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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年4月22日 05:25

ソニーの過去最大、5200億円赤字に思うこと(2):愛国心と消費行動

英国において、外国製の輸入車が大きな マーケットシェアを占めるようになった1980年代、英国自動車メーカーは自社製品が英国製であることを強調するようなテレビCMを流すことがありました。

特に「オースティン」社(オースチン・ローバー・グループ)のCM「Austin Metro: A British car to beat the world」は顕著です。

最初に、日本車、フランス車、ドイツ社、イタリア車が軍艦からブリテン島に上陸してきます。そこに、「オースティン」社の新車「Metro」が現れ、(戦闘シーンはありませんが)外国車を「人気」と「性能」によって駆逐するのです。英国の愛国歌「ルール・ブリタニア」(Rule, Britannia!)が全面に流れ、最後には英国車である「Metro」の「勝利」が謳われます。

一方、外国の自動車メーカーは(特に日本メーカーは)当然、機能性を中心に訴えていくことになります。面白いことに、1982年のフォークランド紛争ではあれ程、愛国的であった英国民ですが、その多くが、不況の中、英国車と外国車を比較し、より優れた外国車を選択するのです。

その結果、英国自動車メーカーは軒並み自国市場において「敗北」を続け、次々に外国企業の買収対象となっていきます。

1989年には英国王室御用達でもある「ジャガー」社が米国の「フォード」社へ(2008年3月にインドの「タタ・モーターズ」社が買収)、1994年には英国大衆車の代名詞的存在「ローバー」社がドイツのBMW社へ(同じく現在はインドの「タタ」社が所有))、そして、最終的に1998 年には「誰もが知る」英国高級車メーカー「ロールス・ロイス」社が、ドイツの「フォルクス・ワーゲン」へ売却され、スポーツカーを除き英国資本の自動車メーカーは消滅しました。

英国の自動車市場において、愛国心は資本主義に勝てなかったのです。

政治においてどれ程、愛国的であっても、消費者として人は必ずしも愛国的にはなれないのです。そして、高くても安くでも価格に対してより価値(Value for Money)のあるモノを造ったメーカーが世界の消費者に求められていくのであり、メーカーの「国籍」は殆ど関係ないのです。

「ソニー」の話に戻しますと、矛盾しますが80年代の「ソニー」はいち早く、脱日本化し、世界の市場で成功を収めたからこそ、(一部の人にとって)表面的には「日の丸」と同じような存在になったことになります。

実は私はこのところ「ソニー」製品を続けて購入しています。愛国心からではなく、極めて個人的な懐古主義からです。

私は「ウォークマン」第一世代であり、小学生の頃、初めて「ウォークマンWM-2型」をお年玉で買った時の感動は忘れられません。小さい「ウォークマン」は私の世界を広げてくれました。「ウォークマン」との出会いは、大人になり、異国の地で「ソニー」の8ミリビデオを外国人のおじさんたちに褒められたことより何倍も印象深いのです。

「ソニー」が再びグローバルに復活した時、それによって日本国民にどれだけ利があるのか分かりません(同じ理由で、「サムスン」社の成功が韓国社会にどれ程貢献しているのかも疑っています)。

ただ、「ウォークマン」世代の1人として、もう一度、あの感動を与えて欲しいと思わざるを得ないのです。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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