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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年4月28日

2012年4月28日 05:17

「iPad革命」(2):高齢者、障害者もコンピュータ生活へ

1987年、ソニーは「ウォークマン」のテレビCMにニホンザルの「チョロ松」君を起用しました。猿が「ウォークマン」を聞きながら瞑想する姿をご記憶の方も少なくないでしょう。

前回、記しました通り、今はオムツをして片言しか話せない赤ちゃんが、リアルに「iPad」を楽しんでいるのです。

幼児を魅了する「iPad」ですが、米国では高齢者にも好評のようです。1歳児も動かせるのですから、操作は簡単で、とても見易いのです。

例えば、米国オレゴン州ポートランド近郊に住む99歳のバージニア・キャンベルさんは、緑内障を煩いかつてはパソコンも携帯電話も使ったことがなかったそうです。ところが、お嬢さんから「iPad」をプレゼントされて以来、「iPad」を用いて毎日、電子書籍を読んだり、詩を作ったりしているそうです(FOX 12 Oregon,"iPad Helps 99-Year-Old Rediscover Writing", 2010年4月22日;「iPad 99歳も2歳も利用」読売新聞、2010年5月28日)。

「iPad」を利用することで本が読めるようになったのはキャンベルさんが特別だったからではありません。

ドイツのヨハネス・グーテンベルク(マインツ)大学の研究チームは、「iPad」と紙の本のどちらが読み易いかを若者と高齢者を対象に調査しています(Johannes Gutenberg University Mainz, "Different reading devices, different modes of reading? JGU Media Convergence Research Unit publishes a pioneer study on reading devices vs. paper"2011年10月20日)。

その結果は、興味深いことに若者の読書スピードはどちらでも殆ど変わらなかったの対し、高齢者にとっては紙の本よりも「iPad」で読む方が3倍速く読むことができたというのです(同上)。

日本でも「iPad」等のタブレット型コンピュータは注目され始めています。

福岡県那珂川町にて「iPad」を使った認知症・介護予防の取り組みが行われており(毎日新聞、西部朝刊、2012年3月9日)、また、島根大医学部の山口修平教授のチームは「iPad」向けの認知機能検査のソフトを開発したと報じられています(毎日新聞、2012年3月23日)。

高齢者だけではありません。福岡県では障害児教育に「革命的」な変化をもたらしている例があるそうです。福岡県築上町の県立築城特別支援学校では、「iPad」を用いた教育を行っており、障害を超え、簡単に意思疎通できる効果が大きいとしています(「障害児教育にデジタル革命」朝日新聞、2012年4月5日)。

私は「革命」という言葉を安易に使うべきではないと考えています。しかし、「革命」を人々の社会的価値観が根底から変わるという文脈で使うならば、「iPad」は少なくとも先進国において本来パソコンから最も遠い存在であった幼児や高齢者、障害者をコンピューター社会に取り込みつつあり、その登場は「革命的」であるように思えます。

ただし、文明の利器が、子供の成長をどれほど促すのか、老後の生活を本質的に如何ほど充実させるのかは定かでは有りません(もっと端的に言えば、子供は「iPad」遊びで賢くなるのかどうかも)。でも、それは、コンピュータ生活自体の課題であり、子供やお年寄りだけに限ったことではなく、またコンピュータの機種として「iPad」だけが問われることではないでしょう。

「人間は太古の昔から進化していない」と言うのは簡単です(一面、事実であるでしょう)。しかし、もしかしたら、人々が創り出すライフスタイルは日常的に変わり続けているため、人々は「革命的」な変化に気付かないだけかもしれないのです。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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