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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2013年6月

2013年6月30日 21:10

ハシズムはファシズムではなかった

1年半程前、社会人向けの担当講義(ヨーロッパ論)にて受講生の何人かから「日本維新の会」の橋下徹共同代表(その時はシングル代表でした)のファシストですかと問われたことがあります。

当時、橋下氏は多くの知識人とバトルを繰り広げており、その強引な手法は「ハシズム」と「ファシズム」を連想させるような言い方をされていました。

私は、そのような問いを受けるといつも「違うように考えています」と答えてきました。

【諸説ありますが、ここではファシズムを「民族主義+社会主義」である民族社会主義的なイデオロギーの一形態と位置付けます】。

ヨーロッパの急進右翼政党と比較した際、確かに橋下氏の主張や「日本維新の会」が掲げる政策は、民族社会主義的な要素がありますが、一方でTPPの肯定などグローバル市場主義も推進しようとしていますので、欧州型のファシスト、ネオファシスト政党とは言えません。

そもそも、「日本維新の会」(大阪維新の会)は、大阪において、日雇い労働者の「あいりん地区」で有名な西成区で弱く、比較的富裕層が多い北区、西区、中央区で強いのです。階層的にはミドルからアッパーミドル層をコアとする地域政党と言えます。

関西において橋下氏や「日本維新の会」が根強い人気があるとすれば、それはおそらくその右翼性が受けているのではなく、ミドル層以上の人々から主にその改革路線が支持されているからであると考えます。

前回も記しました通り、日本では広範囲に有権者から支持されるグローバル化に反対する急進右翼政党が見当たりません。

なぜならば、「自民党」にしても「日本維新の会」にしてもグローバル市場主義経済を肯定しながら、右翼的であろうとするため資本主義と右派ナショナリズムが混在しているからです。既に、社会の二極化が進むヨーロッパではグローバル市場主義を肯定する政党は、下層の自国民の支持を失いつつあり、故に左右の急進政党が台頭しているのです。

逆に言えば、グローバル市場主義を肯定しながら「右翼」であるとされる政党が主要政党である限り、日本でファシズム型/ネオ・ファシズム型の民族社会主義政党が支持を拡大する可能性は高くないと言えます(反対に、グローバル市場主義を肯定する「右翼」が大衆の支持を失った時、政治が急進化する危機があることになります)。

今回の東京都議会選挙では、8議席から17議席へと議席数を倍増させた共産党の躍進が目立ちました。それは、かつての民主党に代表されたグローバル市場主義を肯定する「左翼」がいち早く瓦解してしまっていることを示しているように思えます(もっとも、共産党自身も謳っているように、今や日本の「老舗」の伝統政党の一つである日本共産党が急進的政党であるかどうかも再考察すべき点であると認識しています)。

2013年6月29日 17:13

東京都議会議員選挙:「共産党」、「みんなの党」の躍進と「維新の会」の敗北

先週の日曜日、東京都議会議員選挙がありました。既にQuonNetでは大西良雄氏による詳細な分析が掲載されています(6月24日付)。大西氏も言及されています通り、この選挙の特徴は43.50%という戦後2番目に低い投票率にあるように思えます。過半数以上の有権者を投票所へ向かわせなかった選挙でした。故に、組織票がモノを言う選挙結果になりました。

上記を前提に結果を見ますと、予想された「自民党」の圧勝、「民主党」の惨敗、「公明党」の手堅さ以外の注目点として、8議席から17議席へと議席数を倍増させた「共産党」と1議席から6議席増やし7議席となった「みんなの党」の躍進、34人を公認しながら2議席の獲得に留まった「日本維新の会」の苦戦が目につきました。

当ブログにて私が昨年から分析してきましたヨーロッパの諸選挙では、全体に左右の急進化が特徴でした。有権者は、まず、グローバル市場主義(もしくは拡大EU)を支持する勢力と反グローバル化に大別され、反グローバル派勢力は、右翼と左翼に更に分かれます。急進的右翼と急進的左翼は協力関係にありませんが(むしろ敵対関係にありますが)、主義主張はかなり似通ってきていたのです。

日本のケースでは、昨年末の衆議院議員選挙でも都議会議員選挙でも、グローバル経済の中での日本再生を謳うアベノミクスを支持する勢力ははっきり見えましたが、反グローバル勢力の姿が明瞭ではありませんでした。

今回、「共産党」が躍進したことは、一応、反グローバル化の声が出てきたとも言えるのかもしれません(今や日本政治において伝統的政党となってしまいました共産党の勝利に関して、それを反グローバル化の急進政党の躍進と位置付けられるかどうかは、もう少し時間をかけて考察する必要があるようにも思えます)。

その上で、右翼勢力が台頭しない理由を考えれば、安倍政権が「右翼政権」であると認識されていることがあるように思われます(この半年を観る限り、安倍政権は右翼性よりも資本主義性が全面に出ています)。日本では安倍政権をより右から急進的に批判する勢力が、現段階ではほぼ存在しないのです。

「日本維新の会」に関しましては、TPPへの対応等を見ても、安倍政権に重なることはあれ、(良し悪しは別として)より急進的な存在にはならないように考えていました。

多くの選挙分析では、今回の敗北の背景に橋下共同代表の「慰安婦」「風俗」を巡る発言があったとしており、直接的理由としては、その通りであると思いますが、逆に、それは有権者が「日本維新の会」に右翼的な方向性を求めていないということなのかもしれません。「日本維新の会」から右翼性を削除したような主張をしてきた「みんなの党」が躍進したのはその証左ではないでしょうか。

しかし、状況は日々、変化しています。

産経新聞社とFNNが6月22日、23日に実施した世論調査では、景気回復を実感しているかどうかに関して「実感していない」との回答が82.3%となっています。一方で、過半数以上がアベノミクスを支持しており、多くの有権者はバブル期に思いを馳せながら、アベノミクスの恩恵を夢見ているともいます。

と同時に、同調査ではアベノミクスのへの支持率は高所得者になる程上昇する傾向があるとしており、その恩恵が庶民にまで届かずに終わる可能性もあります。

もし、アベノミクスがグローバル化の一形態であり、格差化を助長するような結果を導くとしますと、ヨーロッパのように反グローバル化を掲げる右翼左翼の大衆政党が台頭する危険性も否定できないように考えます。

2013年6月26日 23:41

サー・アレックス・ファーガソンの退任

当ブログ2013年5月18日にて、サッカーの元イングランド代表キャプテン、デビッド・ベッカム選手が今季限りで引退する件に関しまして言及しました。ベッカムは、学生時代から名門マンチェスター・ユナイテッドと契約しており、同チームが育成した時代のヒーローでした。

そのベッカムを世に送り出したのは、1986年からマンチェスター・ユナイテッドの監督を務めたアレックス・ファーガソンでした。

そのファーガソンも、今季でマンチェスター・ユナイテッドの監督を退任しました。彼の27年間の在任期間においてイングランドのリーグ優勝13回、FAカップ優勝5回、欧州チャンピオンズリーグ優勝を2回(1998-99、2007-08)等の輝かしい成績を残しています。

グラスゴー生まれのスコットランド人であるファーガソン監督は、現役のプロサッカー選手としてはスコットランドリーグで活躍した選手に留まっています。33歳で引退すると指導者の道を歩みますが、それもスコットランドでした。1974年から1986年までスコットランドの6チームで指揮を執り、成果を上げています。最後の1985年から1986年はスコットランド北東部のアバディーンの監督をしながらスコットランド代表の監督も兼任し、1986年のワールドカップ・メキシコ大会にも出場しています。

その後、イングランド・プレミヤリーグに移ってマンチェスター・ユナイテットの黄金時代を築き、ファーガソンはスコットランドが輩出した世界トップレベルの監督になりました。1999年にはナイト爵を授与されてSir Alexと時に称されます。

マンチェスターにおいて27年という長期政権になった理由は様々でしょうが、スコットランドリーグの監督やスコットランド代表監督になるにはビックネームになり過ぎてしまい、スコットランド人故にイングランドの監督にはなれないということもあったかもしれません。

アイルランド系移民が比較的多いイングランド北部のマンチェスターという町も、ファーガソンにとってベストな環境だったのかもしれません。

ファーガソンは、そこでロンドンの下町出身のベッカムに出会います。特権階級生まれでもない(労働者階級と言える)ベッカムとスコットランドの名伯楽ファーガソンは、最強のコンビとなっていきます。

英国はサッカーリーグが、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに分かれており、UKリーグはありません(当ブログ、2012年8月 8日 に採り上げました通り、マンチェスター・ユナイテッドでは同時期、ウェールズ代表のギグスも活躍していました)。

そして、同じ2013年、ファーガソンは監督を、ベッカムは現役選手を引退することを自らの意志で決定しました。

ベッカムはファーガソンの勇退に関して「ボスは、父親のような存在だった」とコメントし、ファーガソンはベッカムの引退に際し、「彼は正しい時を選んだ」と語っています。

ファーガソンとベッカムのいたマンチェスター・ユナイテットは、まさに英国(United Kingdom)であったように思えてなりません。

2013年6月23日 13:51

留学生30万人計画と自宅訪問

私の勤務校は多くの留学生が在籍しています。

留学生と申しましても様々で、日本語検定試験1級や簿記検定1級に合格している優秀な学生もいれば、残念ながら一部に、大学に来なくなってしまっている(優秀ではない)学生もいます。それは、日本人学生と同様です。

日本人学生と異なる点は、留学生の場合、除籍や退学となっても日本に居続ければ、不法滞在者になり、犯罪に巻き込まれる危険性も生じることです。

そこで、私たち教員は長期に大学の講義に出席していない学生の自宅を定期的に訪れることになっています。

そのような学生の場合、大学に登録している住所にはいないことも少なくありません。それでも確認のために自宅訪問をしなければならないのです。

私は先日、その自宅訪問を体験しました。正直、楽しい仕事ではありませんでしたが、色々と考えさせられました。

私が担当したのは中国出身の4年生のAさんで、大学から徒歩20分程の繁華街の外れに登録住所がありました。少なくとも昭和の頃に建てられたと思われる至る所にひびの入った鉄筋アパートのポストにはAさんの名前はありませんでした。

念のためにブザーを鳴らすと、外国人の男性が3名出てきて、私が自己紹介しようとすると、何かの集金と間違われたのか、3人が外国語(おそらく中国語)で怒鳴り始めました。もちろん、私は即、退散しましたが、Aさんはどこに行ったのかと考えざるを得ませんでした。

こんなことを書けば、そんな留学生を入学させるなとお叱りを受けるかもしれません(直接、母国から入学するケースは稀で殆どが日本語学校経由です)。

しかしながら、Aさんが最初から不真面目な学生であったかどうかは分からないのです。本当に日本で学びたいと真剣に考え、来日しながら、大学もしくはバイト先のトラブル等に遭遇し、学ぶ意志を失ってしまったかもしれません。反対に、お金儲けを第一に考え、来日しながら、勉強が楽しくなって奨学金を獲得するくらい頑張っている人もいるかもしれません。

それでも、結果としてAさんのケースは私たち教員の力が及ばなかったことを反省しなければなりません(私は、Aさんがどのような経緯で日本に来て、何年あのアパートに住み、どうして大学に来なくなってしまったのか知りたいと思わずにはいられません)。

なぜこのような勤務校の恥部を敢えて書かせていただいたかと言えば、2008年、日本政府はグローバル戦略の一環として2020年迄に留学生を30万人にする計画を打ち上げているからです。

平成23年5月1日の段階では約13万8千人ですので(日本学生支援機構)、今後、2倍以上増える予定です。より(結果として)優秀な留学生だけが2倍に増えるとは限りません。つまり、勤務校の課題は、勤務校だけには限定されないことであると認識できるのです。

もう一度、繰り返しますが、勤務校の多くの留学生は真面目な人たちです。Aさんのような一部の学生の存在によって、大半の学生たちの学び機会が失われて欲しくはないと存じます。

そのためにも、Aさんのような学生を出さないように日々頑張っていかなくてはいけないと肝に銘じています。

2013年6月22日 00:00

誰もがフーリガンになり得る危険性:映画『ザ・フーリガン』が描く「怖さ」

当ブログ、2013年6月12日においてサッカー日本代表がワールドカップ・ブラジル大会への出場を決定した夜に、渋谷に集まった群衆(若者)が秩序を守りながら喜びを表している姿を論じました。ヨーロッパ(特に英国)においては、日本と異なり、サッカーは時にフーリガン問題を引き起こします。

『ザ・フーリガン』(原題  I.D.)
制作国 英国
制作年 1995年
監督 フィリップ・デイヴィス
主演 リース・ディンズデール

あらすじ
【舞台は、フーリガンが社会問題化している80年代のロンドン。警察は、フーリガン組織の実態調査に乗り出そうとしている。警察官ジョンは、他の仲間と共に悪名高いフーリガン団体「シャドウェル・タウン」に覆面潜入するように命を受ける。ジョンは警察官であることがばれないように、より積極的に過激なフーリガンとして行動する。そうするうちに、ジョンは日常においても暴力的になり、警察官である自分に戻れなくなってしまう。ある日、ジョンが警察官であることがフーリガン仲間に露呈してしまうが、ジョンは警察官に戻れず、フーリガン仲間からも拒絶される。最終的にジョンは「ナショナル・フロント」(人種主義的、右翼団体)に自分の居場所を見出していく。】

幾つかあるフーリガンを扱った映画の中で、本作品は一番「怖さ」を感じました。主人公ジョンは、どこにでもいる普通の警察官でした。その警察官が、フーリガン組織へ覆面潜入捜査をすることで、自らもフーリガン化してしまうのです。つまり、本作品は、フーリガンになる人が異常ではないことを訴えています。

日常生活の中で、誰もが何らかのストレスを抱いているでしょう。そのストレスを暴力的に発散することがフーリガン組織の中で「評価されてしまう」時、警察官でも我を忘れてしまうのです。正確に述べれば、(それが、この映画が「怖い」ところですが)フーリガン化しているジョンは、本当の自分を見つけたように幸せそうにも見えることです。

更に、最終的に元警察官・ジョンが、ナショナル・フロント(人種主義的、右翼団体)に自分の居場所を見出していくことは、「怖さ」を倍増させていきます。全てのフーリガンが、政治的な人種差別主義者になるとは限りません。ただ、本作品は、その潜在性を描いているのです。

この作品はBBC(英国放送協会)が制作しているBBC Filmです。こんな作品をBBCが世に送り出していることに驚きます。全くと言う程、愉快な映画ではありませんが、考えさせられます。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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