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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2011年6月

2011年6月29日 23:59

国会鑑賞のススメ

先日、友人が都内のインド料理店に食事に行きましたところ、インド人と思われる店員がお店のテレビで「国会中継」を見ていたそうです。

友人は「国会中継」など見て楽しいのかとその時、感じていたそうですが、61日からの【野党による内閣不信任案提出】→62日【民主党代議士会における菅総理による「めどがたったら辞任」発言】(菅総理辞任の速報)→【不信任案採決】→【否決】→63日参議院予算委員会における【菅総理の「そのような約束はしていない」発言】の流れを見ていますと、外国人からは意外に面白く見えるかもしれないと語っていました。

実際に、国会は各国の国民性が反映されますので、外国に行きました際に訪問地において国会が開催されていましたら、できればテレビで観察されることをお勧めします。もし、各国の国会中継を専門に放送する番組があれば、良い比較文化論、比較社会論の教材になると思います。

言葉が分からないといわれるかもしれません。しかし、日本の例を見ますとそれでも十分に異なる社会、異なる文化を楽しめるのではないでしょうか。

例えば、不信任案採決前、山井和則衆議院議員(民主党国会対策副委員長)が反対演説を行い、各方面に頭を下げる姿、最終的に民主党から「造反」することになる松木謙公衆議院議員を民主党の仲間の議員が押さえつけ、そしてそれを振り切り、涙を拭って法案に賛成する姿等、その良し悪しはともかくも、外国の方にもビジュアル的に十分ドラマが伝わるように考えます。

私も、上記のドタバタ劇に際しましては、かなり長時間テレビに向かい合いました。その個人的な感想に関しましては6月2日5日に記しました

国会中継を含め外国の見方の例として挙げたいのは、缶コーヒー「Boss」のCMに米国の俳優トミー・リー・ジョーンズが出演する「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」です。宇宙人が地球人ジョーンズに化けて地球を調査する内容です。設定は地球ですが、CMではいつも日本です。

私は、皆さんが海外旅行にお出かけになられ外国を観察する際、今度は皆さんがCMの「宇宙人ジョーンズ」のようになることをお勧め致します。ジョーンズのような「まなざし」で見ると、いつもとは違う発見があるかもしれません。


ちなみに、もし、「宇宙人ジョーンズ」が内閣不信任案を巡るドタバタ劇を見たら何を思ったのでしょうか。政界の「宇宙人」こと鳩山前総理と日本国の公式の「Bossである菅総理、役者は揃っています。いつものように温かく見守ってくれるでしょうか。


 【私が担当講義で上記のようなコメントをしましたところ、永田町の国会議員を日本人の代表であると考えるべきではないというご意見を沢山頂きました。確かに、そのようなお気持ちは分かります。しかし、彼らが選挙で選ばれた私たちの(少なくともそれぞれの選挙区の)代表であることは否定できない事実です。ましてや外国から見れば、日本人の代表そのものなのです。】

 

2011年6月26日 23:53

ゴルファー、ローリー・マキロイが象徴するもの(2)

北アイルランドは、文字通り、アイルランド島の北部にありますがアイルランド共和国ではなく、英国の一部です。

北アイルランドの6州は、1922年に南の26州が英連邦内の自治領「アイルランド自由国」として独立した後も英国に留まりました(1949年、南アイルランドは「エール共和国」として英連邦からも独立)。

それは、北アイルランドの大多数がプロテスタントであり、「住民の意志」としてプロテスタントが多い英国に留まりたいと希望してきたからです。しかし、北アイルランドにもマキロイ家のようなアイルランド系カトリック住民が少なからず滞在しているのです。

2001年の国勢調査によりますと北アイルランド全体における宗教別の割合は、プロテスタントは53.1%、カトリックは43.8%、無宗教が2.7%となっています(University of Ulster, CAIN Web Service-Conflict and Politics in Northern Ireland)。】

そして、前回記しました通り、北アイルランドにおいて「マイノリティ」として暮らすアイルランド系カトリック住民と「マジョリティ」の英国系プロテスタント住民は長らくいがみ合ってきました。両方の過激派は、武装し、時に殺し合いました。英国軍も介入したため、1972年には14名が亡くなった「血の日曜日事件」のような不幸な事件も発生しました。

北アイルランド問題が「未解決」の状態で、1973年、英国とアイルランドは共にEUに加盟し、もはや両国は「敵国」同士ではなくなりました。1980年代に入りますと両国は北アイルランド問題の和平を模索しますが、北の紛争は続いていきます。

ローリー・マキロイ選手が4歳になった1993年、アイルランドと英国の両政府は、共同宣言を発表し、アイルランドにおける平和と和解に向けた自治憲章を定め、北アイルランド問題に関する自治・自決と合意の原則を確立しました。

翌年、アイルランド系武装組織であるアイルランド共和軍(IRA)は「軍事行動の完全停止」を発表しました。これに続いて、英国系武装組織でありますロイヤリスト合同軍事司令部(CLMC)からも同様の声明が発表されました。

そして、1998410日のベルファスト合意 (グッドフライデー合意) により北アイルランド議会の再建、北アイルランド政府の設立などが約束されました。

しかし、和平に反対する少数派は武装闘争を止めなかったのです。IRA分裂し、過激派は「リアルIRA」としてテロを続け、1998には北アイルランドのオマーで28人が亡くなるテロ事件を起こしています。

一時的に政治も混乱し、2003年、プロテスタントの強硬派「民主統一党」とカトリックの強硬派「シンフェイン党」が第一党、第二党となり、連立政権が組めなくなります。そして、再建された議会と政府もその機能を停止することを余儀なされるのです。

しかしながら、同時期、北アイルランドの社会は、「ケルトの虎」と称された1995年から2007年まで続いたアイルランド共和国の急速な経済成長と1992年から2008年までの英国におけ15年以上の景気拡大の恩恵を受ける形で、大きな変化が起こっていたのです。

前述の通り、従来「支配者」側であったプロテスタント系住民は概して富裕層に多く、「被支配者」側であったカトリック系住民は主に労働者階級を形成していました。しかし、長期の経済成長はこの構造を壊し、カトリックからもビジネスで成功する人が現れました。

2000年に北アイルランドで製作された『マンボ!マンボ!マンボ!(原題 Mad About Mambo)』という映画では、ベルファストに住むカトリックの青年の主人公が、一代で成り上がったカトリックの企業家の娘に恋をするという設定となっており、カトリック系住民の間にも「格差」が生じていることが分かります。】

このような社会変動が起こる中、20075月プロテスタント強硬派の「民主統一党」とカトリック強硬派の「シンフェイン党」による歴史的な連立政権が樹立されます。敢えて喩えれば、日本の自民党と共産党が連立政権を組むような(互いに殺し合ってきましたので、それ以上の)劇的な「事件」でした。

1989年生まれのローリー・マキロイ選手は、北アイルランドで和平プロセスが結ばれたり、挫折したり、復活したりする中、アマチュア/プロのゴルファーとして活躍してきました。

高校は北アイルランドの首都ベルファストにありますカトリック系でもプロテスタント系でもない非宗教系の学校に通いました。彼自身、宗教には関心が無く、宗教の授業は退屈だったと述べています(Irish Central.com 200948)

しかしながら、カトリックの労働者階級の家に生まれ育った青年が、宗教に関心が無い1人の「プロゴルファー」として全米オープンを制覇した事実は、何よりもそれ自体が新しい時代の到来を示しているように思えてなりません。

もちろん、彼の存在をもってカトリック住民とプロテスタント住民の軋轢が完全になくなったと断言することはできまし、仮にそれが終焉しつつあるとしても、全ての社会問題が解決した訳ではありません。今までに無かったカトリック同士、プロテスタント同士の経済的「格差」が生まれ、それは、新たな社会的な「亀裂」となりかねません。人々の職業的アイデンティティが、宗教や民族のアイデンティティを超えたとしても、それがバラ色の社会の成立を必ずしも意味しないのです。

それでも、私は、マキロイ選手の「出現」は社会的にも注目に値すると考えます。

アイルランド共和国の首都ダブリンで発行されるThe Irish Times紙は、マキロイのアイデンティティ問題を採り上げ、彼は「英国のパスポートを持っている」故に英国人であるが、彼は「アイルランドでゴルファーとして育った」のも事実であるとし、そして、最後に「マキロイはマキロイ自身である」であると記事を纏めています(The Irish Times 2011620日)。

人がこの世に生まれ、その後、どのような集団的アイデンティティを獲得していくにしても、まず、いつでも「個」に帰れる社会があることは大切であるように思います。特に、北アイルランドでは、正義がだれにあるのか、どこにあるかは別として、「個」が帰属集団の利益のために常に犠牲になってきました。

マキロイ選手程の名声を獲得しなければ、「個」を主張できないとすればそれはそれで問題ですが、社会が彼の存在を容認できるようになっている事実は、北アイルランドの人々の意識の変化を象徴しているようにも思えるのです。

北アイルランドに関しましては小生が担当します早稲田大学エクステンションセンターの夏講座「英国を考える」(716日−813日)の第三回で採り上げます。】

2011年6月25日 22:59

ゴルファー、ローリー・マキロイが象徴するもの(1)

あるスポーツ選手の登場が、スポーツ界だけではなく政治や社会の変化を象徴するようなことがあります。かつてのタイガー・ウッズ選手がそうであったように、先週末、(1923年以降、最も若い)22歳でゴルフの全米オープンを制覇したローリー・マキロイ選手の存在も新たな時代の到来を反映しているようです。

マキロイ選手は、1989年、英国、北アイルランドの首都ベルファース市の郊外にありますハリウッドという町に生まれました。北アイルランドは、長らく英国系プロテスタント住民とアイルランド系カトリック住民が対立してきた紛争地域として知られていますが、マキロイ選手の両親はアイルランド系カトリックです。しかも、彼らが住んでいた地域は圧倒的にプロテスタントが多いのです。

2001年の国勢調査においてマキロイ選手の故郷・ハリウッド(都市部)の人口の68.6はプロテスタントが占めており、カトリックは23にしか過ぎません(2001年、Area Profile of Holywood Urban Area - Based on 2001 Census, Northern Ireland Neighbourhood Information Service) 。】

北アイルランドでは、歴史的に「支配者」側とされたプロテスタント系住民は概して裕福であり、「被支配者」側であったカトリック系住民は主に労働者階級を形成していました。マキロイ選手の両親は、多くのアイルランド系カトリック住民同様に労働者階級であり、父親は一日3つの異なる仕事を持ち、週90-100時間働き、母親は夜勤の工場の食事係をしながら、息子のゴルフ中心の生活を支えたそうです(Independent.ie 20092月7日、Mail Online 2011621日)。

そして、ローリー・マキロイ選手はアマチュアで数々の勝利を挙げ、2007年にプロに転向します。彼が頭角を現すと共に、彼の帰属問題が採り上げられるようになります。

政治とは異なり、ゴルフにおいては基本的に南北のアイルランドは統一されています。団体戦等、時にゴルファーは「アイルランド・チーム」を構成するのです。その背景には、アイルランドの独立前の1891年に設立された「アイルランド・ゴルフ連盟」があります。同連盟は「民族レベル」のゴルフ協会としては最古の歴史を誇り、現在に至っています。

マキロイ選手も慣例に従いアマチュア時代、アイルランド代表としてプレーをしてきました(The Telegraph 2009929日)。と同時に、英国領の北アイルランドに住む彼は、当然、英国のパスポートを得ており、英国代表のゴルファーにもなれる可能性があるのです。

この帰属問題に決着をつけるかのように、20099月、マキロイ選手は、「(ゴルフが正式種目となる)2016年のオリンピックには英国(UK)代表として出場したい」と表明しました(London Evening Standard 2009929, RTE Sport 2009929日)。

特筆すべきは、彼の意思表示が(波紋を起こしたとしても)「政治的」な決断ではないということです。彼自身、特に宗教には興味が無く(Irish Central.com 200948)、理由は単に「英国のパスポートを持っているから」というものであり、彼自身のアイルランド性を全く否定していないのです。また、周囲も一義的にゴルファーとしての彼を認識しているため、大騒ぎにはなっていません(ちなみに、4月のマスターズ・トーナメントでも、今回の全米オープンでもマキロイ選手の出身国は「北アイルランド」として登録されています)。

しかし、このような発言が20年前、30年前ならば、本人が望む、望まないは別にして即「政治化」されてしまったと考えます。おそらく、彼のようなアイルランド系カトリック教徒がオリンピックにおいて英国代表になることを発言すれば、南北のアイルランド系カトリック教徒から(もしかしたら英国系プロテスタントからも)批判されたのではないでしょうか。

言い換えれば、以前ならば、彼はゴルファーとしてよりも先に「カトリックかプロテスタント」、もしくは「アイルランド人か英国人」というアイデンティティを選択しなければならなかったのです。

アイルランド共和国出身のジム・シェリダン監督が撮りました『ボクサー』(1997年)という映画があります。ダニエル・デイ=ルイスが演じる主人公は、北アイルランドのベルファストに住むアイルランド系カトリックで14年間、刑務所に服役したアイルランド共和軍(IRAの元テロリストという設定です。プロボクサーとして大成することが夢だった彼は、出所後、ベルファストに宗派を問わないボクシングジムを開きますが、昔の仲間から妨害されていきます。

映画『ボクサー』の公開は僅か14年前だったのです。一映画を基準に全てを判断することはできませんが、やはり、確実にアイルランド社会が変化しているように思えます。この変化を理解するために、次回はもう少し詳しく北アイルランドの歴史をみながら、マキロイ選手が象徴するものを考えていきます。

2011年6月22日 00:00

自殺者数、13年連続3万人超えを考える

先日、2010年の自殺者数が、前年比1155人減の31690人(男性22,283人、女性9,407人)と公表されました(時事通信 610日)。13年連続の3万人超えとなっています。

久米宏氏はご自分の番組で「不謹慎ながら」と断りながら、東日本大震災における死者15451人 行方不明者7692人(朝日コム617日)を足した数よりも、年間自殺者が多いことに改めて驚愕し、その背後に10倍の自殺未遂者がいることを指摘しています。13年で約400万人の自殺未遂者数が出ている計算になり、氏は日本が戦後の高度成長の果てにこのような自殺大国になってしまったことを嘆かれています(TBSラジオ『久米宏ラジオなんですけど』514日放送)。

私自身も、東日本大震災で多くの大切な命が失われた今年だからこそ、自殺についても貴重な命が失われている事実を直視し、その対策を真剣に考えるべきであると思っています。

自殺は地震や津波とは異なると言われる方もおられるかもしれませんが、フランスの社会学者エミール・デュルケームは19世紀後半に『自殺論』執筆し、自殺が社会的な要因によってもたらされていることを証明しました。

社会的であるということは、自然災害を意味しません。しかし、喩的な表現が許されるとすれば、自殺という「社会の荒波」に呑まれてしまうえば、人は誰もが命を落としかねないのです。誰にでも起こり得る潜在性において、自殺は地震等の自然災害に共通します。

その上で、自殺が地震や津波と異なる点は、日本において毎年、3万人以上の命を攫っていってしまっていることです。自殺は地震や津波以上に、日本において慢性的なのです(地震にもある程度は共通しますが)。

と同時に自殺が社会的であることは、構造的に改善できる可能性も示唆しています。別の表現をすれば、地震以上に対策を練ることができるのです。

そのためには、自殺の傾向や原因を分析、研究しなければなりません。そのような観点から久米氏の「経済成長したのに自殺が増えている」という見方は正しくありません。高い自殺率(=人口10人当たりの自殺者数)は日本だけではなく、概して先進国に見られる現象なのです。ですから、経済成長したからこそ、自殺率が高まったと理解すべきなのです。

その上で、日本が世界の中で自殺率においてトップ(ワースト)5であり、主要国G8諸国、OECD加盟国において日本が1位となっている自殺大国であることは看過できません("Country reports and charts available",WHO website 2010)。自殺が多い先進国の中で、特に日本において顕著である背景には、日本の特有の理由があると推測できます。

長期的には、(自殺が先進国特有の現象であるとすれば)日本の経済発展の仕方、構造が何らかの影響を与えていると考えるべきでしょう。

短期的には、自殺者数は90年代後半から急増しており、この十数年の経済状況と社会変化にフォーカスする必要があります

最大の問題は、日本は他の先進国が近年、自殺率を下げている中(フェアに申せば、韓国とロシア等の旧共産圏諸国は日本と同様の傾向にあり、この数年、自殺率が高い国は主に旧共産圏と日本、韓国という状況です)、13年間、3万人以上の犠牲者を出し続けていることです。

日本と日本人の素晴らしさが国際的に評価されていることは以前記しました。しかし、国民の命を守れない国家は、国家として重大な欠陥があるのです。人命が最も重要であることは言うまでもありません、だからこそ、この問題を避けては通れないのです。

 

2011年6月19日 00:00

AKB48「総選挙」を考える

6月9日に幕を閉じました第三回AKB48の「総選挙」は、多方面において話題になりました。

投票総数は116万6145票、1位には第一回「総選挙」の勝者の前田敦子さんが 13万9892票を集め、返り咲きました。今回2位で昨年1位の大島優子さんは12万2843票でしたので、僅差の勝利でした(オリコン 6月9日)。

【周知の通り、この「総選挙」には、150人以上が参加し、「メディア選抜」(1位〜12位)、「選抜」(13位〜21位)、「アンダーガールズ」(22位〜40位)が選ばれ、1位には次のCDレコーディング等におけるセンターポジションが与えられ、1年間、グループごとの活動にも差がつけられていきます。】

この「選挙」は、投票権付きシングルCD「Everyday、カチューシャ」を購入すれば1票を獲得できるため、1人が何票でも投票可能であり、一部に「選挙」という名にふさわしくないと批判がありました(その他、ファンクラブサイト会員、Mobile会員、ネット上のLIVE月額見放題会員に投票権が付与されています)

大島優子さんはその批判に答える形で以下のようにコメントしています。
「1人何枚も買って、本当に選挙と言えるのか。選挙は1人1票じゃないか。いろんなことをAKBの周りは言います。ですが、私たちにとって票数は、皆さんの愛です」。

実際のところ、「Everyday、カチューシャ」の発売から半月(集計期間:5/24~6/5)の累積売上は145.2万枚ということですから、総投票数(116万票)はその数を下回っており、誰もが何十、何百票も入れた計算にはなりません。所属事務所の発表ではCDからの投票は77万9090票、ファンクラブ会員などによるその他の投票は38万7055票だったとのことです(サンケイスポーツ6月11日、デイリースポーツ6月11日)。

いずれにしましても、制度上、その気になれば何票でも投票できるのは事実ですので、「選挙」であると捉えますと問題が生じます。

しかし、むしろ、この「総選挙」はある種の「株主総会」と認識すべきなのではないかと考えます。

より多くの資本を投じた株主の声が経営に反映されるのは当然です。社長(会長?)の秋元康氏は、経営権を委ねられているのですが、年に一度の「総選挙」(株主総会)によってその権限が制限されているのです(彼の個人的な好みでAKBの主役を選ぶことができないのです)。

と同時に、株主には社長の権限を制限した分(総選挙で1位を選択した分)の責任が生じます。大島さんを選んだか、前田さんを選んだかによってAKBの運営に支障が出るようなことがあれば、その選択が間違っていたと言われかねないのです(現実には、お二人のライバル関係が相乗効果となっていいるようで、どちらが勝利してもAKBはより存在感を増していくようです)。

1位に返り咲いた前田さんが「私のことを嫌いな方もいると思いますが、一つだけお願いがあります。私のことが嫌いな方もAKBのことは嫌いにならないでください」勝利宣言で述べたことは、非常に興味深いです。それは、今後のAKBの成功が、そのまま1位となった前田さんの評価にも直接、間接に繫がっていくことを現しているように思えます。

ここまでAKB48の「総選挙」は厳密には「選挙」ではないと記しながらも、現実の政治と比較する誘惑を断ち切れないところもあります。

上記の前田さんのコメントの「AKB」を「民主党」に替えるとどうでしょうか。

民主党の菅直人首相や小沢一郎氏は「私のことが嫌いな方も民主党のことは嫌いにならないでください」と言えるでしょか。民主党は「仲間割れ」が公然化してしまっていますので同党は組織力においてAKB とは勝負にならないでしょう。

大島さんのお言葉をお借りすれば、そもそも、有権者からの1票1票が「愛」ではなかったということなのかもしれませんが。「愛」はなくとも、せめて有事の際に「信用」できる政治家に投票したいものです。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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