私は色々なところで学生の皆さんに、何でもよいので、本当に好きなことを徹底的に勉強すべきだと申し上げてきました。そのためにも、大学の専攻のバリエーションが必要です。
当ブログ、
2012年11月25日では「寿司学科、演歌学科、日本庭園学科、野球学科はあり得ないのか?」というタイトルで、「ビートルズ学」や「サッカー学」等、大学の専攻が多様化している英国の例を紹介し、日本も英国のように専攻を多様化すべきであると記しました。
このように論じますと、時々、学生の就職はどうするのかという質問をいただきます。寿司学科、茶道学科、庭園学科、野球学科を卒業して就職があるのかという問いです。
まず、第一に既存の法学部、経済学部、文学部等を出ても大学学部卒業生の就職活動は非常に厳しくなっていることを理解する必要があります。文系の場合、就職に絶対的に強い学部がなくなりつつあるのです。
更に理系でも、工学系の人気就職先であったソニー、パナソニック、シャープ等の製造業がこの数年、赤字が続いていることは周知の通りです。たとえ、大企業に就職しても将来は保障されないのです。
2012年3月におけます大学卒の就職率は93.6%とされていますが、これは就職希望者を対象にしたもので、全学生の割合ではありません。昨春の大卒者の全体の就職率は63.9%に過ぎないのです(文部科学省『学校基本調査-平成24年度(速報)結果の概要-』平成24年8月27日)。
残りの36.1%には、大学院進学者や留学者が含まれますが、平成24年度の大学院進学者数は76,884人であり、全卒業者559,030人の13.8%なのです(同上)。つまり、残りの22.3%は、進学も就職もしていないことになります。
大学は就職のために存在する訳でありませんが、4年間の授業料を支払い、生活費を捻出し、その後に何もすることがないのは好ましいとは言えません。
約2校に1校の大学が定員割れであることは、平均で約4人に1人の大学生が「未定」のまま卒業している現実と重なってくるのでしょう。
それでは大学に行かなければ、就職が良いのでしょうか。高卒者の70%以上は大学(53.6%)もしくは専門学校 (16.8%)に進学しており、 就職者は16.8%にしか過ぎません。就職率この数年、微増していますが、平成10年度の22.7%からは考えますと長期減少傾向にあります(同上)。
大卒と高卒では初任給から賃金格差があり、大学卒業後の就職が難しいからと言って、高卒で就職すればよいというようにはなっていないのです。大学の数を減らし、高卒者数を増やせば、日本の若者の就職事情が好転するという構造ではないことになります。
単純に考えれば、今でも少ない高卒者の給料は、大学進学者が大量に減ることで労働市場が激化しますので、良くても現状維持、悪ければ減少する可能性があるのです。低賃金者を増やしても日本の将来は明るくないのです。
もし、大学の定員割れの主要因の一つが大卒者の就職難であるとすれば、高卒者を増やすことは「答え」になりません。
若者の就職は、グローバル化の中で、日本がどのような産業形態でどのようにサバイバルしていくかを考えることとリンクしているのです。
その上で、私は、低賃金化には将来はないと考えます。世界中には日本よりも労働者の賃金が安い国が山程あります。それらの国と、安価なモノ、サービスを作ることで勝負しても結果は明らかです。
付加価値の高い仕事に就くにはどうすれば良いのでしょうか。結局のところ、真剣に自分の「遊び感覚」を研ぎ澄ますように「学び」続け、自分自身のプロフェショナルな付加価値を高めるしかないのではないでしょうか。
当ブログで何度も書いておりますが、グローバル化における先進国の産業の付加価値とは、大量生産型ではなく、趣味の「拘り」の延長上にあるように思えるのです。
また、上記の通り、一流大学を卒業し、一流企業に入り、なんとなくサラリーマン生活を続けられる時代ではなくなってしまったのです(今でも、少数は存在するかもしれませんが)。このような時代だからこそ、自分の趣味に拘ることが意外に「成功」の近道なのではないでしょうか。
大学は専攻を社会のニーズに合わせて(もしくはニーズを開拓して)多様化し、学生が自分自身に拘り、楽しく学び、グローバル化する社会において仕事上の付加価値を高められるようにアシストすべきであるように考えます。
もちろん、それでも就職難を完全に解消することはないでしょう。しかし、そのような方向性しか先進国の選択はないようにも思えます。