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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年2月15日

2012年2月15日 22:27

早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校(1):「復興小学校」としての旧京華小学校

今月は早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校にて冬講座を担当しています。

早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校は「京華スクエア」という名称の建物の3Fにあります。

「京華スクエア」は、平成5年3月をもって閉校した中央区立京華小学校、京華幼稚園の建物をほぼそのまま再利用し、平成13年1月にコミュニティに根付く複合施設としてオープンしました(早稲田大学エクステンションセンターの他、産業振興のためのハイテクセンター、シルバー人材センター、京華コミュニティルームがあります)。

つまり、旧京華小学校の一部が現在は早稲田大学エクステンションセンターの教室となっているのです。

廃校となりました小学校が大学の施設として復活するのは異例のことです。多くの方々のご尽力があったでしょうが、物理的にこの京華小学校であった建物の構造がしっかりしていた、頑丈であったということも大きな理由だそうです(東京中央ネット「中央区のまちづくり」)。

京華小学校は明治34年(1901年)に開校しました。当時の校舎は、木造でしたが、大正12年(1923年)の関東大震災により全焼してしまったのです。

大震災で消えてしまったのは京華小学校だけではありませんでした。当時、東京市に存在した小学校196校のうち、117校が倒壊・焼失し、罹災児童数は14万5,962人にのぼり、2,552学級が罹災しました(東京市役所編『東京市教育復興誌』東京市役所、1930年、46-49頁)。

震災後、東京市は災害時の学校建築の重要性を認識し、新しい小学校は鉄筋コンクリート建てとなり、デザインも当時ヨーロッパで流行していた表現主義、合理主義を採用しています(藤岡洋保「東京市立小学校鉄筋コンクリート造校舎の外部意匠」『日本建築学会論文報告集』第300号、1981年2月)。

また、多くの小学校には、小公園が一体化して設計され、災害時の地域住民の避難場所として利用する目的も兼ねられました。

この時、再建された小学校は「復興小学校」と呼ばれ、震災から復活した帝都東京のシンボルとなったのです。

「復興小学校」の117校のうち、現存しているのは19校に過ぎなく(2010年3月現在、神奈川大学21世紀COEプログラムの事業「関東大震災 地図と写真のデータベース」)、今後、改築もしくは取り壊しが予定されている小学校もあるそうです(日本建築学会「東京都中央区に現存する復興小学校 7 校舎についての見解」2010年2月3日)。

昭和4年(1929年)竣工の「京華スクエア」(旧京華小学校)は、その貴重な「復興小学校」のひとつです。八丁堀で83年の歴史を刻んでいます。

東日本大震災を経験し、日本では再び「復興」がテーマとなっています。関東大震災後の苦しい中、東京市は未来を見据え、ヨーロッパの最新デザインと耐久性、安全性を考慮した技術を用いて、117校の公立小学校を再建したのです。

私たちが「復興」を考えるとき、当時の東京のように、現在の世界を見ながら、未来に繋がる「復興」を考えなくていけないのではないでしょうか。「復興小学校」からは多くのことを学べるように思えます。

 

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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