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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年2月 1日

2012年2月 1日 06:09

野田首相の施政方針演説とオバマ大統領の一般教書演説

1月24日、日本で野田首相の施政方針演説があり、米国ではオバマ大統領の一般教書演説がありました。

両方を同日にネットで見ましたが、各国の政治リーダーは、ネット環境さえあれば各国首脳の演説が即、聞く、見ることができる時代であることを理解すべきであるでしょう。演説の内容もパフォーマンスも簡単に「お茶の間」(パソコン)で比較できるのです。

野田首相の施政方針演説とオバマ大統領の一般教書演説は好対照でした。ご存知の通り、野田首相は野党が参議院で多数を占める「ねじれ国会」の中で、自民党の2人の元首相(福田、麻生)による過去の施政方針演説から引用しました。

「与野党が信頼関係の上に立って話し合い、国政を動かすことこそ、国民に対する政治の責任だ」(2008年、福田元首相)、「消費税を含む税制抜本改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講じる」(2009年、麻生元首相)。

そして、野田首相は「政局よりも大局を」と訴え、自民党に政権の政策の実現のための協力を促したのです。

一方、オバマ大統領は真逆の方法を採りました。税負担が軽い富裕層への増税を宣言し、「公正な負担」を訴えたのです。米国の上院は民主党が最大多数ですが、下院は野党・共和党のほうが与党を議席数で上回っており日本同様「ねじれ」です。共和党は、富裕層への優遇税制を支持していますので、真っ向から勝負することになります。

米国では今年、大統領選挙がありますので、オバマ大統領が現政権と野党・共和党との違いを明確にするのは当然かもしれません。また、大統領制ですので、日本の議院内閣制とは異なり、大統領の個人的なヴィジョンは非常に重要になってきます。

しかし、そのような制度的な違いを超えて、「ねじれ」状況下、野党に対し「僕も君たち(野党)も同じだよ」というアプローチと、「僕は君たち(野党)とは違う」というアプローチは比較する価値があるように思えます。

オバマ大統領の主張の是非は別として、オバマ大統領のほうが有権者にとって分かり易いのは確かです。民主党と共和党が異なる政策を掲げ、大統領(候補)に異なる方向性があるからこそ、有権者は自分の意見を持って投票できるのです。

反対に、野田首相のアプローチは分かり難いと言わざるを得ません(後述するように演説内容に反対している訳ではありません)。そもそも、野田首相は消費税増税など過去の自民党首相と意見が同じならば、今なぜ自民党と違う政党に所属しているのか考えてしまいます。

【この2人の政治家の比較を持って、米国は進んだ国で、日本が遅れた国であると言うつもりはありません。両国の比較において、医療制度や安全性等に関して、日本のほうが遥かに米国よりも優れているところもあります。しかし、だからと言って、日本の政治的な分かり難さ、それに伴う政治的「停滞」を放置して良いということにはなりません。】

言うまでもなく、民主党は消費税増税を掲げて政権を獲得してはいません。ですから、野田首相の演説から懸念されることは、もし、次の総選挙で民主党が勝利し、2、3人首相が代わり、今度は党内の反消費税増税、反TPPのような方が首相となる可能性もあるということです。そして、施政方針演説で「野党の皆さんも、以前、消費税増税反対って言ってましたよね」と言われたら、民主党に投票した人も、しなかった人も虚しくなるのではないでしょうか。

もしくは、現在、なぜか野田首相の「ラブコール」を拒絶する自民党が政権に復帰し、同じく2、3人首相が代わり消費税増税派の新首相が登場し、施政方針演説で、野田元首相、菅元首相の演説を引用し「野党の皆さんもかつて消費税増税に賛成と言っていましたよね」、「協力してください」と言っても同じです。

消費税増税に関して反対賛成、TPP反対賛成、原発反対賛成、様々あるでしょう。私がここで申し上げたいのは、これらの問題にかんする私の個人的な見解ではなく、民意が政治に反映されていない現状なのです。有権者が考え、上記の重要課題に対し、自分の意見を明確にしても、どこの政党を支持していいのか分からないのです。

当ブログでは繰り返し書いています通り、現在は冷戦下のようなイデオロギーの時代ではありません。ですから、政治家の選択肢は多くなく、政策的な幅も小さいのです。しかし、それでも人間ですから、政治家は、それぞれ意見は異なるでしょう。同じ政党でも、全ての諸政策に関して、合意するのは難しいかもしれません。

ですから、「違う」ことがいけないのではないのです。むしろ、「違う」ことは当然でしょう。だからこそ、「違う」ことを前提に党内でマニフェストを創り上げなければならないのです。そして、そのマニフェストを提示し、総選挙で有権者と約束すれば、新しい契約(選挙)をしない限り、党内のそれぞれの政治家の「違い」は、マニフェストに縛られるのです(首相も、民主党員であり、かつ鳩山政権の財務副大臣だったのですから、施政方針演説は自民党よりは鳩山氏のそれにより近くなければ、矛盾します)。

随分、野田首相の施政方針演説にケチをつけてしましましたが、文句ばかりではなく、将来を考えましょう。

首相の立場から考え、2009年の段階で、野田首相は民主党内で、今回の方針内容をマニフェストに反映させることはできなかったとしましょう。なぜならば、あのマニフェストは鳩山氏のマニフェストであり、野田氏はそれに合意していた訳ではなかったが、政権交代のためにとりあえず静かにしていた(もしくは、2009年以降に意見を変えた)。

仮にそうだとすれば、民主党が分裂しても(政策中心に分裂したほうが有権者にとっては分かり易くなります)、首相は今回の方針内容を新たにマニフェスト化し、国民に信を問う必要があるのではないでしょうか。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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