人のベトナム人が在籍しています)。

2010年との比較で、2012年において中国人の留学生数が減っているのは事実ですが、最新情報ではまた状況が変化しています。

日本語学校に入学するための2013年4月生期における中国からの在留資格申請者数は、6,497人となっており、1万人を超えていた2008年~10年を下回っているとは言え、2012年の6,141人から上昇傾向となっているのです(留学情報社「(速報)2013年4月期生の在留資格認定証明書申請数」)。

なぜ、中国からの留学希望者は再び上向きになったのでしょうか。その背景としては中国国内の教育事情があると考えられます。

中国では海外留学ブームが起こっています。進学熱が高まりながらも、日本の大学入試センター試験にあたる「高考」の受験者数は、5年連続で減少しており、むしろ、海外留学を希望する学生が大幅に増えているのです。

私の学生たちに聞くところ、第一希望は、米国留学人気が根強く、次にヨーロッパ諸国となり、日本はその後に位置するようです。日中関係は確かに、不安定ではあります。それでも、国と国の関係は、中国の学生が個人的な理由で、日本への留学しようとする流れを押し止めるまでのインパクトは与えないかもしれません。

現在、日本の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校及び大学に入学するための準備教育課程を設置する教育施設における外国人留学生数は137,756人(平成24年5月1日現在)です。その内、86,324人(63%)が中国出身です(日本学生支援機構ホームページ「平成24年度外国人留学生在籍状況調査結果」)。

30年~50年という長期的には分かりません。しかし、少なくとも短期的には中国人の日本留学希望者は大幅には減らないのではないでしょうか。

2013年8月28日 18:15

「アベノミックス」:どちらがどちらのカモフラージュなのか?

8月15日、安倍晋三首相は靖国参拝を見送り、中国、韓国、米国に一定の配慮を示した形になりました。閣僚では、新藤義孝総務相、古屋圭司拉致問題相、稲田朋美行革相が訪れ、「お決まり」的に中国、韓国政府は日本政府を批判しました。

当ブログ7月24日に記しました通り、安倍政権は政策的にグローバル資本主義路線の「アベノミクス」と「ナショナリズム」の混合であり、「アベノミックス」と言えるような状況です。

「アベノミクス」とは金融緩和政策、財政出動、成長戦略、TPP参加、財政健全化であり、概して(多分にグローバル化を意識した)資本主義的な政策です。

「アベノミクス」が成功すれば、国内の格差化に繋がる可能性があり、国民が一様に経済的成功を収め得る訳ではありません。日本国民の格差化は、同じ民族同士の「(勝ち負けの)違い」を浮き上がらせますので、「ナショナリズム」(特に下層からの「ナショナリズム」)とは矛盾するのです。

先進国のどこの政府も、少しでも多くの自国民をグローバル化する世界において「勝ち組」にしたいと願いますが、グローバル化とは国境を越えたヒト・モノ・カネの移動であり、「勝ち組」も「負け組」も国境を越えて、どうしても分散されてしまいます。故に、先進国の多くは二極化の方向へ進んでいます。

「アベノミクス」の延長上において、下層からの「急進のナショナリム」を喚起してしまう危険性があります。もしそうなれば、急進ナショナリスト勢力は、安倍政権をも批判するようなラディカルさを伴うことでしょう。

反対に、安倍政権が「ナショナリズム」政策を全面に押し出すとすれば、「アベノミクス」にブレーキがかかることになります。

ウォール・ストリート・ジャーナル誌は「アベノミクス」の最終章は移民の大量受け入れにすべきだと記しています。論理的に日本経済の復活は少子化対策と縮小する市場を回復するために移民の受け入れしかないというのです(ジョセフ・スターンバーグ「アベノミクスに欠けている矢―移民政策」『ウォール・ストリート・ジャーナル』6月27日)。

実際、竹中平蔵氏は『現代ビジネス』2013年7月16日において移民の大量受け入れを進めるべきだと主張されており、経済成長だけを考えれば、ウォール・ストリート・ジャーナル誌の意見は間違っているとは言えません。ただし、外国人労働者を大量に受け入れるとすれば、「ナショナリズム」とは別の政策となります。

そう考えますと、安倍政権の本当の色はどちらなのかと悩んでしまいます。

利点を挙げるとすれば、「アベノミクス」を推進した際の問題点(格差化やグローバル化の歪)が「ナショナリズム」色で消され、「ナショナリズム」を推進した際の問題点(憲法改正や対米、対中関係)が「アベノミクス」で目立ち難いことです。

どちらがどちらのカモフラージュなのでしょうか。それとも、やれるところまで両方という二刀流なのでしょうか。現段階では判断ができません。

2013年8月25日 15:23

オープンキャンパスで何を観るべきか

大学は夏休みとなり、高校生(受験生)向けのオープンキャンパスが各大学で行われています。小生も勤務校で特別講演を担当致しました。

高校生は色々な大学のオープンキャンパスに参加すべきでしょう。ただ、夏休みに見られることは限定的であるように思えます。

大学は、第一にヒトですので、人間を観なければなりません。教員、事務スタッフ、学生。特に教員は重要です。どのような研究者がおり、どのような研究をしているのか、講義はどのような感じなのか、この教員から学びたい、共に時間を過ごしたいと思えるのか等を考えなくてはいけません。

オープンキャンパスの講義は「普段着」ではなく、半分「晴れ着」のようなところもあります。飾っていますので、その分だけ割り引かなくてはなりません。そもそも、1人や2人だけの話では全体は分かりません。本当は、夏休みではなく、学期中に大学を覗いてみるのが一番良いように思えます(各大学も、夏休みしか対応ができないので、この時期に開催しているとは理解しております)。

その上で、たとえ夏休みの大学でも見るべきところがあります。

それは、図書館です。

図書館は文字通り、本を借りたり(返したり)、読んだりする場所です。当然、蔵書数は重要です。それだけではなく、講義と講義の間、ふっと立ち寄っても、居心地の良い空間であるかどうかも観て欲しいと思います。

大学に入ったら友達、彼、彼女を作るぞと考えている方もいるかもしれません。

もちろん、大学は仲間と出会える社会空間でもあります(英国のウィリアム王子は進学しましたセント・アンドリューズ大学で後のキャサリン妃と出会いました)。

ただ、1人になる時間も大切です。そして、1人なれる空間として図書館はとても重要です。

あまり参考にならない点としては、就職率何%と言うような数字です。いまどき、大学名だけで学生を採用しているような企業は殆どないでしょう。就職は大学名ではなく、大学を利用して(勉強して)自分で勝ち取るものなのです。大学単位で就職が強いというのは稀なケースであると考えます(ないとは申しませんが)。飽くまでも個人です。

校舎等の施設は新しく清潔なほうが良いと思いますが、優先順位は高くすべきではありません。新しい校舎も人がつまらなければ、楽しくありません。30年後、校舎は古くなりますが、友達(もしかしましたら先生も)は旧友になります。

オープンキャンパスで将来の友人に会うことは稀であると思います。ただ、「拘り」をもって大学を選べば、将来、同じような「拘り」をもった仲間に会える可能性はあるかもしれません。

以上は、私個人の見解であり、勤務校及び小生が研究ベースで籍を置く大学とは全く関係ないことをお断り申し上げます。

2013年8月24日 12:34

偉大なる「マージナルマン」としてのイチロー選手

大リーグ・ニューヨークヤンキースのイチロー選手が、8月21日のブルージェイズ戦でヒットを打ち、日米通算4000本安打を達成しました。

イチロー選手は、日本球界のオリックスに在籍した9年間で1278本の安打を放ち、大リーグではシアトルマリナーズ、ニューヨークヤンキースに13年在籍し、2722本を打ったことになります。

大リーグの歴代1位はピート・ローズが達成した4256本。2位はタイ・カッブの4191本で、イチロー選手は3位になります。

ただし、イチロー選手は日米合算であり、大リーグの記録ではありません。私は、米国社会(大リーグ関連メディア)がこの点をどのように評価するかを注視していました。

一部で日米合算であることを強調する報道がありましたが(The Wall Street Journal, "Why Ichiro Reaching 4,000 Hits Means So Much to Japan" August  22, 2013;「イチロー4千安打「認めない」けど「偉大」」、朝日新聞8月23日)、概してその偉大さを讃えるものでした。

イチロー選手が日本のプロ野球界入りを選択した当時、大リーグ球団への入団がオールタナティヴな選択としてあった訳ではありません。日本の9年間をゼロと考えるのは、「アンフェア」ということになります。もちろん、9年間の1278本を大リーグ記録としてカウントするのも別の意味で「フェア」ではありません。

今回、米国メディアでの評価は、日本での1278本も、米国での2722本もそれぞれ偉大であり、事実を事実として受け止めて賞賛しているように映ります。

ただし、そのレベルまでに日本のプロ野球における数字への評価を高めたのは、イチロー選手が米国において2722本を打っている故であるように思えるのです。

私は当ブログや担当講義で社会学の「マージナルマン」をテーマにしてきました。「マージナルマン」とは、二つ(以上)の社会集団にも属し、一つのアイデンティティに固定されていない人間のことを指した米国の社会学者ロバート・パークが提唱した概念です。

イチロー選手は、その野球人生において日本、米国の野球界に属しました。厳密には、同時に所属していませんので、「マージナルマン」とは言えないかもしれません。

しかし、4000本という数字はマージナル性の上にあります。米国社会は、近未来においてイチロー選手が米大リーグ単独での3000本を記録した際、改めて評価をするかもしれませんが、私は今回のマージナルな4000本は日米のプロ野球の関係史において非常に価値があるように考えています。

日本一のヒットメーカーが、米国に渡り、マージナル化しながら打ち続けたことで、米国における日本球界の価値を上げ、同時に日本の野球ファンに大リーグを身近な存在にしたのです(大リーグで活躍したのはイチロー選手だけではなく、野茂英雄選手、松井秀喜選手もそうですが、イチロー選手は13年という長期間において第一線で打ち続けています)。

偉大なるマージナルマンの残した社会的なインパクトは計り知れません。その一つは、実況していた米国人のアナウンサーが「omedeto!」とシャウトしていたことにも表れているように思えます。

イチロー選手(等)の活躍によって野球(Yakyu)はBaseballと互換性を得たように見えるのです。

2013年8月21日 16:42

アンフェアなことをアンフェアと言えるために:映画『招かれざる客』の決意

「本音」と「建て前」は日本だけではなく、世界中にあります。ただ、意志次第で「建て前」を「本音」化することができるのかもしれません。

『招かれざる客』(原題: Guess Who's Coming to Dinner )
制作国 米国
制作年 1967年
監督   スタンリー・クレイマー
主演  スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ヘプバーン
受賞 1968年アカデミー賞主演女優賞・脚本賞受賞作品

あらすじ
【舞台は、1960年代の米国サンフランシスコ。黒人の医師で学会でも注目される(30歳代後半の)ジョンは、ハワイ大学の講演で20代前半の白人女性ジョーイに運命的に出会う。2人は婚約し、ジョーイの両親に結婚の承諾を得ようとサンフランシスコの両親の家を訪ね、夕食を共にすることになる。新聞の社主をしているジョーイの父親マットは長年人種差別と闘ってきたが、娘が黒人と結婚することを受け入れられない。夕食に同席することになったジョンの父親も異人種間の結婚を認めようとしない。しかし、母親達は2人を認めようと考え、夫たちを説得する。最終的にジョーイの父親マットも2人の結婚を受け入れることを決意する。】

主人公の(白人女性ジョーイの父親)マットはリベラル系新聞の社主なのにもかかわらず、自分の娘が黒人と結婚することが許せないのです。それは彼が社会で主張する理屈ではなく、感情のレベルであり、説明することさえできないのです(むしろ、論理化すれば自己破綻してしまいますので、駄目なものは駄目だと言うしかないのです)。

しかし、若い2人の固い意志の前に、徐々に母親たちは理解を示していきます。マットはそれでも反対し続けるのですが、黒人男性ジョンの母親に「燃えカス」と言われ我に返ります。

マットは、黒人が嫌いだから娘の結婚に反対していた訳ではありません。娘の将来の苦労を考えて、賛成できなかったのです。おそらく、ジャーナリズムに身を置いていたマットは、誰よりも2人の今後の苦難を分かっていたのでしょう。最後にマットは、2人を受け入れます。「燃えカス」と呼ばれ、反対していた理由が、自分が逃げたいと思っていたことを悟り、彼らと共に歩むことを決意するのです。

2009年には、オバマ氏が米国初の黒人系(ハーフ)大統領となり、時代は変化しています。30歳代後半、高名な医師の黒人男性との結婚を反対する白人系米国人(の両親)は少数派でしょう(60年代にこの設定で物語が成立していることに驚きます)。

むしろ、グローバリゼーションによる社会の二極化は肌の色を超えて生じており、黒人と白人の「勝ち組」同士の結婚が問題視されるとすれば、別の観点からでしょう。

しかしながら、現実として、様々な局面で差別や偏見は消えていません。私のような者でも、講演やメディアに寄稿する際(このQuonNetでも)、保身を考えたことがないといえば嘘になります。理屈で考えて「アンフェア」なことに「アンフェア」と言える大人でありたいと思います。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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