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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年4月21日 05:06

ソニーの過去最大、5200億円赤字に思うこと(1):「Do you know me?」が意味したこと

「ソニー」の2012年3月期の連結業績赤字が、同社、過去最高の5200億円になると報じられています。前年同期は2596億円の赤字で、最終損失は4年連続となっています(ロイター、2012年4月10日)。同社は、国内外で1万人の人員削減を打ち出し(読売新聞、4月12日)、来春の新規採用も12年実績と比べて35%減の180人に留まる見込みです(朝日新聞、4月18日)。

この「ソニー」の巨額赤字が衝撃的なのは、「ソニー」という企業が、日本を代表する大手電子機器メーカーであるに留まらず、「ウォークマン」に代表される小型オーディオ機器が、日本車と共に80年代、「Japan As Number One」と称された日本が最も経済的に成功していた「時代」を体現しているからであるでしょう。

コラムニストの小田嶋隆氏は、「「ソニー」は海外において日本を象徴する存在であり、「日の丸」と同じだった」と語っています(TBSラジオ『たまむすび』、4月11日)。氏は、海外では「ソニー」の製品を持っているだけで現地の機械好きの(オタク的な)人々に声をかけられることもあり、そのような「ソニー」の低迷は一企業の業績不振では済まされない喪失感があると言います(同上)。

まさにおっしゃる通り、私も海外で同じような状況を何度か経験しています。

更に付け加えれば、「ソニー」の盛田昭夫会長は米国の「アメリカンエクスプレス」社のクレジットカードのテレビCM(1985年)に登場し、「Do you know me?」と語り、日本人は「顔の無い」と言われる中で日本人を代表する「顔」(人物)になっていたのです(『日経ビジネス』、1986年3月31日号)。

しかし、「ソニー」の巨額赤字ニュースが与える喪失感を、代表的な「日の丸」企業の不振と認識し、日本企業「ソニー」を応援したいと思うのは間違っているのかもしれません。なぜならば、愛国心によって不振のグローバル・メーカーが救われることはないと考えられるからです。

実は、「ソニー」が最も世界で売れていた時、海外では「ソニー」を日本企業であると思わずに「ソニー」製品を購入していた人も多かったのです(田中秀憲「ソニーとリコー」『Wisdom』、2010年6月14日)。それ故に、「Do you know me?」と盛田会長が語りかけるCMはインパクトがあったのです。

現在は「サムスン」社や「アップル」社等がそうかもしれませんが、国際的に成功する企業は、成功すればするほどオリジナルな「国籍」が見えなくなっていくのです(「サムスン」の電化製品を購入する世界中の多くの消費者は、「サムスン」が韓国の企業であるという理由で同社製品を買っている訳ではないのです)。

世界の大半の消費者は安くて良いモノを求めているだけでしょう。逆に、大企業にとって、会社のオリジナルな「国籍」が自社製品以上に目立ってしまうことは(ブランドが国に結びついているケース以外は)世界市場における成功を多くの場合、意味しないのです。

自社製品が海外で爆発的に売れながら、「Do you know me?」と日本人の社長が尋ねられる程度の認知度は理想だったのかもしれません。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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