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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2011年9月 3日

2011年9月 3日 18:19

グローバル化する日本企業(1):日本企業の海外企業買収

日本企業が今年1月~7月に買収した海外企業は260件を数え、前年同期比25.6%増加しているそうです。近年で最も件数が多かった2006年の421件を超える勢いであり、買収総額は3兆4183億円で、前年同期比53.2%増と急伸しています(東京新聞2011年8月19日朝刊)。

最大規模は、武田薬品工業がこの5月にスイスの製薬大手、「ナイコメッド」社を、約1兆1000億円をかけて買収した一件です(ロイター、2011年5月19日)。日本企業の海外企業の買収額において歴代3位の高額でした。

同じ月に、東芝は約1863億円をもってスイスに本拠を置くスマートメーター(通信機能付き電力量計)製造大手の「ランディス・ギア」社を買収しました(ブルームバーグ、2011年5月19日、東芝プレスリリース「産業革新機構とランディス・ギア社への共同投資に関する契約を締結」7月25日)。

キリンホールディングスは、8月、ブラジル2位のビール大手「スキンカリオール・グループ」の発行済み株式の50.45%を約2 000億円で取得し、子会社化しています(朝日.Com、2011年8月2日)。アサヒグループホールディングスは8月18日、ニュージーランドの酒類大手「インディペンデント・リカー」を約976億円で買収すると発表しています(産経ニュース、8月18日)。

その他、NTTデータが情報システムを手掛けるイタリア・ミラノの「バリューチーム」、楽天がドイツ電子商取引サイトの大手「トラドリア」、みずほファイナンシャルグループがインドネシアの自動車ローン会社「バリモア・ファイナンス」をそれぞれ数十億から数百億で買収しています。

この海外企業の買収ブームは、1ドル70円、80円台で長期に推移している円高基調が第一の要因とされています。

確かに円高は否定できませんが、武田薬品や東芝が買収した企業はスイスに本社があり、スイス・フランも日本円と同様、ドルに対して高く、円高だけではその理由として不十分です。

よく指摘されているように、少子化による日本市場の縮小、各業界のグローバルな競争の激化等、円高以外の理由も加わっていると見るべきでしょう。

いずれにしましても、日本が東日本大震災と原発事故に襲われた2011年、日本の大企業は過去に無い程、グローバル化しているのです。

財務省は日本企業の海外企業の買収が、企業の競争力を高めるとともに、日本企業が持つ円もドルに転換されることによって、これ以上の円高に歯止めをかかることを狙い、海外企業買収を推進する方針を打ち出しています(毎日JP. 8月25日)。

しかし、日本企業は海外企業の買収のみならず、設備投資でも海外戦略を加速化しており、野村証券の木内登英チーフエコノミストは、「国内生産を海外へ移す形で海外投資が増えれば、雇用面などマイナスの方が大きい」と産業の空洞化を指摘しています(東京新聞2011年8月19日朝刊)。

グローバル化は日本企業の国際競争力を高めると同時に、脱日本企業化でもあります。日本企業が海外企業を飲み込む度に(海外の市場でビジネスをするのですから当然ではありますが)各企業の日本色が薄れていくと考えるべきでしょう。

そして、それは、初期段階においては海外企業の買収として始まっても、最終的には実質上の企業の海外流出となる可能性があり、日本における雇用者数の減少等、国益に合致することばかりではないようにも思えます。

たとえ、そうでもあったとしてもグローバル化は不可避であり、このような現状を認識して私たちのライフスタイルや人生設計を考えていかなくてはいけないのかもしれません。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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