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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年4月14日

2012年4月14日 23:50

「留学したくない高校生」と日本の将来を考える

先日、日本、中国、米国、韓国の高校生を対象にしました「高校生の生活意識と外国への関心」についての調査が発表されました。調査は2011年6月から11月の間に実施され、日本では2458人、中国2235人、米国1032人、韓国2292人の高校生に質問しています(日本青少年研究所ホームページ)。

それによれば、海外留学に関して「興味がある」、「やや興味がある」と答えた割合が最も多かったのは、韓国の高校生であり、70.7%、次に中国の69.5%、三番目が米国の64.6%、最下位は日本の57.2%でした(読売新聞、4月8日)。

日本は最下位でも6割弱が留学に関心があることになり、それ程の「差」ではないかもしれません。

深刻なのは、全く関心のない学生が日本は15.9%であり、韓国や中国の倍以上あったことです(同上)。つまり、日本の高校生は海外留学に関して「二極化」が進んでいることになります。

日本の高校生で海外留学に興味のない理由は「言葉の壁があるから」(48.1%)、「外国で1人で生活して行く自信がないから」(42.7%)、「面倒だから」(38.5%)となっています。

確かに留学は言葉に苦しみます。外国で1人で生活するのは大変です。そして、面倒なことだらけです。

しかし、問題はこれらの事項は国内でも1人住まいをすればほぼ当てはまってしまうのです。将来的には更にそうなるでしょう。

言葉は違うと言われるかもしれませんが、自民党時代から現在まで、少子化による労働力不足対策として、近い将来における約1000万人の外国人労働者の国内への受け入れが検討されてきたのです。1000万人はおそらく日本語が殆どできないと考えるべきでしょう。東京に住み続けても(少子化が解消されず、労働力を補おうとする限り)近未来は言葉のコミュニケーションに苦しむ事態が起こるかもしれません。

【少子化は男女平等社会が成熟しない限り改善されないのですが、今直ぐ取り掛かってもフランス等、欧州の成功例から考えて、十年以上の時間がかかるとみなすべきでしょう。少子化に伴う市場の縮小は国内経済をマイナスに導く可能性が高く、おそらく日本も他の先進国同様、資本主義国家である限り、とりあえずの対策として移民を受け入れることになるのでしょう。】

外国人が増えることだけが原因ではありません。グローバル化によって日本人も多様化し、日本人として「一括り」するのが難しくなっていきます。良くも悪くも昭和後期に称されたような日本人の「同質性」が失われていくのです。日本人同士でもコミュニケーションは難しくなり、「面倒なこと」は日本に留まり続けても、今後増えるばかりであるように思われます。

「海外留学は素晴らしいぞ」とお勧めしたいのではありません。

日本と外国が、国境によって(特に経済において)明確にラインが引かれていた時代は過去になりつつあります(別の機会に論じますが、グローバル化によって国家が無くなることはなく、むしろ、独立国家の数は増加する傾向が続くでしょう)。今の高校生が社会の中核を担う20年後、30年後、経済的にはますますグローバル化が進みます。

それ故に、私は、将来において留学してもしなくても、国内外で受ける困難にさほど変化がないことを指摘したいのです。その際、人々の対応の「違い」は積極的に自ら現実に立ち向かうか、それとも受け身になって現実を追随していくかのどちらかになるでしょう。

実際に留学しなくても良いのです、海外留学にしたいという意志、もしくは外国(異質な社会)への関心をもっていれば、グローバル化で外国が日本に来るような(日本が国際化するような)状況となった際、現実を少しでもプラスに受け入れられるのではないでしょうか。

反対に海外に興味がない、面倒を避けたいと思い、グローバル化の現実に目を背けても、結果的にはグローバル化の荒波に最初に呑まれてしまうかもしれないのです。

正確にはグローバル化の荒波を作り出しているのは私たち自身もありますので、「呑まれる」という表現は適切ではないかもしれません。私たちは、外国に関心があろうとなかろうと、消費者としてより安い外国製品を買い、安い食品を食べ続ける限り、誰もがグローバル化の推進するアクターでもあるのです。外国製品、食品に触らずに生活することが不可能であるならば、日本に外国を招いているのは自分たち自身なのです。

それは、日本だけではなく、世界中の先進国において多かれ少なかれ共通します。人々は自国製品、食品だけで生きていくことなどはできなくなっているのです。

つまり、海外に関心を持つことは、巡り巡って自分たちの(母国での)日常を理解することに繫がっていることになります。逆に、海外への関心を失ってしまうと、自分の身の回りで何が起こっているかも分からなくなってしまうのです。

だからこそ上記の調査において、4カ国中、海外留学への関心が最も低い国が日本である事実は、深刻に受け止める必要があると考えます。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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