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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年2月

2012年2月 5日 00:00

ある小規模企業の人事からグローバル化を考える(2)

10年程前、英国・北イングランドのある日系中小企業を監査した担当者に話を聞いたことがあります。工場ごと日本から英国に移転してしまい、工場と一緒に英国に渡った日本人社員の方が「英語も興味なかったし、勉強もしなかった。今、必死ですよ。まったく海外に住むなんて自分の人生計画になかったのに、なぜなんでしょうね」と語っていたそうです。

グローバル化とはそういうことなのです。

この時代、大学を出た後、就職先の企業の規模、職種にかかわらず、地球のどこで仕事をするか分かりません。

「私の出身大学はTo-dai!」、「Waseda!」、「Keio!」と叫んでも誰も知らないところで生きていかなくてはならない可能性もあるのです。【これは日本の大学だけではありません。ハーバードやオックスフォード等の一部の大学を除けは、殆どの世界の大学は世界で無名です。】

私は、だから、日本の一流大学に行っても仕方ないとか、大学進学は意味がないとかを主張したいのではありません。

むしろ、反対です。

若い方々、お若くない方々も東大、早稲田、慶應、是非、挑戦して下さい。もちろん、そんな国内有名校ではなくても結構。

そして、どこかに入学したら、とにかく本気で勉強して下さい。

日々変化する世界について、グローバル化について、日本の現状について、大学の教員、施設をフルに活用して真剣に学んで欲しいのです。世界のどこでも自分の名前で勝負できるような知力を備えて欲しいのです。

前回、ある学生を採用し、解雇しなければならなかった小さな企業に関して言及しましたが、それは、とても残念な例です。グローバル化の中、全くグローバル化の現状を知らない(昭和のような価値観をもった)学生を採用してしまったのですから。

その会社は今年からはおそらく、採用基準を変えることでしょう。そのような変化こそが、企業のグローバル化なのかもしれません。

上記は、この春から就職が決まっている方(希望通りになった方、希望通りにならなかった方)、就職が決まっていない方にも無関係な話ではないと思います。

日本企業の終身雇用制度は壊れつつあります。グローバル化が進み、欧米企業化すれば数年の雇用契約を延長するような形になるでしょう。今年、就職が決まったか決まっていないかは、一時的なことでしかありません。就職が決まっても安心はできませんし、就職が決まっていなくてもそれ程、落ち込む必要はないように思えます。

職があってもなくても、将来のために勉強してください。経済学、経営学だけではありません(もちろん、経済学でも経営学でも何の問題もありません)。付加価値で勝負する時代です。文学、歴史、美術、スポーツでも、世界のどこかの小さな国の言語や文化でも良いのです。

アップル社の創始者ステーヴ・ジョブズが、大学で学んだことで一番有益だったのは、文字のデザインを学ぶ「カリグラフィー」の教室だったと語るように、何がヒントになるかは分からないのです。

自分の興味を中心にウィングを広げて下さい。そうして、自分自身で、知って考え、行動することでしか、未来に備えることにはならないでしょう。

2012年2月 4日 16:30

ある小規模企業の人事からグローバル化を考える(1)

先日、今春卒業予定の大学生の就職内定率(昨年12月1日現在)が発表されました。

結果は、昨年よりも3.1ポイント上昇し、71.9%でしたが、96年の調査開始以降、最低だった前年に次いで過去2番目に悪い水準であり、就職を希望する約11万7,000人が未定の状態と、就職難は続いています(毎日新聞、2012年1月17日、東京夕刊)。

就職が決まっている学生も、希望の職種、希望の会社に内定を得ている人は少数派なのではないでしょうか。中には大企業を希望しながら、中小企業で働くことになった方もいるでしょう。しかし、それは企業側も同様かもしれません、

ある小規模の会社の話です。

その会社では昨年、初めて新卒で有名私立大学出身の学生を採用したそうです(既に、中途採用では大卒者はいたそうですが)。

小さな会社でもグローバル化の中で将来的な見通しを考え、その若き新人の大卒社員Aさんにとても期待していたそうです。しかしながら、入社後、社内で最も「学歴が高い」その若者は、社長にも大きな態度を示し、会社に馴染もうとしなかったそうです。

そして、その会社では結局、彼に辞めて貰うことにしたそうです。

この話は、ある高名な経済学者から伺ったのですが、その先生は「Aさんは大学の知名度を大学のレベルと誤解している」、更に「その大学の知名度を自分の能力=レベルと誤解している」、「その上で会社の規模、知名度を会社のレベルと誤解し、両者を比較し勝手に自分の位置を決めている」と指摘されておられました。

そのお話を伺った時、私は非常に残念に思いました。

彼は大学の4年間で何を学んだのでしょうか。

彼が経営学、経済学、政治学専攻だろうと、たとえ文学専攻であろうと、4年も総合大学に在籍すればグローバル化に関して勉強するチャンスは少なからずあったと思います。もし、少しでも「グローバル化が何か」を知っていたならば、就職後のそのような態度は有り得ないと思えます。

まず、大学の知名度は限定的です。国内ならばともかく、日本の大学が、地球の隅々まで名が通っているとは考えられません。ところが、グローバル化は地球を包み込もうとしており、日本のビジネスや消費活動は直接、間接に地球の裏側とも関係があるかもしれないのです。

更に、今、日本の企業はその規模に関わらず、円高と少子化のよる市場の縮小、比較的高い法人税など様々な理由で、海外を意識せざるを得なくなっています。

そのようなグローバル化の中で、大企業も、中小企業も「大学の知名度を大学のレベルと誤解し」、「その大学の知名度を自分の能力=レベルと誤解する」学生などは要らないということになってしまうのです。

2012年2月 1日 06:09

野田首相の施政方針演説とオバマ大統領の一般教書演説

1月24日、日本で野田首相の施政方針演説があり、米国ではオバマ大統領の一般教書演説がありました。

両方を同日にネットで見ましたが、各国の政治リーダーは、ネット環境さえあれば各国首脳の演説が即、聞く、見ることができる時代であることを理解すべきであるでしょう。演説の内容もパフォーマンスも簡単に「お茶の間」(パソコン)で比較できるのです。

野田首相の施政方針演説とオバマ大統領の一般教書演説は好対照でした。ご存知の通り、野田首相は野党が参議院で多数を占める「ねじれ国会」の中で、自民党の2人の元首相(福田、麻生)による過去の施政方針演説から引用しました。

「与野党が信頼関係の上に立って話し合い、国政を動かすことこそ、国民に対する政治の責任だ」(2008年、福田元首相)、「消費税を含む税制抜本改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講じる」(2009年、麻生元首相)。

そして、野田首相は「政局よりも大局を」と訴え、自民党に政権の政策の実現のための協力を促したのです。

一方、オバマ大統領は真逆の方法を採りました。税負担が軽い富裕層への増税を宣言し、「公正な負担」を訴えたのです。米国の上院は民主党が最大多数ですが、下院は野党・共和党のほうが与党を議席数で上回っており日本同様「ねじれ」です。共和党は、富裕層への優遇税制を支持していますので、真っ向から勝負することになります。

米国では今年、大統領選挙がありますので、オバマ大統領が現政権と野党・共和党との違いを明確にするのは当然かもしれません。また、大統領制ですので、日本の議院内閣制とは異なり、大統領の個人的なヴィジョンは非常に重要になってきます。

しかし、そのような制度的な違いを超えて、「ねじれ」状況下、野党に対し「僕も君たち(野党)も同じだよ」というアプローチと、「僕は君たち(野党)とは違う」というアプローチは比較する価値があるように思えます。

オバマ大統領の主張の是非は別として、オバマ大統領のほうが有権者にとって分かり易いのは確かです。民主党と共和党が異なる政策を掲げ、大統領(候補)に異なる方向性があるからこそ、有権者は自分の意見を持って投票できるのです。

反対に、野田首相のアプローチは分かり難いと言わざるを得ません(後述するように演説内容に反対している訳ではありません)。そもそも、野田首相は消費税増税など過去の自民党首相と意見が同じならば、今なぜ自民党と違う政党に所属しているのか考えてしまいます。

【この2人の政治家の比較を持って、米国は進んだ国で、日本が遅れた国であると言うつもりはありません。両国の比較において、医療制度や安全性等に関して、日本のほうが遥かに米国よりも優れているところもあります。しかし、だからと言って、日本の政治的な分かり難さ、それに伴う政治的「停滞」を放置して良いということにはなりません。】

言うまでもなく、民主党は消費税増税を掲げて政権を獲得してはいません。ですから、野田首相の演説から懸念されることは、もし、次の総選挙で民主党が勝利し、2、3人首相が代わり、今度は党内の反消費税増税、反TPPのような方が首相となる可能性もあるということです。そして、施政方針演説で「野党の皆さんも、以前、消費税増税反対って言ってましたよね」と言われたら、民主党に投票した人も、しなかった人も虚しくなるのではないでしょうか。

もしくは、現在、なぜか野田首相の「ラブコール」を拒絶する自民党が政権に復帰し、同じく2、3人首相が代わり消費税増税派の新首相が登場し、施政方針演説で、野田元首相、菅元首相の演説を引用し「野党の皆さんもかつて消費税増税に賛成と言っていましたよね」、「協力してください」と言っても同じです。

消費税増税に関して反対賛成、TPP反対賛成、原発反対賛成、様々あるでしょう。私がここで申し上げたいのは、これらの問題にかんする私の個人的な見解ではなく、民意が政治に反映されていない現状なのです。有権者が考え、上記の重要課題に対し、自分の意見を明確にしても、どこの政党を支持していいのか分からないのです。

当ブログでは繰り返し書いています通り、現在は冷戦下のようなイデオロギーの時代ではありません。ですから、政治家の選択肢は多くなく、政策的な幅も小さいのです。しかし、それでも人間ですから、政治家は、それぞれ意見は異なるでしょう。同じ政党でも、全ての諸政策に関して、合意するのは難しいかもしれません。

ですから、「違う」ことがいけないのではないのです。むしろ、「違う」ことは当然でしょう。だからこそ、「違う」ことを前提に党内でマニフェストを創り上げなければならないのです。そして、そのマニフェストを提示し、総選挙で有権者と約束すれば、新しい契約(選挙)をしない限り、党内のそれぞれの政治家の「違い」は、マニフェストに縛られるのです(首相も、民主党員であり、かつ鳩山政権の財務副大臣だったのですから、施政方針演説は自民党よりは鳩山氏のそれにより近くなければ、矛盾します)。

随分、野田首相の施政方針演説にケチをつけてしましましたが、文句ばかりではなく、将来を考えましょう。

首相の立場から考え、2009年の段階で、野田首相は民主党内で、今回の方針内容をマニフェストに反映させることはできなかったとしましょう。なぜならば、あのマニフェストは鳩山氏のマニフェストであり、野田氏はそれに合意していた訳ではなかったが、政権交代のためにとりあえず静かにしていた(もしくは、2009年以降に意見を変えた)。

仮にそうだとすれば、民主党が分裂しても(政策中心に分裂したほうが有権者にとっては分かり易くなります)、首相は今回の方針内容を新たにマニフェスト化し、国民に信を問う必要があるのではないでしょうか。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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