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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年5月27日 01:34

「若さ」を求め「老い」を狼狽える: 映画『サンセット大通り』に描かれる単線的な悲劇

ハリウッドは、以前から同じようなテーマで各社が競って映画を作ることがあります。

『サンセット大通り』(原題 Sunset Boulevard)
制作国  米国
制作年 1950年
監督  ビリー・ワイルダー
出演  グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン

あらすじ
【ハリウッドの若手の脚本家のジョー・ギリスは、最近は仕事に恵まれず、借金を重ねていた。ある日、取り立て屋に追われて車で逃走する途中、大きな邸宅に隠れるように迷い込む。そこでは、サイレント映画時代の大スター女優であったノーマ・デズモンドが、従者のマックスと共に贅沢な暮らしを送っていた。ノーマは、今でも自分が大スターであると思い込み、『サロメ』の脚本を自ら書き、復帰を目指していた。ジョーは、ノーマからこの脚本の手直しを依頼され、住み込みでこの仕事を受けることになる。ノーマは、次第に彼への愛情を露骨に見せるようになり、ジョーはノーマから逃げようとするが、結果としてより深みに嵌っていく。やがて、ジョーは、夜に邸宅を抜け出し、ハリウッドのオフィスで親友の婚約者で、脚本家になることを夢見る女性ベティ・シェーファーと2人で脚本を書くようになる。】

本作品は、前回言及しました『イヴの総て』と同年に制作され、アカデミー賞を争いました(作品賞は『イヴの総て』が受賞)。

『イヴの総て』では、40歳のブロードウェイの大女優のマーゴが付き人となったイヴの若さに嫉妬し、それが逆にイヴにとってはプラスに働いていきます。

8歳年下の恋人で演出家のビルが、慰めてもマーゴは聞く耳を持ちません。ネタバレですが、マーゴは、イヴに「踏み台」にされたことで、結果としてハッピーエンドになります。

『サンセット大通り』では、サイレント映画時代のかつての銀幕スター女優のノーマは50歳であり、若い脚本家であるジョーをお金で自分の邸宅に留めようとします。

こちらでは、ジョーは、脚本家の卵である若い女性に気持ちが傾き、悲劇を導きます。

テーマとしては『イヴの総て』が女優誕生のパターン(サイクル)を描くことに主眼が置かれているのに対し、『サンセット大通り』は単線的に女優の終わりを描いています。

両作品の共通点は、名声を獲得した40歳、50歳の主人公の大女優が若い男性との関係に悩み、「老い」に狼狽え、身を滅ぼしていきます。

当然、ストーリー上の違いはあるにせよ、1950年に若い男性をパートナーとし、「老い」と戦う女優の姿が大作品になっていたことは、1960年代におけるウーマン・リブ時代の到来を暗示しているかのようです。

2017年5月25日 23:46

マンチェスター・テロ事件を考える: 英国生まれの容疑者の「英国性」を直視しなければいけない

5月22日、英国マンチェスター。人気歌手アリアナ・グランデのコンサートが行われていた「マンチェスター・アリーナ」で自爆テロが発生しました。犠牲者は、25日の段階において、死者22人、負傷者116人となっています("Manchester attack: National minute's silence held", BBC, 25 May 2017)。

英国の警察当局は、翌日の5月23日には、実行犯を22歳のリビア系英国人サルマン・アベディ容疑者であると特定しています。

BBCの報道では、アベディ容疑者は1994年1月1日、マンチェスターで生まれで、両親はリビア難民として英国に移住してきたということです。ロンドン生まれの兄と、マンチェスター生まれの弟と妹が存在することが確認されています("Manchester attack: Who was Salman Abedi?", BBC, 25 May 2017)。

地元の学校に通い、大学も地元のサルフォード大学に学び、サッカーはマンチェスター・ユナイテッドのサポーターで、パン屋で働いていたそうです(Ibid)。

自爆しておりアベディ容疑者は亡くなっていますが、単独犯ではないとされています。

既に英国当局は、サルマン・アベディ容疑者兄のイスマイル・アベディ容疑者をマンチェスター南部のチョールトンで、リビア当局が、父のラマダン・アベディ容疑者と弟ハシェム・アベディ容疑者をリビア国内で拘束しています("Manchester attack: Police hunt 'network' behind bomber", BBC, 25 May 2017)。

5月23日には、イスラム国(IS)がこの事件の犯行声明を出しており(ロイター, 5月23日)、アベディ容疑者とその家族だけがテロを実行したのではなく、背後にネットワークが存在するのではないかと報じられております(「英マンチェスターのテロ事件 背後にネットワークか」 NHK, 5月25日)。

ネットワークがどれ程強いものかは今後の調査によって明らかにされるでしょうが、仮にISに深く繋がっていても、サルマン・アベディ容疑者が英国生まれで、英国で教育を受け、マンチェスター・ユナイテッドのファンである事実は消えないことでしょう。

容疑者の22年間を単純にIS一色に染めてしまうのは、「ホームグローン・テロリスト」の実態を隠してしまうように見えるのです。

英国人にとっても、心理的にはテロリストは「外」から来たと思いたいでしょう。難民の2世であっても英国生まれの英国籍者が、同じ英国人を対象にテロを起こしたことを直視するのは辛いのです。

しかしながら、これ以上の「ホームグローン・テロリスト」の誕生を防ぎ、テロリズムの犠牲になる人が皆無になるようにするためにも、事実を見つめなくてはいけないと考えます。その作業が、どんなに辛くとも。

2017年5月17日 03:18

女優誕生の形式(パターン)と芸能界: 映画『イヴの総て』における重層の「踏み台」

ショービジネスだけではなく、人を「踏み台」にして出世していく人はどこの世界にもいます。

『イヴの総て』(原題 All About Eve)
制作国  米国
制作年  1950年
監督  ジョセフ・L・マンキーウィッツ
出演  ベティ・デイヴィス、アン・バクスター

あらすじ
【新人女優イヴ・ハリントンに米国演劇界の最高賞であるセイラ・シドンス賞が与えられる。拍手喝采の中、彼女が祝辞で名前を挙げた「恩人」たちは、複雑な表情を見せる。受賞式の8カ月前、女優志望のイヴは、ブロードウェイの大女優のマーゴが出演する舞台に毎日通い、夫を戦争で亡くしたと語り、マーゴの付き人となる。以後、イヴは、マーゴの食べ方、歩き方、話し方まで真似る。マーゴに、煙たがれると、プロデューサーや演出家、脚本家に近づき、舞台のマーゴの代役を獲得する。そして、マーゴを裏切って舞台に立ち、有名な批評家まで味方につけてデビューを成し遂げる。】

米国アカデミー賞を6部門(作品賞、助演男優賞、監督賞、脚本賞、衣裳デザイン賞、録音賞)を獲得した名作ですので、語りつくされた作品ではありますが、今観ても迫力があり、かつ色々と考えさせられる作品です。

何と言ってもイヴの上昇志向と目的のためには手段を選ばないやり方が、「怖い」のです。

イヴは気が利いて、何事にも有能な女性として登場しながら、出世のために恩人のマーゴを裏切り、野心をむき出しにします。実のところ、野心をむき出しにしてからは、それ程「怖く」ありません。第三者から見て、完璧な「善い人」が、結果として「悪人」になっている前半のほうがスリリングです。

それでも、スターへの道を上り詰め、セイラ・シドンス賞を獲得します。彼女が、本性をむき出しにしてからも、公に批判されないことは(彼女は、されないように策を巡らしてはいますが)、演技が優れていればこそであり、イヴは策略も実力があってこそなのでしょう。

受賞後、ネタバレですが、彼女と同じような女優志願の若い女の子がイヴに(以前のイヴと同じように)近付いてきます。イヴも近い将来、「踏み台」にされていくことを暗示されます。

つまり、本作では、女優の誕生の形式(パターン)が描かれており、イヴとはその一例でしかなかったことになります。イヴの存在を、一つの形式の中で捉えると、後半のイヴの「狡さ」の露呈が、「哀れ」となって映ります。

マーゴはどうかといえば「踏み台」にされながら、結婚して自分の道を歩むことになります。結婚によって、若さや名声を競うことから解放されるのです(結婚によって問題解決するというのは、制作時の1950年という時代かもしれませんが)。

上記のような芸能界の「構造」の中、イヴは、演劇界最高のセイラ・シドンス賞の授賞式でハリウッドに行くことを宣言します。演劇界も「踏み台」にして、映画の世界へ旅立つのです。

「踏み台」の重層性こそが、この作品を何十年も輝かせている理由なのではないでしょうか。

2017年5月15日 23:59

なぜ、マクロン大統領と大統領夫人の年齢差は許容されるのか?

5月7日のフランス大統領選挙の結果を受けて、14日、エマニュエル・マクロン氏がフランス第25代大統領に就任しました。

当ブログ(5月8日)でも記しました通り、格差化し、社会が分断されているフランスの大統領として前途多難のマクロン氏ですが、その奥様の存在が注目されています。

1953年4月生まれのブリジット・マクロン夫人は、現在、64歳であり、1977年12月生まれのマクロン大統領とは24歳8カ月年上です。

米国のドナルド・トランプ大統領も、1946年6月生まれの70歳、1970年4月のメラニア・トランプ夫人との年齢差は24歳2カ月年下です。

男女の違いはあるとはいえ、24歳の格差婚が批判されるのでしたら(マクロン大統領は批判されていないのですが)、フランス大統領と米国大統領も同じであるでしょう。

更にマクロン夫妻の場合は、2人の出会いが、当時、39歳のブリジットさんが高校の演劇の教師、15歳のエマニュエル・マクロン氏がブリジットさんの学生という関係だったことが特異ではあります(BBC 5月9日)。

その時、ブリジットさんは既婚であり、3人のお子さんがおられ、当然、マクロン氏の両親から関係を大反対されます。

それでも、両者は愛を貫き、2006年にブリジットさんは離婚し、2007年にマクロン氏は29歳、ブリッジさんが54歳の時に結婚します(CNN 4月25日)。

そして、今日、大統領夫人となるブリジットさんの存在は批判されるどころか、好感を持って受け止められています。世論調査会社「YouGov」によると、49%が彼女に好印象を抱いていると回答したのに対し、悪いイメージを抱いていると答えたのは26%に留まっています(HuffPost France, 5月12日)。

このようなブリジットさん人気を、青山学院大学・羽場久美子教授は「フランスは自由恋愛の国。個人が好きな形で恋愛することに社会が何か言うことはない。むしろ一途さが評価され女性票が集まったことは事実ではないか」と分析していますが、マクロン大統領にとってもプラスになっているのは確かです(J-Cast 5月15日)。

しかしながら、もし、24歳下の女性と再婚した男性(前妻との間に3人の子供がいる)がフランスの大統領もしくは大統領候補となった場合、ファーストレディに対して、たとえそれが「一途な愛」であっても同じような結果がでるのでしょうか。

それでは、米国のトランプ大統領や英国のチャールズ皇太子は、なぜ批判されてきたのでしょうか。

それが、フランスと米国(英国)との恋愛観、家族観の違いなのでしょうか。

もちろん、ブリジットさんの場合、個性が人々を魅了している点もあると思われますが、もう少し考えていきたいテーマです。

2017年5月13日 23:10

北朝鮮問題において危機感がないのは誰なのか?

周知の通り、5月9日に韓国で大統領選挙が行われまして、大方の予想通り、共に民主党の文在寅氏が1342万3800票(得票率41.08%)を獲得し、韓国の第19代大統領に選ばれました。投票率は77.2%でした。

今回の大統領選は、米国と北朝鮮の関係が悪化しており緊迫する状況で展開されていたにもかかわらず、韓国の有権者は安全保障より国内問題により関心があったようです。

韓国の正論調査会社・リアルメーターの「選挙の争点は何か」という調査において、「根深い汚職問題の解決と改革に取り組む候補者の意思」と答えた人が27.5%で最も多く、次に「国民生活と経済を回復させる能力」が24.5%でした(CNN, 5月8日)。北朝鮮問題に関連する「国家の安全とリベラルな民主主義を守ること」との回答は18.5%であり、少なくはないのですが、最大関心事ではありません(同上)。

北朝鮮問題と軍事衝突になれば、「根深い汚職問題の解決と改革」どころではないのではないかと思うのですが、国内問題が争点だったのです。

そもそも、「韓国では北朝鮮に対する危機意識は感じられない」と指摘されています(「異例尽くしの韓国大統領選ソウルの街角は」『ホウドウキョク』フジテレビ)。

例えば、4月29日の早朝に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した直後、日本の各マスコミがその紛争の危機を報じたのに対し、韓国は、朝のテレビニュースの最後、天気予報の直前に20秒程度の原稿をキャスターが読んだだけだったとされています(同上)。

その理由を考えれば、北朝鮮の軍事問題は韓国の有権者がどうすることもできなく、選挙とは別物であるのかもしれません。もし、北朝鮮問題を国内問題よりも深刻に捉えていれば、この時期の大統領選挙は適切ではないと捉えていたでしょう。

もっとも、これは見方次第でもあります。ヨーロッパから見れば、日本も報道されているほど、人々に危機感があるとは見えません。

スイスに住む知人が、北朝鮮が在日米軍と軍事衝突することになれば、日本も危ないのではないかと言ってきました。私が、危機の最中、ゴールデンウィークに約10万人の日本人が韓国を訪れたと言うと、「日本人は危機感がない」という話になりました。

韓国に旅行に行くことは別にして、(韓国人よりは危機を認識しているとされる)日本人も日常生活を大きく変えてはいないでしょう。北朝鮮の出方を予想することも難しいこともあり、警戒はしたとしても、日常を過ごしていくしかないのです。

結局、「危機感があるとか、ないとか」の判断は、どこから見るか次第なのではないでしょうか。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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