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チェンジ ザ コミュニケーション ~多様性を楽しむコンフリクト・マネジメント

2009年11月

2009年11月28日 10:58

第40回 意識の壁

朝、出勤途中の人々が高層ビルのエレベーターを待っている、そんなとき、知っている顔にあなたは気づくことができるでしょうか?
先日、IT関連企業の研修に行ったとき、受講生の顔を2つ確認したものの、声をかけそびれた鈴木有香です。一人は猫背気味で視線は下で、もう一人は顔を上げていたけど、意識はどこか遠くにあるような感じで、挨拶する瞬間が見出せませんでした。

実際、人間の視野は180度以上あり、目に入っているものはたくさんあるのですが、どこまでそれが意識されているか、気配をも含めて感じているかは人によります。たとえば、自分が仕事に集中していても、職場に誰か入ってきた気配を感じて、顔を上げると、その動作の変化に入ってきた人も気づき、その人を見る、そして、二人の目があって、挨拶のタイミングが生まれます。つまり、自分の外に対する感覚が広がっていないと、そのタイミングを作り出すことが難しくなります。

常日頃、どのくらい自分の感覚を広げているかの問題なのですが、IT企業の方々は1日中、ノートパソコンのスクリーンのみを凝視している時間が10時間以上ある人が少なくないそうです。すると、視野がスクリーンという狭いところにしか集中していません。それ以外の外的変化が感じられなくなっていきます。その状況で、アフリカのサバンナにいたら、一発で猛獣に食べられてしまうかもしれません。原始から備わった人間の能力の退化です。

しかし、そこのオフィスを見せてもらったとき、そうせざる得ない環境にも驚きました。バレー・コート2面くらいの広いオフィスに机が整然と並べられ、隣の人との間仕切りも、前にいる人の気配を遮断するような本棚もなく、全員がノート・パソコンに向いて仕事をしていました。広い見通しのよい図書室のような感じです。もちろん、仕事だから大きな声は出せません。隣の人がいること、前を歩く人がいるなどを感じると逆に集中ができなくなりそうです。ですから、自分の意識で壁を作り、集中力を高めるという努力をし続けなければならないように見えました。それは、満員電車の中で隣の人を感じないように意識を内向きにしているのと同様な感覚が長時間続くのに似ています。

人間は少なくとも、自分が安心できる最低限の空間が必要です。それが机一面分だとしても、自分が居心地良さを感じる空間を持つことで、安心感を得ます。それを得られない場合は意識で壁を作るしかないかもしれません。しかし、人間は機械ではないので、意識の壁のオン・オフの切り替えがいつでもできるわけではありません。いつの間にか意識の壁のオン状態が普通になり、自己と外部を遮断していくようになります。すると、対人コミュニケーションになったとき、視線、表情、姿勢も相手に向かい合わなくなってきます。

救いは中・高齢者層です。幼少期を含め、ある一定の年齢まで、コンピュータとのコミュニケーションではなく、対人コミュニケーションの量が圧倒的に多かった世代です。そのしっかりと培った対人コミュニケーションの感覚があるので、言葉以外のものを感じたり、曖昧なものに対しての許容力の回復力が現代の携帯世代といわれる20代以下の人よりもあります。こうした中・高齢者がいるうちに、今の若い世代に熱く感情が関わるコミュニケーションの経験を職場でさせることを緊急に考えていかないと、人間の本来持っているコミュニケーション能力がどんどん低下していってしまうのではないかという危惧が、今、私の中にあります。

2009年11月21日 00:43

第39回 新型インフルエンザと失恋?!

実は某大学で大学生のためのスピーチのクラスも担当している鈴木有香です。1年次の必修科目で、「生き生きと3分間自分の意見を語れるようになろう!」という目標のクラスです。その練習の一つに「自分の経験と気持ちを人に伝えよう」ということで「忘れられない思い出」というテーマのスピーチをしました。

今回の大ヒットは「なぜ彼と別れたか」について話した真由美ちゃん(仮名)。ショートパンツにラメ入り黒ストッキングが脚線美を強調しつつ、セミロングの茶髪と付けまつげのフルメイクのキュートな19歳の女の子です。

「あのー、最近 彼と別れたんですよ。彼は27歳で、トラックの運転手だったんですけど・・・。」

開口一発、クラス全員が興味で身を乗り出します。10代の彼らにとって、27歳は「年上・・・すぎる」ようです。

真由美ちゃんは、初めて彼氏の家に行ったときの不審な状況をクイズ形式で、聴衆を巻き込みながら、客観的情報を次々と提供していきます。

「まず、玄関に入ると、そこに何があったと思いますか。-間- 乳母車です。『元カノがシングル・マザーで置いていったんだ。』と彼は言いました。私はもちろん好きだったので信じました。」

このパターンを継続させて、テーブルには化粧ポーチ、洗面台には巻き毛用ドライヤー、その引き出しには化粧品と付けまつげ、トイレの棚には生理用品と発見し、それでも、「彼を信じました。」で結んでいきます。見事な喜劇のテクニックです!!

しかし、ある日、真由美ちゃんはテーブルの上にある役所からのプリントを発見して、全てを理解します。それは「妊婦様へ」と書いた役所からの新型インフルエンザを注意するプリントでした。

結局、彼の妻(?)は妊婦で1ヶ月の入院をしていたという事情が種明かしでしたが、真由美ちゃんの話を聞いているときの、男子学生の反応が完璧に二極化していたことに気がつきました。一方は平然と「おーとっ!」みたいに反応をするタイプ、もう一方は話の進展と共に顔に緊張が走り、うつむき加減になる男子。心のうち、男子の妄想はわかりませんが、明らかに同年代の女子のススンだ話に当惑気味です。

私の個人的感想は、スピーチとしては論理の一貫性、観客を巻き込むテクニック、自然な話し方と感情の流れが表現されていて、とても素晴らしいと思いました。その一方で、この手の話題をあっけらかんと大学の授業で語る女性の登場に、自分の価値観が古くなってきていることを感じ、女性学の観点からは、「それも女性の地位の向上なのかな?」と思いました。やはり、江戸時代の武士の娘はこんなことは許されないでしょうから。でも、江戸時代なら不倫というのは「市中引き回し獄門の刑」にもなるんだな・・・。

しかし、真由美ちゃんの元カレは最低だな。あ、こういう経験を若いうちに積む事で男性を見る目を養っているかもしれない。むしろ、こいういうことをしていなかった私の方が成長が止まっているのかも・・・・(冷や汗)。

2009年11月14日 23:48

第38回 中高年の自己チュウ

スナックといえば、ベビースター・ラーメン、最近出た濃厚チーズ味にはまっている鈴木有香です。どうしても、時間に追われて、食事する間もなく、電車に乗るとき、直径1cm程度のべビスタを4つ、口に放り込み、乾麺が溶け出す感覚を飴代わりに楽しむ悦びは格別です。まあ、行儀が悪いといえば、悪いですね。

先週、夜間のクラスにいくために、18時頃山手線に乗りました。夕方のラッシュではありませんが、座席は埋まり、1車両に立っている人は30-40人程度の混雑具合です。
そんな中で黒縁のメガネに黒いワイシャツとスーツ、灰色のネクタイを身につけた30代後半の男性と長いストレートの髪をまとめたOL風の女性が座っていました。二人の間の座席には青い寝袋かダウンジャケットを詰めた大きな青い紙袋が2つ鎮座していました。

男女とも疲れているのか、こっくり、こっくりしながら、時折、携帯電話をチェックしています。その前に立っている人は私を含めて6名ほど。誰も何も言わず、静かに立っています。これは東京の知らない人には無関心を装う正しい態度なのかもしれないけど、なんとなく、あえて、世直しのためにコンフリクトを起こすべきか悩んでいる私がいます。

お年寄りの聖地巣鴨駅を過ぎたところで、「お疲れのところ、申し訳ありませんが、この紙袋を荷棚に置くくらいのエネルギーは残っていませんか?」と私は男性に声をかけました。私の声は響くので車両の人々は私に注目しました。

男性は不機嫌そうに「次で降りるから・・」と言ってまた、目を閉じました。
論理的には全く噛み合っていない返答です。
女性はビックとしたようですが、男性がアクションを起こさないので何もしませんでした。

5秒後、「このような時間に座席に荷物をおいたままというのは、一般常識としてどんなものでしょう?」と私。

すると、女性が居たたまれなくなって、立ち上がり荷物を荷棚に上げました。男性は目をつぶって無視のまま。そして、女性は男性の隣に座り直すと、1つの座席が空きました。この間、女性は無言です。私は座る気はないのですが、その4秒後、女性の前に座っていたグレイの背広を着たメガネのややくたびれた50代中間管理職的なサラリーマン風の男性が、何事もなかったかのようにそそくさと座りました。

私はこのサラリーマンの行動のほうが「がっかり」しました。席が空いたら、すぐに座りたいほど疲れていたのかもしれません。しかし、自らは行動せずに状況を傍観し、「漁夫の利」だけはしっかり取るのは座席を占有している自己中心的な二人と同じレベルのように思われました。

皮肉交じりに「席を空けてくれて、ありがとう」と女性に言えば、女性の行為が社会的に適切であったことの承認になるでしょう。
あるいは私に目礼するなら、少なくとも周囲の人に私の言動が適切であることのサインを見せることになるでしょう。

人を注意したりすることも勇気が要りますが、勇気を持って正しいことをした人には応援のメッセージを何らかの形で示すことが、善行を広げていくには重要ではないでしょうか。

この男女は次の駅大塚では降りず、池袋駅で降りました。男性の返答は誠意のない虚言であることもわかりました。

でも、それ以上に、人々の無関心が怖いと思いました。無関心は社会の道徳心の低下をさらに招くと思いましたし、疲れた中高年男性にはすでに武士道とか任侠心とか男気とか、そういう心がなくなっている一例にも見えました。となれば、次世代の若者が自己チュウと批判する前に、大人の心の治療が必要そうです。

2009年11月 7日 01:27

第37回 豊かな愛情をありがとう!!

両親が共働きで、そのうち一人が学校教員となると、10月は学校行事の目白押しで、私の誕生日というのはよく忘れられていて、あんまり誕生日にはいい思い出のない鈴木有香です。


先月、アラフィフ突入になりました。通常、この歳だと、結婚式1回くらいやっていて、早ければ子どもの結婚式などもあったりして、人々から祝福を受ける経験をしたことがあって当然なのかもしれませんが、私の場合はそういう人生のイベントはなく、仕事をし続けてきただけのように思います。

たまたま、10月の最後の金曜日に運河沿いの企業で研修をやることもあり、じゃあ、ついでだから、有香ちゃんの誕生パーティーでもおしゃれにしようかという話が友人間で交わされていました。自分のためのパーティーというのもコソバイのですが、やってもらいました。

婚活合コンのエキスパートが幹事を引き受け、もと海外駐在員婦人でパーティーのホステスの達人が演出に入り、私の服選びから、メイクまでしてくれました。研修の時の戦闘服から女性らしい服になり、ハイヒールを履くと、なんだか自分の動きと声まで変わるから不思議なもんです。

11人の友人が集合してくれました。年齢層は20代から50代、未婚、既婚、子どもの有無もそれぞれ、仕事も専門分野もいろいろ、巫女的な方、アーティスト・身体感覚派から教育、IT関係の方々までの男女です。共通点は私を知っているというところですが、もう一つ言わせていただければ、正義感を奥底に秘め、慈愛の心があり、私にとって、魂レベルで信頼にできる人々が集まってくれたように思います。

人生で一番たくさんのバラをもらい、笑顔をいただきました。このとき、私は自分が楽しいという気持ちだけに集中することができました。論語の中に「心の欲するところに従えども、矩を踰えず」という文言があったけど、信頼できる人々の温かさに囲まれると、「心の赴くままにやっても、道理をたがえることはない」のかもしれないと思いました。お酒もこれまで以上に飲んでいたのに、なんだか感覚は冴えていました。そして、心は豊かな気分。

それで、まあ、朝帰りして、一眠りした後、非常に深い安心感と穏やかさが心に満ちていました。身体も柔らかく、肩こりも溶けていました。体がフワフワ浮いているようで、自然に微笑が浮かび、声すらも柔らかくなっていました。「ああ、この感覚だと、誰にでも優しく接することができそう!」そんな感じが身体の中にありました。初めての気分です。

多分、愛情に満たされるということは、こういうことなのかと思いました。たくさんのプレゼントをもらいましたが、パーティーに集合してくださった方の慈愛に満ちた清らかなエネルギーをいただき、私自身がこんなにたくさんの人々に愛情を注いでいただいているということを気がつかせてもらいました。感情の豊かな交流が本当の安心感というものを教えてくれたように思います。祝福を受け取ることは心を清め、豊かにしてくれることなんですね。本当に、本当に、ありがとうございました。

と、同時にコミュニケーション研修の核心は「人々のポジティブな心の交流」を生み出すことがなければいけないんだと確信した次第でした。

プロフィール
ニックネームさん
鈴木有香(ゆかぴー)
早稲田大学紛争交渉研究所客員研究員、桜美林大学・亜細亜大学非常勤講師。コロンビア大学にて修士号取得。米国諸大学講師を経て現職。一部上場企業(外資系含)でリーダーシップ研修等担当。 著書に「交渉とミディエーション」(三修社)など。早稲田総研インターナショナル「コンフリクト・マネジメント」講師。詳細:http://www.quonb.jp/service/management/index.html
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